2013 Fiscal Year Research-status Report
汚染物質の局所排出速度を示す新たな換気効率指標に基づく室内空気環境設計法の開発
Project/Area Number |
24560717
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
LIM Eunsu 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 学術研究員 (50614624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 一秀 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (20329220)
林 徹夫 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (40150502)
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Keywords | 建築環境工学 / 空気質制御 / VOC / 光触媒 / 小形チャンバー / クリーンルーム / 換気効率 / Net Escape Velocity |
Research Abstract |
本研究では,室内不均一汚染物質濃度場を評価する換気効率評価指標として,汚染物質の実質局所排出速度を定量評価するNet Escape Velocity (NEV)を開発すると共に,室内汚染物質に対し可視光応答型光触媒を担持した建材(壁材・床材)による2次元平面的処理と,換気装置による3次元的清浄空気供給・除去を組み合わせた高清浄室内空気環境設計法の開発を目的とする.今年度には下記の研究課題を遂行した. 1.既往の関連研究の調査:光触媒建材の表面反応メカニズムの解明,表面反応速度式の開発,視光応答型光触媒によるガス状汚染物質,エアロゾル状汚染物質の分解速度の測定方法ならびに分解速度定数の評価事例を調査・整理した. 2.可視光応答型光触媒を担持した建材の汚染物質反応速度定数の測定:光触媒建材の汚染物質分解性能評価に特化した一様流が形成されるOne-Pass型の矩形ダクト型のSUS製チャンバーを開発し,そのチャンバーを用いて,チャンバー内に可視光応答型光触媒と光源を設置し,一定濃度供給法にての濃度減衰を測定し,その結果より反応速度定数を求めた. 3.大形チャンバーによる可視光応答型光触媒担持建材の汚染物質濃度低減性能評価実験:小形チャンバー実験と25m3 クリーンルームによる実験を比較し,面積効果が可視光応答型光触媒建材表面の酸化分解反応に及ぼす影響を明らかにした. 4.NEVによる各種産業環境の局所換気装置の汚染物質制御性能評価:開発した実質的局所汚染物質排出速度を表す換気効率指標NEVを用いて,汚染物質の制御が大きな課題である厨房空間と有害物質発生工場を対象とし,局所換気装置の汚染物質排出性能評価を実施し,汚染物質の輸送を移流と拡散現象まで評価可能なNet Escape Velocityの室内空気質制御評価への適応の合理性・優越性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を上回る研究成果が得られている.特に,平均流れ場ならびに拡散場解析結果に基づいたNet Escape Velocity評価に基づく換気設計法の確立に当たり,Net Escape Velocityの換気設計への適応の合理性と有効性が高いことより,計画より多様な気流場,温度場,濃度場環境の空間を対象としたNet Escape Velocity解析事例を蓄積した.また光触媒建材表面での光酸化反応速度モデルの開発に関しては,をHenry型とLangmuir-Hinshelwood型モデルの2種類を提案し,供給濃度をパラメータとした汚染物質濃度減衰試験を実施した実験結果によりモデル定数を同定し,光酸化反応の数理モデルを構築した.この光酸化反応モデルはCFDへ組み込み可能な壁面沈着分解フラックスモデルとしてソース型とフラックス型の2種類の組み込みモデルを開発した.小形チャンバーに加え実際空間との面積効果の解明も実施しており,最終年度には,2次元の光触媒建材表面と3次元の空調システム制御の最適設計法構築という発展的に大きな成果が得られるものと期待している.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度ある平成26年度には,汚染物質濃度に加え,光触媒建材の性能に影響する室内環境要素をパラメータとする汚染物質濃度減衰実験引き続き実施し,汚染物質反応速度定数のデータベース整備を行うことで各環境要因別表面反応モデルを開発する.このモデルを用いて,表面反応モデルを壁面境界条件として組みこんだCFD解析により換気装置の吹出口・排気口と光触媒建材の最適配置・最適運転条件の探査,応用解析事例を蓄積する.最終的には,感染リスク低減を目的とした高精度空気環境設計法を確立する.具体的な方策を以下に示す. 1.可視光応答型光触媒を担持した建材の汚染物質反応速度定数の測定では,実建築空間への適用を意図し,VOCを対象とし照度・湿度等をパラメータとした小型チャンバーによる濃度減衰実験を行うことで,室内環境要素が光触媒建材の対象汚染物質濃度減衰性能に及ぼす影響を解明すると共に,環境要素別に沈着分解速度定数を整理する. 2.上記2.で作成した壁面沈着分解フラックスモデルを組み込んだCFD解析を実施し,高精度の汚染物質濃度分布予測する.更に濃度場解析と同時にNEVの空間分布を算出する数値解析技術を確立した上,換気装置の吹出・排気口位置,光触媒建材の設置位置を系統的に変化させることで最小風量,最小建材面積でNEVが最大値となる最適設計条件ならびに運転条件を探査する設計アルゴリズムの開発を行う. 3.上記で得られた実験結果を踏まえ,開発した沈着分解フラックスモデルを壁面境界条件として組みこんだCFD解析を,光触媒建材と空調システムの吹出し口の最適設計位置探査アルゴリズムに従って実施することで,健康リスクの少ない高清浄室内環境設計法を構築する. 4.本研究で得られた成果をとりまとめ,国内外の学会発表,学術雑誌への投稿等にて成果を公表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,実験消耗品・解析用計算パソコンの購入,情報収集のための旅費の支出が多かった.実験では対象汚染物質VOC(トルエン)を発生させるための模擬ガス作成用パーミエションチューブ,圧縮空気など実験用の消耗品ならびにマスフローコントローラを含む測定機器の購入,捕集データの分析費用として使用した.また,試験結果により整理した反応速度定数を組み込んだCFD解析を行うため,解析用ワークステーションを購入した. 最終年度である平成26年度は,引き続き実験と数値解析の実施が中心課題となると共に,得られた研究成果をまとめて公表する計画である.実験では対象汚染物質VOC(トルエン)を発生させるための模擬ガス,圧縮空気など実験用の消耗品の購入,捕集データの分析費用として使用する.また,試験結果により整理する反応速度定数を組み込んだ高精度のCFD解析を計画しており,解析用の高性能PCやデータの統計処理ソフトの購入を予定している. 平成25年の研究成果を国内外の学会等で発表すると共に,日本建築学会環境系論文集,国際ジャーナル等にて速やかに成果を公表する計画をしており,投稿費,学会参加費,論文掲載料ならびに旅費としての使用も予定している.
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