2013 Fiscal Year Research-status Report
健康リスク分析のための高レベル道路交通騒音の予測と曝露人口推定法
Project/Area Number |
24560715
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤本 一壽 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (90112309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平栗 靖浩 徳山工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (90457416)
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Keywords | 道路交通騒音の予測 / 騒音曝露人口の推定 |
Research Abstract |
本研究は、高レベルの道路交通騒音に長期間曝露されることの健康リスクについて研究するためのデータ構築に向けて、[研究1]道路に面する地域における住戸ごとの道路交通騒音の予測法、および、[研究2]国勢調査などの入手可能なデータベースから住戸ごとの居住者数を精度よく推定する方法、について研究し、これら2つの研究成果を統合して、[研究3]高レベル道路交通騒音に曝露される人口の推定法を確立することを目的とする。 [研究1](担当:藤本一壽/研究代表者)では建物・建物群背後における道路交通騒音予測法を、[研究2](担当:平栗靖浩/研究分担者)では、数値地図などから建物内の居住者数を推定する手法を研究し、[研究3](担当:藤本、平栗)では、これらの研究成果を統合させ、高レベルの道路交通騒音に曝露される人口の推定法を確立する。 平成25年度は、藤本は、「道路に面する地域における住戸ごとの道路交通騒音レベルの予測法」を研究し、昨年度提案した点音源モデルに基づく戸建て住宅群による道路交通騒音減衰量の新しい予測法を基に、建物高さと受音点高さの変化に対応可能な予測法に拡張した。 平栗は、「基盤地図情報や国土数値情報などの公開データを活用した建物内の居住者数推定手法」を研究し、昨年度開発した道路沿道建物の住居/非住居判定アルゴリズムの改良を行い、戸建て住宅の高精度な判別および市内全域の建物の判別ができるように改良した。戸建て住宅は十分な精度で判別できるが、集合住宅の判別制度がまだ十分でないので、次年度に改善したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[研究1](担当:藤本)では、点音源モデルに基づく戸建て住宅群による道路交通騒音減衰量の予測法(建物高さと受音点高さを考慮した予測式)を提案し、研究成果を、日本建築学会大会(3編)、九州支部研究発表会(2編)、日本騒音制御工学会研究発表会(1編)、日本音響学会騒音・振動研究会(2編)、inter-noise2013 (1編)、日本音響学会研究発表会(1編、招待講演)で発表した。提案した予測法は、環境省「騒音に係る環境基準」の評価に活用できるもので、我が国の道路交通騒音予測法の標準であるASJ RTN-Modelの最新版Model 2013にも採用された。このように、研究目標を十分達成しており、“研究は順調に進行している”と自己評価できる。 [研究2](担当:平栗)では、さまざまな市街地に立地する住居系建物に対する居住者数推定アルゴリズムを提案し、研究成果を、日本騒音制御工学会研究発表会(1編)と日本建築学会九州支部研究発表会(1編)で発表した。提案したアルゴリズムは、国土交通省国土地理院の基盤地図情報2500や国土交通省国土政策局の住宅・土地統計調査および国土数値情報、総務省統計局の国勢調査結果に含まれるデータを活用するもので、いずれのデータベースも無償公開されているのでユーザビリティが高く、戸建て住宅に関しては高い推定精度を有している。しかし、集合住宅に関しては推定精度が十分ではなく、当初掲げた今年度達成目標は完全に達成できているとはいえない。とはいえ、集合住宅の推定精度向上に関する現実的対応策が想定できているので、“研究は順調に進行している”と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(最終年度)は、本年度までの研究成果を用いて高レベル道路交通騒音に曝露される人口の推定法を確立し、それを応用して沿道に居住する住民の騒音曝露人口推定のケーススタディを行う。 この目的のために、藤本は、本年度までに提案した騒音減衰量予測法を用いて、沿道に立地する住宅ごとの道路交通騒音予測のケーススタディを行う。平栗は、集合住宅を高精度に判別する手法を研究し、住居系建物判別アルゴリズムの改良を行い、本年度までの研究成果とあわせて建物の居住者数推定手法を完成させる。その後、山口県周南市の住基ネットデータをリファレンスとして推定精度の検証を行う。推定精度に問題がある場合には、再度、アルゴリズムを改良する。 以上を完了した後、本研究成果の応用例として、山口県周南市の国道2号線沿道地域を対象に騒音曝露人口のケーススタディを行う。すなわち、藤本が対象地域の住戸ごとの騒音レベルを推定し、平栗が住居ごとの居住者数を推定し、騒音レベルと居住者数の推定結果とオーバーレイして騒音曝露人口の推定を行う。最後に、本研究成果を総括して本研究の完了とする
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画では、実際の道路沿道における道路交通騒音の実測を行い、提案した騒音減衰量予測法の精度検証を行う予定であった。しかし、実測方法を詳細に検討した結果、適当な候補地が見つからなかったため騒音測定は行わないことにし、そのため騒音測定用に購入予定であった計測器を購入しなかった。 騒音予測式の精度検証は模型実験によって行うよう変更したので、次年度に模型実験のための謝金として使用する予定である。 藤本は、騒音予測を試みる地域の住宅地図を購入する。また、騒音予測計算に必要なパラメーターの算出と計算プログラムへの入力、騒音予測計算は多大な作業を要するため、学生アルバイトを雇用する(謝金)。 平栗は、住居系建物の種別ごとの居住者数推定アルゴリズムの修正版構築のため、調査補助員を雇用する(謝金)。また、アルゴリズムの汎用性を確認するための調査において、地理情報データを購入し(消耗品費)、山口県周南市における推定精度検証のための現地調査において、調査員を雇用する(謝金)。
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