2012 Fiscal Year Research-status Report
中山間地域における生態系サービスと土木・環境技術によるスマートコミュニティ構築
Project/Area Number |
24560665
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
吉田 登 和歌山大学, システム工学部, 教授 (60263224)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 祐吾 和歌山大学, システム工学部, 講師 (30379127)
金子 泰純 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (60243367)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 生態系サービス / 産業連関分析 / 森林 / バイオマス / 環境価値 |
Research Abstract |
本研究は、中山間地域における生態系サービスと土木・環境技術によるスマートコミュニティ構築の可能性を評価するフレーム開発を目的としており、その1年目にあたる本年度は、異なる木質バイオマス利活用技術をもとに地域振興を進めつつある和歌山の中山間地域(北山村:丸太利用可能なボイラー、日高川町:微粉砕の木質パウダーボイラー)を対象に現地調査を行い、エネルギー・財・サービスのフローについて把握した。次に、生態系サービス分析用産業連関モデル構築を念頭において、県レベル産業連関表から町・村レベルの産業連関表を推計した。さらに、多様な生態系サービスを提供している森林資源がもたらすカーボン・オフセットなどのCO2削減価値に対する人々の選好についてWEBアンケート(47都道府県×男女各45名×3年齢階級)を行い、選好構造について分析を行った。 分析の結果、1)各木質バイオマス燃料利用技術とも、資源調達からエネルギー利用までライフサイクル全体でみた場合の環境効率性については遜色がなく、需要先の制約や効用を考慮した場合に相応しい技術システムとして構成されていること、2)県レベルの経済活動を町村レベルに配分する活動量データに一定の限界は伴うが町村レベル産業連関モデルの構築は可能であり、中山間地域では一次産業を中心にした生態系サービスを支える産業群の連関性が県レベルに比較して高いことから、生態系サービスと環境技術によるスマートコミュニティの環境保全性、地域振興性が期待しうること、3)レジャーや景観よりも水源涵養や生物多様性保全の生態系サービスを提供する森林機能がもたらすCO2削減価値に対する価値づけが統計的にも有意であり、性差や地域差よりも年齢差による寄与が高いこと、等の知見が明らかにされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中山間地域において統計的に得られる活動量データの不備に起因して、通常の部門分類における町村レベル産業連関表から、生態系サービスを支える「木質バイオマスによるエネルギー資源供給サービス」行部門、「林道建設」や「木質バイオマスエネルギー加工・転換部門」列部門などを分割する手法開発が遅れているため、初年度に目標としている生態系サービス分析用産業連関モデルの構築に至っていない段階にあるが、国内外で進展している関連する研究情報を収集、応用することで今年度の早い段階で達成することは可能と思われる。一方で、森林の生態系サービスとCO2削減価値への選好との関係については一部前倒ししてインターネットアンケートを行うことができたため、本年度に計画している、体験型低炭素観光サービスの享受を仮想した住民の環境への認識、態度、等の属性を説明変数とする環境価値の認識プロセスのモデル化に対する準備は計画よりもやや進捗している状況にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
生態系分析用産業連関モデルを早期に構築し、これを用いて中山間地域における低炭素観光交流による生態系サービスの圏域内享受による効果の評価を行う。 具体的には、緑の分権改革事業の採択事業を対象に、中山間地域が享受している生態系サービスを支える従来型の土木・環境技術に対応して中山間地域における地域資源活用の地域経営の実践例からの多便益、価値創出、交流に寄与する社会技術の抽出を行うとともに、和歌山県の中山間地域への観光交流圏域として想定される関西・中部の住民に対してインターネットアンケートを行い、様々な生態系サービスごとに、体験型低炭素観光サービスの享受を仮想した住民の環境への認識、態度、等の属性を説明変数とし、環境価値の認識プロセスを内包した生態系サービス選択確率モデルを構築し、これをもとに中山間地域と周辺圏域との連携効果を分析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
緑の分権改革事業の採択事業等の調査に関する費用、解析用ソフトウェア等の費用、生態系サービスを考慮した環境分析用産業連関モデル研究に関する先進的研究情報の収集(国際産業エコロジー国際会議等)、国内外を含む環境と経済を考慮した生態系サービスにもとづくエココミュニティの先駆事例(中国の沙桃植林事業調査等)、生態系サービス解析に関する各種の文献収集費用、調査旅費、研究成果発表旅費等に使用する。
|
Research Products
(4 results)