2013 Fiscal Year Research-status Report
アオコ抑制のための底泥中のアナベナ休眠細胞の発芽特性解析
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24560657
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野村 宗弘 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70359537)
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Keywords | 富栄養化 / 水質汚濁 / 発芽 |
Research Abstract |
現在,休眠細胞を含んだ底泥の処理や回収方法として,遠心分離・重液分離,超音波を用いた処理などの方法が用いられているが,休眠細胞を傷つけてしまう可能性がある.また,底泥中の休眠細胞は,いつ,どのような環境条件で形成され,曝露されていたのかも不明であり,以上の理由から,休眠細胞に関する正確な評価を行えていないのが現状である.底泥中に存在する休眠細胞の生理生態の機構解明は,ブルームの発生機構を解明し,その発生の予知および予防対策を進めていくうえで極めて重要であるが,単一種のシストを実験に利用できるだけ大量に得ることは困難である.そこで本研究では,カビ臭被害を出す藍藻類A. macrosporaの大量培養を行い,休眠細胞の形成特性を解明し,純粋な休眠細胞のみを大量に形成・回収する技術開発と休眠細胞の発芽評価方法の確立を目的として研究を行った. A. macrosporaを大量培養し,分液漏斗を用いることで純粋な休眠細胞を大量に回収することに成功した.大量培養にはCT培地とM11培地を用いたが,CT培地での培養がM11培地での培養に比べ,特異的に大量の休眠細胞を生産することが明らかとなった.休眠細胞回収に分液漏斗を用いることで,全生産量の5割強の休眠細胞を回収できることが明らかとなり,休眠細胞を大量生産し,効率よく純度の高い状態で回収する技術を確立できた.また,休眠細胞には幾つかの形態があることが判明した.CT培地,M11培地それぞれで形成させた休眠細胞をともに発芽させることに成功し,休眠細胞の発芽評価方法を確立できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アナベナ休眠細胞の大量培養,回収することができたことから,今後,アナベナ休眠細胞の生理生態機構の解明研究に応用することが可能となった. 以上から,研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに調査対象とした漆沢ダム貯水池において,湖底にはAnabaena属の休眠細胞が大量に存在すること,貯水位が低下した年ほどAnabaena属の発生量が多い傾向がみられたことを示すとともに,Anabaena属の休眠細胞数の違いがAnabaena属の優占化に影響を与えることを室内実験やモデル解析を通じて明らかにしている.このことからアオコ発生対策を検討するうえでも底泥の休眠細胞の発芽状況を検討することは需要な課題と考えられるが,現地における休眠細胞の発芽の時期や量の評価は,十分に出来ていない. そこで,Anabaena休眠細胞の発芽速度定量実験から休眠細胞の発芽予測モデルを構築し,漆沢ダム湖における発芽量を予測するとともに,現地の環境因子を解析することで,休眠細胞がAnabaenaのアオコの形成に与える影響を評価する予定である. また,アナベナはカビ臭(ジェオスミン)を産生することが知られており,アナベナ休眠細胞のカビ臭含有の定量的評価もあわせて実施したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既存の機器や器具で実験できたため,消耗品の購入費が減額できた. 室内実験のためのガラス器具,分析試薬,分析カラム,分析用ガスなど消耗品費,現地調査ならびに情報収集,研究成果報告のため学会参加を行うための旅費,研究補助のための謝金,外部分析委託のためのその他経費を計上した.
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Research Products
(2 results)