2013 Fiscal Year Research-status Report
生物多様性を確保するための河川物理生息場評価手法の開発
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24560666
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
関根 雅彦 山口大学, 理工学研究科, 教授 (30163108)
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Keywords | 河川物理生息場モデル / HSI / 河川生態系 / 中小河川 / 多様性 |
Research Abstract |
既存の河川生息場評価モデル(PHAB モデル)では,ともすれば単調で生物が少ない河道であっても,特定種の特定の生息段階に対して高評価をもたらす場合がある.実際には複数種・複数成長段階に対する評価を総合判断することでこの欠点は避けられるが,PHAB モデルの簡便さが失われるため,結果的にPHABモデルの普及の妨げになっている.本研究の目的は、多様な生物が生息する河川環境が高評価となる河川物理生息場評価手法を開発し,1回の計算で多様な生物に対する総合的な生息環境の良否を評価できる河川物理生息場評価ソフトウェアを作成することである. 平成25年度は,平成24年度の善和川,九田川に引き続き,より単調な河道を持つ一の坂川,より流域の大きな厚東川において魚分布調査および流速,水深,底質,カバー等の物理環境調査を実施した.この4河川12区間の調査結果に対し,環境に関する指標として平成24年度に開発した生態環境多様性に加え,二次元標準偏差,四次元標準偏差,カタゴリ区間幅重みづけ標準偏差,カテゴリ区間生息可能域HSI数重みづけ標準偏差,カテゴリ区間内最適生息域HSI数重みづけ標準偏差を,また生物に関する指標として,生息密度,河川長あたり生息量,種数,体長重みづけ多様度指数,体重重みづけ多様度指数,稚魚区別多様度指数,稚魚区別体長重みづけ多様度指数,稚魚区別体重重みづけ多様度指数,稚魚区別種数を用いて,環境指標と生物指標の間の関係性を調べた. その結果,平成24年度には正の関係性が見られた生態環境多様性と生息密度については,一の坂川で明瞭な負の関係性が見られた.もともと生息密度は多様性の指標ではなく,この結果は予想できたものである.一方,多様性指標の一つである稚魚区別種数と生態環境多様性の間に,すべての河川において正の関係性が見られ,生態環境多様性が本研究の目指した環境指標であることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り2年度の調査を終え,所期の結果を得ることができた.なお,当初モンテカルロ法などを用いたカテゴリ分割汎用HSIの定義を計画していたが,平成24年度に開発ずみの生態環境多様性指標の有用性が確認できたため,この作業は不要となった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度にiRIC講習会に出席し,生態環境多様性を実装する環境として,フリーの流況計算環境であるiRICが候補となることがわかった.既に試行的に簡単なiRICソルバーの開発を行っている.最終年度は,iRIC上で生態環境多様性を計算するソルバーを開発する.また,これまでの4河川より小規模な河川において生物環境調査を実施し,生態環境多様性指標のブラッシュアップを行う.
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Research Products
(3 results)