2012 Fiscal Year Research-status Report
酸溶出法に基づいた下水汚泥焼却灰からのリン・重金属の分別回収
Project/Area Number |
24560670
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
高島 正信 福井工業大学, 工学部, 教授 (30257498)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 焼却灰 / 下水汚泥 / 酸溶出 / リン回収 / 重金属回収 / リン酸鉄 |
Research Abstract |
下水汚泥由来の焼却灰について、硫酸を用いた化学的な酸溶出によってリンおよび重金属を溶出させ、その溶出液からリンと重金属を分別回収する方法を基礎検討した。酸溶出では、焼却灰100gに0.25mol/L硫酸を1L加え(L/S比10、pH約1.5)、約300rpmの撹拌速度で4時間撹拌した。溶出率としてリン約72%、重金属約49~60%が得られ、重金属よりリンが溶出しやすい傾向にあった。この結果から、元素の種類やその存在形態によって酸溶出率が異なることがわかった。 酸溶出液へのアルカリ添加により、PO4-P、Fe、Al、Ca、Zn、Cu等の主要元素のpHに対する挙動を明らかにした。嫌気性消化汚泥も比較対象として用いたところ、焼却灰の方が高いリン酸回収率を得ることが可能であったが、嫌気性消化汚泥は元素濃度の低さと溶解性有機物質によるキレートと推測される作用によってリン酸と重金属を分別回収しやすいという結果となった。また、実験結果と化学平衡計算プログラムMINEQL+による推定は、元素によって合致の度合いは大きく異なった。 酸溶出液から鉄(III)塩とアルカリ剤を添加したpH2~2.3でリン酸鉄の沈殿回収を行ったところ、純度の高いリン酸鉄を得ることができ、酸溶出とアルカリ回収を組み合わせる方法は焼却灰について適用可能な方法であると考えられた。しかし、鉄塩の経済性などから、課題の存在することも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、焼却灰からリン回収率を向上させるために、酸溶出条件について詳しく検討することを目的とした。しかし、詳細な検討よりも全体的な把握を優先させた結果、検討因子とした温度および焼却灰粒度について取り上げることができなかった。後述するように、来年度では温度や粒度の影響を観察する予定である。 一方で、本来は二年度目に予定していた酸溶出液中のリンはリン酸鉄として、重金属は主に水酸化物として分別回収する方法を実施・検討することができた。具体的には、第二鉄塩の存在下でアルカリを加えていったとき(つまり、pHを上げていったとき)のリン酸と重金属の挙動を調査した。pH約1から約10の範囲におけるリン酸および重金属の沈殿形成と溶解性濃度について理論的な化学平衡計算とも比較しながら確認した。この結果から、酸性pH領域において、重金属が溶解性に保たれながらリン酸のほとんどがリン酸鉄として沈殿する最適pHと、その後のアルカリ性pH領域において、重金属のほとんどが沈殿分離する最適pHを最終的に決定することができた。 以上のように、一年度目と二年度目の検討項目の一部が入れ替わり、当初の予定とは異なったが、進捗状況としてはおおむね順調であると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、酸溶出液中のリンはリン酸鉄として、重金属は主に水酸化物として分別回収することを基本とする。鉄塩を加え、リン酸鉄としてリン回収する方法は昨年度検討したので、この変法として鉄板を用いる鉄電解法を検討する。鉄剤よりも安価な鉄板を用いることによって費用を大きく抑えられる可能性があり、一方では電気代が必要となるが、これらの費用は酸溶出液の処理量やリン酸濃度に影響されるので、それらの関係性を明らかにする。また、酸溶出率を高めるため、代表的な条件において温度と焼却灰粒度の影響について検討する。回収された沈殿物については、回収量はもちろんのこと、成分分析によって純度を測定し、X線回折分析法(XRD)によって結晶構造の解析も行う。リンと重金属が分別回収されるそれぞれの最適pHは値の低いほど添加するアルカリ剤が少なくて済み、経済性に優れることになる。 さらに、リンと重金属の回収実験において、天然キレート剤を多量に含有する高温嫌気性消化液で作成した硫酸溶液を用いることを検討する。pHが約2を超えると、肥料利用の際に有害となるアルミニウムや重金属の沈殿物が形成し始めるが、重金属のキレート物質が溶液中に存在すれば、重金属は溶解性に保たれやすくなり、沈澱するpHがアルカリ側にシフトしてリン酸鉄と重金属の沈殿物の分別性が改善する。 最終的に、得られたリン酸鉄の性状、処理の経済性等を総合的に評価してもっとも優れた方法・条件を提言する。これには岐阜市の実施設で達成されている約8,000/t-焼却灰が処理コストの目安となり、これに焼却灰1t当りのリン回収量、リン化合物の純度などを勘案して評価を行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で行う実験、分析および解析のほとんどは研究代表者の機関で実施することとし、主な実験・分析設備は研究代表者が既に所有しているものを使用する。よって、特殊な実験装置などは今のところあまり必要としないことから、使用する設備備品費や消耗品費は主として基本的な実験操作に付随するものである。特殊な分析については外注の予定であり、そのための費用が必要である。一方、発表に値する相当な研究成果が得られるので、積極的に学会発表等を行う予定である。それに見合う出張や学会誌投稿料、論文別刷りの費用を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)