2013 Fiscal Year Research-status Report
ビルレンス因子を指標とした水道システムにおける感染性レジオネラの定量的検出
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24560663
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
大河内 由美子 麻布大学, その他部局等, 准教授 (00391079)
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Keywords | 水系感染症微生物 / レジオネラ / 感染能 / 再増殖 |
Research Abstract |
平成25年度も,水道水を介したレジオネラ感染リスク評価に資する基礎情報の整備を目的として,受水槽方式の水道システムにおけるレジオネラ汚染状況の把握を試みた。受水槽方式の学校を対象として,使用頻度が異なる給水栓を対象として水道水を採取し,採水直後のレジオネラ培養可能菌数,従属栄養細菌数を調べるとともに,残留塩素を中和後, 20 ˚Cで1週間培養した場合にレジオネラが再増殖するか否かを調べた。その結果,使用頻度が極端に低い一部の給水栓においては採水試料中にレジオネラが検出されること,また20 ˚Cにおける培養操作により約半数程度の試料中でレジオネラが再増殖したことから,水道水中には一時的にVBNC状態に陥ったレジオネラが存在しており,条件が整えば再増殖することが明らかとなった。 また,前年度に構築済みのマクロファージに分化させたヒト白血病由来細胞THP-1を用いたレジオネラ共培養試験系を利用して,実験室で培養したL. pneumophilaのヒト細胞への感染能を調べたところ,集菌・洗菌後リン酸緩衝液に懸濁して低栄養状態に曝して経時的に感染能の変化を調べたところ,10日程度まで感染能が増強されていくことがわかった。特に,細胞内に侵入するL. pneumophila数は少ないものの,THP-1 細胞内での大幅増殖に繋がることがわかった。また,あらかじめアミノ酸(L-システイン)制限条件において培養されたL. pneumophilaを,引き続いて低栄養条件に曝すことで,細胞内増殖能がさらに増強されることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H25年4月に研究代表者が異動したため,移転先において実験系を再セットアップする必要があったため,進捗が計画より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は,引き続き受水槽方式の比較的大規模な水道システムを対象として,培養可能なレジオネラの存在状況把握を進めるとともに,再増殖の可能性を秘めるVBNC状態のレジオネラについても実態調査を行う。また,今年度までに明らかとなったレジオネラ感染能の増強因子に基づいて,水道水中のアミノ酸濃度,他の有機炭素条件濃度等の情報収集を行うとともに,実際に水道水中で低栄養状態に曝されることによる感染能増強の可能性について検討する。同時に,VBNC状態のレジオネラが感染に寄与するか否かについては議論が続いているが,ヒト細胞THP-1を用いた共培養試験系を用いてこの可能性を検討する。 また,文献調査に基づいてレジオネラ感染能マーカーの選定を進めると共に,感染力の異なるレジオネラ細胞における感染能マーカーの発現状況をリアルタイムRT-PCR法により比較し,感染能と連動して変動しうるマーカーのスクリーニングを行う。最後に,水道水から分離したレジオネラ,水道水中に存在するVBNC状態のレジオネラを対象として,選定したマーカーの発現状況を調べるとともに,その感染能の評価を行うことで,マーカーの適用可能性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた最大の理由は,研究代表者の異動により研究が一時的に中断し,異動先で実験系と研究材料の再セットアップが必要であったためである。なお,H25年度に予定していた炭酸ガスインキュベーターの購入は他経費による購入が可能となったため取りやめており,代わりに細胞培養に不可欠な倒立顕微鏡を購入した。 H26年度は計画に対する遅れを取り戻すよう重点的に研究を進めるため,調査・実験に必要となる研究材料や消耗品の購入に主に充当する。
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Research Products
(2 results)