2013 Fiscal Year Research-status Report
サブストラクチャ・オンライン実験による全体曲げRC造ピロティ建築物の耐震性能評価
Project/Area Number |
24560692
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Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
寺本 尚史 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00315631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 哲也 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (40315627)
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Keywords | ピロティ建物 / サブストラクチャ・オンライン実験 / 鉄筋コンクリート造柱 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1層部分が柱のみで構成されるピロティ建物のうち、全体曲げにより降伏機構を形成する(全体曲げ崩壊形)建物の耐震性能を、サブストラクチャ・オンライン実験手法を用いて詳細に評価し、より確実な設計手法の確立を行う事である。ここでサブストラクチャ・オンライン実験手法とは、構造物の一部を試験体として製作し、試験体に静的載荷した時の復元力と、解析モデルで構築された2階以上の架構解析とを同期させて建物全体の変形を再現する実験手法である。平成24年度は、全体曲げ崩壊形と、ピロティ層が層降伏する降伏機構を持つ(層崩壊形)ピロティ建物の崩壊形成立後の力学的性状の把握、および同建物の設計方法に関する検討を行った。 平成25年度は、全体曲げ崩壊形および層崩壊形のピロティ建物を対象とし、擬似的に数値積分法(OS法)により応答実験を行う仮動的実験を行った。対象架構は12階建てRC造建物を想定しており,1階がピロティ階となっている。桁行方向のスパンが7.5m,張間方向のスパンが10.5mで,建物の桁行方向中央に位置する張間1構面を本研究の対象とし,張間方向の地震応答性状を検討した。実験ではこのうちピロティ階の側柱2本を実験実施部分、その他のフレーム部(2階以上の部分)をPC上にて解析モデルとする形で行った。 実験の結果、全体曲げ崩壊形として設計を行った架構についてもピロティ層の柱頭・柱脚に曲げ降伏ヒンジが形成され、想定していない崩壊形式(層崩壊形)となった。これは地震時の外力分布の等価高さが設計時に仮定した外力分布であるAi分布よりも低くなり、1階の転倒モーメントが小さくなった結果、柱にかかる変動軸力も小さくなり、想定していた引張側柱の軸降伏が起こらなかったためであると考えられる。今後、全体曲げ崩壊形式の設計において外力分布を考慮し,再設計した試験体により地震時挙動を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度に計画していた実験は予定通り実施することができたが、実験の結果、設計で想定していた降伏機構とは異なる結果となった。予想通りの結果ではなかったものの、設計時における外力分布の考慮など、この実験から得られた知見は大きいものがある。そうした経緯から、平成26年度の研究計画においては、25年度で得られた知見を基に試験体を再度設計し、実験を行う予定である。そのため、達成度区分は「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの達成度】においても述べたとおり、平成25年度の実験において、設計で想定した降伏機構(全体曲げ)とは異なる降伏機構(層崩壊)となった。その結果、ピロティ層の柱部分を再設計した上で再度実験を行う必要が生じた。その反面、こうした想定とは異なる実験結果となったがために得られた様々な知見があることから、本研究の最終年度である平成26年度の研究は下記の通り行う。 1. 全体曲げ崩壊形となるピロティ建物の合理的な設計方法の検討: 平成25年度の実験結果を踏まえ、ピロティ建物を全体曲げ崩壊形とするための、合理的な設計方法の検討を行う。 2. ピロティ階の2本の側柱を対象としたサブストラクチャ・オンライン仮動的実験およびその検証・評価: 全体曲げ崩壊形式の設計において外力分布を考慮し,再設計した試験体を用いたサブストラクチャ・オンライン仮動的実験を行う。その際、設計時の外力分布がピロティ建物の崩壊形式に与える影響を考慮し、慎重に設計を検討する必要があると考えている。なお、試験体製作および実験は、研究分担者(西田)が所属する秋田県立大学の実験棟および実験設備を用いて行う。得られた実験結果・知見を基に、より耐震性に優れたピロティ建物を設計するために重要となる点について取りまとめ、設計方法について提言を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
解析用計算機やUPSなどの購入金額が想定金額よりも安く入手することができた等の理由による。 研究者代表者分(約20万円)は、前年度持ち越し分の約2万円を含め、実験・研究に必要となる消耗品などの費用およびその結果の取りまとめ・発表に必要な経費として使用する。 研究分担者(西田哲也)へ配分する研究費(100万円)は、ほぼ全てをサブストラクチャ・オンライン実験用のピロティ階側柱試験体の製作費およびひずみゲージなどの実験用機材(主に消耗品)の購入費として使用する。
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Research Products
(3 results)