2012 Fiscal Year Research-status Report
高力ボルト接合部の火災高温時および冷却過程における耐力・変形・破断性状
Project/Area Number |
24560677
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
平島 岳夫 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20334170)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 鋼構造 / 耐火性 / 接合部 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の目的は、火災時における高力ボルト継手(以下,継手)の耐力・変形・破断に関する挙動を実験から明らかにし、その挙動を数値解析プログラムに組み込むための構成要素モデルを構築し、鋼骨組内部にある高力ボルト接合部の火災時・冷却過程における破断条件を明らかにすることである。初年度・平成24年度は,以下2つの成果を得た。 1.継手の耐力・変形・破断性状の把握 継手の高温引張実験を30体実施し,継手のディテール(ボルト径・板厚・はしあき距離・締め付け力)および鋼材温度が,継手の耐力・変形・破断性状に及ぼす影響を把握した。例えば,この実験から,同じ継手のディテールでも,常温時では母材のはし抜け破断性状を示し,500℃以上ではボルトの剪断破壊性状を示す例などを示した。実験では継手部が塑性化した後の変形能力を把握し,継手部全体の塑性変形を(1)母材板孔部の支圧変形,(2)継手板孔部の支圧変形,(3)ボルトの剪断変形の3つ構成要素に分けて分析した。加熱冷却実験では,加熱冷却後における継手の耐力・変形・破断性状に加え,冷却時の収縮変形を拘束した場合にボルトが破断する例を得た。 2.高温時における継手の構成要素モデル 上記の継手実験および素材の高温引張試験結果に基づき、高温時における継手の構成要素モデル(Component-based model)を検討した。これより,構成要素モデルを用いて実験結果(継手の荷重-変形関係)を概ね追跡できることを確認した。ただし,既往の提案式では実験結果と一致していないものがあり,モデルを一部修正する必要があることを指摘した。汎用ソフトAbaqusによる解析では,ボルト剪断破壊型の実験を追跡できなかったが,母材はし抜け破断型の実験は比較的追跡できた。これより,母材のはし抜け破断性状を詳細に検討する際,Abaqusによる解析が有効であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究目的では,研究機関内に明らかにすべき項目として次の4つを記載した。(1)高力ボルト接合部のディテールと高温時・冷却過程における耐力・変形・破断性状の関係。(2)高力ボルト梁継手の高温引張実験に基づく、高力ボルト接合部の火災時構成要素モデルの提案。(3)保有耐力接合された高力ボルト摩擦接合継手の火災時および冷却過程における性能。(4)小梁のウェブ接合に関する破断条件(接合部ディテール・周辺拘束の影響,冷却過程の検討)。このうち,初年度では(1)と(2)の項目を概ね明らかにできた。 交付申請書における研究計画・方法では,平成24年度の実施項目として次の2つを記載している。(1)高力ボルト継手(Lap joint)の高温引張実験。(2)高力ボルト接合部の高温時構成要素モデル(Component-based model)の構築。研究実績の概要で示した通り,この2つの実施項目は概ね予定通りに遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,高力ボルト梁継手に関する解析モデルを火災応答立体フレーム解析プログラムに組み込む作業を行う。板材による継手(Lap joint)に引張力が生じる場合の解析モデルは,前年度に検討した構成要素モデルとする。このモデルを,軸力・剪断力・曲げモーメントが生じる場合のH形鋼の継手に拡張する。そして,この拡張したモデルを,梁要素を用いた火災応答フレーム解析プログラムに適用する。プログラム作成に関わるこの作業においては,高力ボルト継手部のモデル化に関するサブルーチンの流れ図を作成し,高力ボルト接合部の構成要素モデルをフレーム解析に適用するにあたっての具体的方法を公開する。この火災応答立体フレーム解析プログラムおける結果の妥当性は,既往に実施した「高力ボルト継手を有する両端固定梁の載荷加熱実験結果」との比較によって検討する。またソリッド要素を用いた有限要素解析(FEM汎用ソフト)による結果とも比較し,断面力を伝達する構成要素に生じる力と変形の関係について,多角的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,解析的な検討が主となる。交付申請書では,汎用FEMコード年間使用料として30万円を申請した。昨年度に引き続きFEM汎用ソフト・Abaqusを利用して,前述した検討を行う予定である。解析プログラムの流れ図作成等においては,解析補助として20万円の謝金を申請している。その他の経費は,前年度の成果発表費用に充てる予定であり,これには成果発表のための旅費が含まれる。
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