2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560689
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小川 厚治 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (80112390)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 鋼構造骨組 / 最大層間変位角 / 残留層間変位角 / 耐震要素 / 筋違 / 立体骨組 / 偏心 / 柱梁耐力比 |
Research Abstract |
平成24年度は、従来型筋違付骨組と偏心をもつ立体骨組の2つに対象を限定して、数値解析と理論解析の両面から、その地震応答性状を検討した。 まず、従来型筋違付骨組については、地震応答解析結果による検討から、従来型筋違も安定した変位応答抑制効果を持つこと、十分な変位応答抑制効果を期待するには、筋違の耐力分担率を高くする必要があること、耐力分担率を極端に高くすると層崩壊を起こして特定層に変形が集中すること等を明らかにした。さらに、変形集中を避けるための耐力分担率の上限値を、骨組の終局ベースシヤ係数、地動強さ、ラーメン部分の柱梁耐力比等の関数として定量化した。 また、履歴型ダンパー付骨組に対して提案している残留層間変位角予測法を拡張する形で、筋違付骨組の残留層間変位角の予測方法を提案し、1次元有限要素法を用いた詳細な地震応答解析結果と比較することで、その妥当性を検証した。 偏心をもつ立体骨組に関しては、まず単純化動力学モデルで用いる各層の降伏曲面について単純塑性解析によって検討し、構面数や構面配置などによってその形状が変化することを示し、任意の骨組に対応するための降伏曲面の一般形を提案した。また、地震応答解析によって降伏曲面の形状が地震応答に及ぼす影響が極めて小さいことを確認し、単純化動力学モデルによる検討結果が任意形状の骨組に適用できることを明らかにした。 また、単純化動力学モデルの弾性地震応答解析によって、偏心骨組に生じるねじれモーメントについて検討した。その結果、特定層にだけ偏心がある骨組においてもねじれモーメントは全層に生じることなどを明らかにした。このねじれモーメントの定量化手法についても検討を行ったが、ねじれと並進の固有周期が近接した骨組では、偏心量の増大に伴いねじれモーメントが増大するという傾向すら認められず、予測が極めて困難であることを示すに留まっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来型筋違付骨組については、特定層への変形集中を抑制する筋違の耐力分担率の上限値(柱梁耐力比の下限値)と残留層間変位角の上限値を明らかにしたが、この成果は単に筋違だけを対象とするものでなく、間柱型を含む各種の履歴型ダンパー等の耐震要素付骨組全般に適用できる研究成果である。 偏心をもつ立体骨組に関しては、単純化動力学モデルで用いる降伏曲面の形状について検討を重ね、その改善に多大の労力を費やしたが、降伏曲面の形状が地震応答に及ぼす影響が極めて小さいことを確認する結果となった。これは、降伏曲面の形状に関する検討の意味を否定するような結果ではあるが、単純化動力学モデルによって、スパン数などにとらわれない汎用性の高い耐震設計資料が得られることを保証する有用な成果と評価している。 単純化動力学モデルを用いた理論的考察と地震応答解析によって、偏心骨組の各層に生じる応力(せん断力・ねじれモーメント)や変形を予測する方法については、必ずしも順調に進展していないが、その定量化に関しても、既にいくつかの糸口は見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、上記の平成24年度の研究の他、筆者のこれまでの研究成果を総括し体系化する形で、最大層間変位角と残留層間変位角の予測方法に関して、統一性のある単純な理論を構築する。 まず、最大層間変位角の予測法については、基本的には、履歴型ダンパー付骨組の最大層間変位角の予測法を拡張する形で、すなわち、半サイクルの最大地震入力エネルギーに基づく1自由度系の応答予測と、等価1自由度系の考え方を組み合わせることで、対象とするすべての骨組に適用可能な最大層間変位角の予測方法を構築する。最下層だけの問題である柱脚と、全層に設けられる従来型筋違の何れにも適用できるように、スリップ型履歴特性による最大層間変位角の増大効果の定量化ができれば、その成果はスリップ型履歴特性をもつ他の構造要素(例えば、乾式の柱梁接合部)などにも応用可能になる。 残留層間変位角の予測法については、座屈等によって複雑な履歴挙動をとる従来型筋違付骨組も含めて、平成24年度に検討を終了しているが、これらの予測式はバイリニア型の復元力特性をもつ系の理論的考察結果に基づいている。この予測式は、第2分枝剛性比が1/3程度以上の範囲では残留変形の上界の予測式として有効であることを確認しているが、第2分枝剛性比が小さいときには残留変形を過大に評価する傾向がある。この点について改善を試みることで、適用範囲の広い残留変形の予測方法を構築する。 成果の公表は、日本建築学会の大会や支部研究発表会などを含め国内誌や国際会議でも積極的に行っているが、昨年度成果に関しても査読付論文として公表していないものもある。今年度はさらに積極的な公表に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
講演発表を予定している日本建築学会大会が平成25年度は札幌で開催され、多額の旅費が必要であるので、24年度は極力節約に努め若干ではあるが25年度に残している。 25年度は成果の公表を24年度よりもさらに積極的に行う予定で、研究費の使用計画としては、上記大会での8万円×8名と、日本建築学会九州支部での2万円×8名の研究発表旅費の他、論文掲載料5万円×2件とプリンタートナーなどの消耗品12万円程度を予定している。
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Research Products
(19 results)