2013 Fiscal Year Research-status Report
プレストレストコンクリート部材の各種限界状態に注目した変形性能評価手法の構築
Project/Area Number |
24560693
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
北山 和宏 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (70204922)
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Keywords | プレストレスト・コンクリート構造 / 骨組 / スラブ / 耐震性能 / 曲げ性能 / 限界状態 / 残留変形 / ひび割れ |
Research Abstract |
2012年度に実施したスラブ付き十字形柱梁部分架構実験の結果を詳細に分析することにより、梁曲げ耐力に対するスラブの協力効果、PC鋼材の残留緊張力の推移、各種限界状態の決定要因等についての知見を以下のように得た。 (1)スラブの等価協力幅は梁主筋降伏と同時の梁部材角0.15%程度で梁スパンの0.1倍を超え、最大層せん力に達する前に梁スパンの0.2倍に達した。(2)PC鋼材の残留緊張力は、プレストレス率が0.5程度の場合、梁変形の増大とともに初期緊張力よりも増加したが、プレストレス率が0.75程度の場合には逆に低下した。PC鋼材降伏後の梁部材角1.5%時の緊張力残留率は0.85~1.29であった。(3)最大層せん断力除荷時の残留変形角および残留ひび割れ幅にスラブの影響は見られなかった。(4)上端曲げ耐力が下端曲げ耐力よりも大きいT形梁断面では、矩形断面と比べて上端引張時には早期に下端コアコンクリートが圧壊し、主筋の座屈および破断を誘発した。(5)使用限界は梁部材角0.15~0.53%で「残留ひび割れ幅0.2mm」および「主筋の僅かな降伏」によって、修復限界Iは梁部材角0.24~0.90%で「PC鋼材の弾性限界」および「残留ひび割れ幅1.0mm」によって、修復限界IIは梁部材角0.69~1.69%で「残留変形角1/200」,「PC鋼材の僅かな降伏」および「残留ひび割れ幅2.0mm」によって安全限界は梁部材角2.66~4.36%で「コアコンクリートの圧壊」および「主筋の破断」によって各々決定した。 この実験ではPC鋼材として付着の良くない丸鋼棒を使用したが、PC鋼材に沿った付着性状がスラブ付きのT形梁の力学特性に与える影響を実験によって調査した研究はほとんどない。そこで2013年度はPC鋼棒の付着性状を変数としたスラブ付き十字形柱梁部分架構試験体二体を設計して製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では2013年度に作製したスラブ付き十字形柱梁部分架構試験体二体の実験を年度内に終了する予定であったが、試験体の実験変数の選定などの設計に時間を要したため、実験の実施が遅れている。 これと並行して、プレストレスト・コンクリート梁の復元力特性の定量評価を目標として、既往の実験データ・ベースを用いて最大耐力時の強度と変形についての解析研究を実施した。梁端部に形成される塑性ヒンジ領域の長さについての検討を行い、それに平面保持を仮定した断面解析より得られた曲率を乗じることによって、最大耐力時の変形を推定したが、実験結果を過小評価する結果となった。この原因として、付着劣化したPC鋼材のひずみが平面保持仮定から逸脱することを評価するためのひずみ適合係数F値の数値が適切でない可能性、柱梁接合部からの梁主筋の抜け出しによる付加変形を考慮できないこと、などを挙げた。 この検討をもとにして、PC鋼材の付着すべりを間接的に考慮できる断面解析手法[六車・渡辺・西山(1984)]の見直しおよび再構築を予定していたが未達成である。 以上の理由から、本年度の研究によって三年計画の本課題を解決する上で必要な成果を得たが、進捗状況としてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、前年度に作製したスラブ付き十字形柱梁部分架構試験体二体の静的載荷実験を実施する。その結果と平成24年度の実験成果とをあわせて、スラブの付くT形梁の復元力特性、等価粘性減衰定数、ひび割れ幅と部材変形との関係、各種限界状態の評価と同定、などを総合的に検討する。 これと並行して、PC鋼材の付着すべりを間接的に考慮できる断面解析手法[六車・渡辺・西山(1984)]の再検討を行うとともに、正負交番繰り返し載荷に対応できるように解析プログラムを見直して修正する。断面解析においてPC鋼材のひずみが平面保持仮定から逸脱することを評価するためのひずみ適合係数F値を、現実の骨組内の梁部材に適合するように幾つかの変数を用いて具体的に規定したい。 この解析手法を用いて部材の危険断面での断面曲率を求め、この曲率から部材全体の変形を簡易に評価する手法を提示する。その際、実験で得られた測定結果をもとに創出した変形機構に基づいて、部材の変形モデルを新規に考案し、これを用いて申請者が提示した手法[嶋田・北山(2011)]を適宜発展させる。さらに柱梁接合部パネルからの鋼材抜け出しによる付加変形を適切に考慮する手法を案出する。具体的には断面曲率φに塑性ヒンジ長さlpを乗じることによって塑性ヒンジ回転角Rpを求める(Rp =φ・lp)。この塑性ヒンジ長さlpは上述の変形モデルに基づいて定量評価する。なお既往の研究では塑性ヒンジ領域での曲率分布は一定と仮定したが、変形機構の分析から曲率の分布形を適宜変更することを視野に入れる。
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Research Products
(5 results)