2012 Fiscal Year Research-status Report
汚染物質の局所排出速度を示す新たな換気効率指標に基づく室内空気環境設計法の開発
Project/Area Number |
24560717
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
LIM Eunsu 九州大学, 炭素資源国際教育研究センター, 学術研究員 (50614624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 一秀 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (20329220)
林 徹夫 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (40150502)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 換気効率 / Net Escape Velocity / 汚染物質濃度低減 / 光触媒 / 吸着分解 / 小型チャンバー / 計算流体力学 / 建築環境設備 |
Research Abstract |
本研究は汚染物質の実質的な局所排出速度を定量的に評価する新たな換気効率指標であるNet Escape Velocity (NEV)を開発すると共に,NEVにより可視光応答型光触媒による汚染物質分解効果を組み込んだ壁材・床材による2次元平面的処理と,換気装置による3次元的清浄空気供給を組み合わせた高清浄室内空気環境設計法の開発を目的とする.今年度には下記の研究課題を遂行した. 1.既往の関連研究の調査:建築空間を対象とした換気効率指標に関する文献調査を行い,各指標の特徴ならびに関係性を整理し,本研究で提案するNet Escape Velocityとの関係を明確にした.また可視光応答型光触媒によるガス状汚染物質,エアロゾル状汚染物質の分解速度の測定方法ならびに分解速度定数の評価事例を調査・整理した. 2.新たな換気効率指標Net Escape Velocityの開発:局所領域の換気性能を評価する最小単位となり得る,室内各質点における実質汚染物質排出速度を表す,換気効率指標NEVを提案し,その数学的定義と解析方法を示した.NEVによる換気設計のための基礎データを整理する平均流れ場・平均拡散場解析ならびにNEV解析を実施した. 3.NEVによる光触媒を担持した建材による汚染物質濃度低減効果の評価:室内空気質改善を図る光触媒を担持した建材による室内汚染物質濃度低減効果を定量的に把握するために,吸着・分解フラックス等の物理化学パラメータの検討に加えて,NEVを用いた評価を実施した.CFDへの組み込み可能な沈着分解フラックスモデルの調査を行った. 4.可視光応答型光触媒を担持した建材の汚染物質反応速度定数の測定準備:試験片の負荷率が検討可能な可視光応答型光触媒建材による汚染物質濃度低減効果評価に特化した小型チャンバーの開発,CFDにより小型チャンバー内の気流場・濃度場の予測を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新たな換気効率指標Net Escape Velocityの開発に関しては当初の計画を上回る成果が得られている.特に,平均流れ場ならびに拡散場解析結果に基づいたNet Escape Velocity解析法を確立し,換気設計への適応をするための異なる気流場,濃度場環境の空間を対象としたNet Escape Velocity解析事例の蓄積を行った.また高い精度で室内汚染物質濃度分布を予測するためのCFDへの組み込み可能な壁面沈着分解フラックスモデルの開発を行った.可視光応答型光触媒を担持した建材の汚染物質反応速度定数の測定に関しても,小型チャンバーの制作を含め実験の準備が整えている.さらに,CFDによりチャンバー内気流特性及び気流場による物質伝達率特性を予測しており,今後,発展的に大きな成果が得られるものと期待している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25~平成26年度には,実験による汚染物質反応速度定数のデータベース整備を行うと共に,光触媒による反応速度定数を組み込んだ沈着分解フラックスモデルの開発,CFD解析による総合的なバイオエアロゾル濃度分布予測手法の開発,換気装置の吹出口・排気口と光触媒建材の最適配置・最適運転条件の探査,応用解析事例を蓄積すると共に,感染リスク低減を目的とした高精度バイオクリーン空気環境設計法を確立する.具体的な方策を以下に示す. 1.可視光応答型光触媒を担持した建材の汚染物質反応速度定数の測定では,VOCとバイオエアロゾル(ネコカリシウィルス・枯草菌芽胞,真菌胞子等)を対象とし,開発した小型チャンバーを用いた濃度減衰実験を行うことで,対象汚染物質のチャンバー内滞在時間と濃度低下量より沈着分解速度定数を算出する.実建築空間への適用を意図し,反応速度定数の面積効果に関する基礎データも蓄積する. 2.上記1.で得られた実験結果を踏まえ,平成24年度に開発した光触媒を担持した建材表面での濃度変化をCFD解析での壁面境界条件として組み込み可能な沈着分解フラックスモデルの改良を行い,実現象に対応するモデルの構築を行う. 3.上記2.で作成した壁面沈着分解フラックスモデルを組み込んだCFD解析を実施し,高精度の汚染物質濃度分布予測する.更に濃度場解析と同時にNEVの空間分布を算出する数値解析技術を確立した上,換気装置の吹出・排気口位置,光触媒建材の設置位置を系統的に変化させることで最小風量,最小建材面積でNEVが最大値となる最適設計条件ならびに運転条件を探査する設計アルゴリズムの開発を行う. 4.病院待合いスペース,その他の大規模空間を対象とした応用解析事例を蓄積すると共に,感染制御に特化した空気環境設計法を整理し,本研究で得られた成果をとりまとめ,国内外の学会発表,学術雑誌への投稿等にて成果を公表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究初年度は,調査と情報収集のための旅費の使用が中心であったが,研究2年目(平成25年度)は実験と数値解析の実施が中心課題となる.実験課題を平成25年度に行う予定であり,実験関連の予定額が本年度の予算残高として発生した. 次年度行う予定の実験では20L小型チャンバーを用いた可視光応答型光触媒を担持した建材の汚染物質反応速度定数の測定を行う予定であり,汚染物質を想定した模擬ガス,試薬,培地など実験用の消耗品の購入,捕集データの分析費用として使用する.また,試験結果により整理する反応速度定数を組み込んだ高精度のCFD解析を計画しており,解析用の高性能PCの購入を予定している. 平成24年の研究成果を国内外の学会等で発表すると共に,日本建築学会環境系論文集,国際ジャーナル等にて速やかに成果を公表する計画をしており,投稿費,学会参加費,論文掲載料ならびに旅費としての使用も予定している.
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