2012 Fiscal Year Research-status Report
耐震補強された鉄筋コンクリート造建物の高精度安全性評価システムの構築
Project/Area Number |
24560698
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
白井 伸明 日本大学, 理工学部, 教授 (90060144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田嶋 和樹 日本大学, 理工学部, 助教 (60386000)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート / 鉄骨ブレース補強 / 座屈 / パンチングシア / 抵抗機構 / 三次元FEM解析 / ファイバーモデル / 共回転理論 |
Research Abstract |
本年度は,①耐震補強工法の抵抗機構の検証および②耐震補強工法の抵抗機構に基づく解析モデルの構築という2つの研究課題について重点的に取り組んだ。併せて,次年度に実施するRC造骨組モデルの性能確認実験の準備として,実験計画の立案ならびに試験体の設計に取り組んだ。以下に本年度の研究実績の概要を示す。 (1)耐震補強工法として鉄骨ブレース補強に着目し,補強骨組に想定される破壊モード(ブレース座屈,パンチングシア破壊)が生じる際の抵抗メカニズムについて三次元有限要素解析を通じて明らかとした。 (2)ブレース座屈の場合,ブレース座屈後に発生する鉛直力によって補強接合部が引張破壊し,耐力低下が生じる。そのため,補強接合部に界面要素を設けてブレース座屈後の補強接合部の引張破抵抗をモデル化することにより,骨組全体の耐力・変形性状をポストピーク領域まで模擬することが可能となった。 (3)パンチングシア破壊の場合,鉄骨ブレースは骨組の剛性に寄与するのみであり,骨組全体の耐力・変形性状はパンチングシアが生じる柱(PS柱)とその他の柱の復元力特性の累加で表現できる。このことから,PS柱のモデル化が重要であり,本研究で はそれを簡易なバネ要素でモデル化することに成功した。 (4)ブレース座屈あるいはパンチングシア破壊が生じるが補強骨組の動的挙動を表現可能な解析モデルをファイバーモデルをベースとして構築した。ブレースの座屈は共回転理論に基づいて幾何学的非線形性を考慮し,初期不正を付与することによってモデル化することができた。また,PS柱の履歴挙動は,既往の実験データを収集した実験データベースから履歴に関わる種々のパラメータを推定する手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度達成すべき研究課題は,「各種耐震補強工法の抵抗機構を考慮した解析モデルの構築」であった。この点に関しては,研究実績の概要に示したとおり,最も補強実績の多い鉄骨ブレース補強を対象として研究に取り組んだ。その結果,三次元有限要素解析を通じて,破壊モード毎に抵抗機構を分析することにより,補強骨組の抵抗機構に基づく精緻な三次元有限要素解析モデルを構築することができた。この解析モデルは,ポストピーク挙動に至るまで補強骨組の耐力・変形性状を精度良く予測可能である。さらに,補強骨組の動的挙動を再現可能なファイバーモデルに基づく骨組解析モデルおよび履歴モデルを構築したことにより,地震応答解析に基づいて動的挙動を予測し,補強骨組の耐震性能を評価する技術を確立することができた。以上のことから,本年度の研究の目的の達成度は概ね順調に進展していると判断できる。 また,次年度には簡易な骨組に対して耐震補強を施し,耐震補強が骨組全体の耐震性能に及ぼす影響について検討する予定である。本年度は,実験の準備として,耐震補強骨組に関する実験的研究のレビューを行っている。これにより,次年度の研究活動を迅速に開始することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を通じて,耐震補強工法として取り上げた鉄骨ブレース補強に関して,補強骨組の静的ならびに動的な挙動を再現可能な解析モデルを構築することができた。これに伴い,次年度は多スパンの骨組において部分的に耐震補強を施した場合に骨組全体の耐震性能がどのように変化するか実験的に検証し,既存の耐震補強された建物の耐震性能評価法の確立に向けた検討を進める。特に実験においては,骨組全体の応答と補強スパンならびに各種部材の応答を対応付けることにより,耐震補強が骨組全体の性能に及ぼす影響について検討する。また,実験的に得られた知見を数値解析に基づいて詳細に分析・再現することによって,耐震補強が耐震性能を向上させるメカニズムを明確にしたいと考えている。 また,最終年度においては,想定される将来の大地震に備えるために,すでに耐震補強された建物に対する安全性評価シミュレーションを実施したいと考えている。この際,次年度実施する実験および解析的検討の成果を活用するが,その他に安全性評価の結果として明確に示すべき指標についての検証も進める必要がある。本件についても,次年度の研究活動のテーマとし,海外の研究事例も含めて調査し,指標のアイデアを確立したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は,大部分を耐震補強骨組の実験に費やす計画である。試験体や載荷治具の製作費が主であり,予算内で最大限の成果が得られるように試験体の設計や準備を進めている。試験体は可能な限り実大寸法に近い寸法にするため,1体あたり150~200万円程度の予算を見込んでおり,試験体は2体作成する予定である。また,実験の実施に伴い,臨時職員を雇用して,実験補助業務を担当してもらう計画である。その他,他機関で実施される実験を見学したり,研究成果を報告するための出張旅費を計上したいと考えている。
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