2013 Fiscal Year Research-status Report
耐震補強された鉄筋コンクリート造建物の高精度安全性評価システムの構築
Project/Area Number |
24560698
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
白井 伸明 日本大学, 理工学部, 教授 (90060144)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田嶋 和樹 日本大学, 理工学部, 助教 (60386000)
|
Keywords | 鉄筋コンクリート / 耐震補強 / 耐震性能 / 鉄骨ブレース補強 / 座屈 / ファイバーモデル / 地震応答解析 |
Research Abstract |
本年度は,昨年度に構築した鉄骨ブレース補強されたRC造骨組に対する数値解析モデルの検証を行うとともに,本解析モデルを実大実験に適用するために必要な耐震壁や腰壁等に対する数値解析モデルの開発を行った。また,この実大実験結果と数値解析結果の比較を通じて,本解析モデルの有効性を確認した。さらに,補強RC造建物の耐震性能について,地震動ならびに耐震スリットの有無をパラメータとした数値解析を実施し,現状の耐震補強設計手法の問題点を指摘した。なお,昨年度から本年度にかけて数値解析に関する研究成果が想定以上に得られたため,本年度に実施する予定であった実験の計画を再検討し,より高度な試験体の設計に取り組んだ。以下に本年度の研究実績の概要を示す。 (1)耐震壁ならびに腰壁のモデル化に関して,トラス要素を用いることにより,従来の数値解析モデルよりも簡便かつ十分な精度を有する数値解析モデルを開発した。 (2)座屈挙動を考慮したブレースのモデル化を適用することにより,実大規模の補強RC造建物の地震時挙動を良好に再現することができた。 (3)構造耐震指標Isを補強前:0.5から補強後:0.8を目標として補強設計を行った補強RC造建物モデルに対する地震応答解析の結果,鉄骨ブレースの座屈により変形が進展する挙動(スリット無しの場合)や,剛性・耐力の低下(スリット有りの場合)が確認でき,建物の最大応答変形は無補強の場合と同等となった。 (4)現行手法によるIs値を基準とした補強設計では,大地震に対する性能評価は困難である可能性が高く,既補強建物の耐震性能については数値解析に基づいて再検証する必要があると考えられる。 なお,次年度の実験においては,無補強試験体1体とスリットの有無をパラメータとしたブレース補強試験体2体について破壊実験を行い,耐震性能の比較を通じて補強後RC造建物の耐震性能評価手法の確立を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度達成すべき研究課題は,「耐震補強したRC造骨組モデルの性能確認実験の実施とその結果に基づく解析モデルの検証」であった。この点に関しては,研究実績の概要に示したとおり,数値解析に基づく研究が当初の想定以上に進展したため,予定を変更して「想定地震動に対する実建物の安全性評価シミュレーション」に関する研究に着手したことから,実験を実施するという点については当初の予定より遅れていると言える。しかし,数値解析に基づく検討の顕著な研究成果に基づいて,実験計画を当初の予定より高度かつ実際的な応用に関する内容に変更していることに加え,すでに次年度の前半には実験を実施できる準備が整っている状況を考えると,必ずしも実験的な検討が遅れているわけではない。併せて,次年度に検討予定であった解析的な検討の一部を前倒ししている点を考慮すれば,研究計画全体の進捗としては概ね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究を通じて,数値解析により既存の鉄骨ブレース補強されたRC造建物の耐震性能を再検証する準備が概ね整ったと言える。次年度に実施する実験において,これまで蓄積してきた数値解析技術の妥当性を検証するとともに,兵庫県南部地震以降に短期間に耐震補強された学校建築等の公共建物の耐震性能を再検証したいと考えている。この際には,JSHISが提供するデータを活用するなどして地域ごとの想定地震動を設定し,実際に起こりうる地震動に対する補強建物の耐震安全性の検証を実施する。また,より簡易な手法により耐震性能を評価する手法についても検討し,実務レベルで対応可能な耐震性能評価法を提案したいと考えている。 また,次年度は研究の最終年度でもあるため,これまでの研究成果をとりまとめて,補強RC造建物の大地震に対する耐震安全性評価手法について全体像を示しつつ,全体を総括する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試験体製作の費用として本年度の予算の大部分を使用予定であったが,研究計画の進展に併せて実験計画を再検証し,より高度な試験体を計画した。それに伴い,試験体を再設計し,試験体の形状や実験時の計測内容が変化した。そのため,当初は平成25年度において試験体を発注する予定であったが,平成26年度に繰り越して試験体を発注することにした。これにより,当初の予定と差額が生じ,次年度使用額となった。 次年度使用額は,試験体及び実験に関わる物品(消耗品)費として使用する予定である。
|