2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560689
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小川 厚治 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (80112390)
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Keywords | 鋼構造骨組 / 最大層間変位角 / 残留層間変位角 / 筋違 / 立体骨組 / 偏心 / すべり支承 / 制震設計 |
Research Abstract |
平成25年度は、当初から計画していた従来型筋違付骨組と偏心をもつ立体骨組の2つの対象以外に、滑り支承をもつ骨組も対象に加えて、数値解析と理論解析の両面から、その地震応答性状を検討した。 まず、従来型筋違付骨組については、層崩壊を起こして特定層に変形が集中することを避けるための筋違の耐力分担率の上限値、最大層間変位角および残留層間変位角の予測法を明らかにした。すなわち、これが本研究の主要な目的の1つであるが、従来型筋違を用いた最大層間変位角指定型の耐震設計法を構築することが可能であることは明確にできた。また、ここで採用した、スリップ型の履歴特性をもつ引張側筋違の挙動を考慮した最大層間変位角の予測法は、既に弱い柱脚をもつ骨組の応答予測に用いたものであり、スリップ型履歴特性をもつ構造物の応答予測に広く利用できるものであることを明らかにしえたと考えている。 偏心をもつ立体骨組に関しては、特定層にだけ偏心がある骨組においてもねじれモーメントは全層に生じること、ねじれと並進の固有周期が近接した骨組では特異な現象が見られるが、偏心が大きくなるにつれてねじれと並進の固有周期の差違は広がる傾向があること、偏心量の増大に伴って変位応答が無制限に増大することはないことなどを明らかにした。しかし、これらの効果を定量化するには至っていない。 柱脚の一部を滑り支承にして摩擦ダンパーとして活用する研究は今年度から開始した。この課題については、最大層間変位角および残留層間変位角の予測法の開発を概ね終了し、経済性と実用性の範囲内で、1次設計時には弾性で、2次設計時にも滑り支承がエネルギーを消散して骨組は弾性域に留め、残留変形も許容範囲内に収める設計が可能であることを示した。費用と効果の両面から、非常に有望な新たな制震システムであることは明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、従来型筋違付骨組、偏心をもつ立体骨組、滑り支承をもつ骨組の3つを対象に研究を進めている。 従来型筋違付骨組については、特定層への変形集中を抑制するための筋違の耐力分担率の上限値、最大層間変位角および残留層間変位角の予測法の検討を終え、これらを総括して設計法を構築する課題だけを残している。非常に順調に進展している。 偏心をもつ立体骨組に関しては、ある程度の成果はあげ得たとは考えているが、現象を定量化するには至っていない。 滑り支承をもつ骨組については、経済性と実用性を兼ね備えた全く新しい変位応答抑制システムを提案するものであり、当初の想定を越える研究成果と考えている。 しかし、偏心をもつ立体骨組の地震応答の定量化や、滑り支承をもつ骨組の研究の立ち上げに大きく時間を割いたこともあり、成果の公表については、いずれの課題についても、国際会議や日本建築学会大会学術講演会程度しか行っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であり、研究成果を総括してできるだけ利用しやすい形に整理すると共に、既に遅れ気味の状態になっている結果の公表に集中する。 公表に関しては、本研究が非常に実用性の高い成果を含んでおり、広く早く公表する必要性があると考えているので、国際会議や日本建築学会の大会学術講演会、支部研究報告会、鋼構造シンポジウムなど多くの機会を活用する予定である。 また、成果が実際に利用されるには、権威づけられた形での公表も不可欠であるので、日本建築学会構造系論文集を中心に数編程度の論文として成果を纏める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文掲載料1編分として10万円程度を年度末まで残すつもりで支出計画を立てていたが、掲載決定には至らなかった。 年度末においても、できるだけ次年度に繰り越そうと考えていたが、無理な支出抑制を解除すると、少額しか繰り越せなかった。 【今後の研究の推進方策】にも書いたように、最終年度である今年度は研究成果の公表を積極的に行う予定であり、多額の論文掲載料や研究発表旅費の支出を計画している。
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Research Products
(11 results)