2013 Fiscal Year Research-status Report
歴史的町並みにおける大規模火災時のための避難経路整備の検証提案に関する研究
Project/Area Number |
24560749
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
三島 伸雄 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60281200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 陽子 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10435448)
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Keywords | 歴史的町並み保存 / 二方向避難 / 避難時間シミュレーション / 災害時要援護者 |
Research Abstract |
本研究は、高齢化が急速に進む一方で道路拡幅ができない歴史的町並みの防災対策として、大規模火災時の避難経路について検討を行いその対策の提案を試みるものである。モデル対象地区は、佐賀県鹿島市「浜庄津町浜金屋町重要伝統的建造物群保存地区」である。前年度の避難経路提案スキーム構築に基づき、避難時間のシミュレーションを行った。用いたソフトは、A&A社市販のSimTreadである。これは、同社のCADソフトVector Works上で動くものであり、地域の道路形状(幅員等)や建物形状を考慮できるマルチエージェントシステムであることから採用した。 避難の設定として、まず、各住戸からの「身の安全を図る場所(Tepmporary safe place)」と「避難地(Evacuation Place)」を設定した。前者は、各住戸の居住者に対するヒアリングによって抽出したが、二方向以上の避難を確保するために、各住戸につき住民が数を出すことができなくなるまであげてもらい、第一のルートと第二のルートに分けて分析を行うことにした。後者は、住民代表および自主防災組織との会議によって設定した。 避難シミュレーションは、地域の高齢化が進んでいることを考慮して、健常者と災害時要援護者の場合に分けて行い避難時間を計測した。歩行速度は、健常者を避難安全検証法、後者は堀内(1994)によるものとし、段差等における低減は2011年に対象地で行った避難訓練における避難時間計測に基づき設定した。また、狭隘な2道路が閉塞した場合についても避難時間を計測した。これらの計測結果を、避難時間7分未満、7~10分、10分以上に分類し、分析を行った。 以上より、対策をしなかった場合に改善すべき箇所を抽出できた。そして、それらの問題箇所に対する対策を講じた場合についても避難時間を計測し、その効果を実証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
避難経路提案スキームに基づき、避難時間のシミュレーションを行い、問題箇所の抽出と避難対策の検討を行うことができた。また、それらの結果を審査付学術論文3編(英文3、うち1編は2014年6月掲載確定済み)、審査付国際会議論文2編(英文2)、審査無し会議論文3編(英文2、和文1)に発表するなど、多くの研究成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
道路閉塞については、対象地区に2カ所を設定したが、道路幅員やその沿道建物状況(木造家屋の構造等からみた瓦礫流出方向、および建物老朽度等)に基づくものではなかった。そのため、実際に地震や台風などにより建物倒壊の危険性に地区がさらされたときにどのように道路が閉塞されるかを十分に検討したとは言えない。道路閉塞の可能性を地域の実態に即して把握して分析することが望まれる。 本科研費の採択時には、最終年度である平成26年度に住民等とワークショップを実施し、その結果を踏まえた検討を行う予定であった。しかし、まずは、道路閉塞の可能性についてより詳細な調査と検討を行うことが望まれる。その研究成果も踏まえて住民等に対するワークショップを実施することの方が効果的であると考えている。また、現在、異分野融合研究の中でICTを活用した災害時要援護者支援システムの検討準備を行っている。その研究につながるように研究成果を発展させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に研究が予定以上に進捗したことにより、国際会議論文やジャーナル誌に多く投稿することになり、人件費・謝金に必要な経費が生じなかったため。 次年度は、当該年度に論文投稿を行ったことによる査読者からの意見で理解できた研究課題の解決を図ることに力を入れたい。具体的には、研究対象地区における道路閉塞に関わる問題である。そのため、当該地区の現状調査等を改めて行う。そのために、現地調査のための物品および学生アルバイト謝金、および国際会議やジャーナル誌への論文投稿を中心に助成金を使用する。
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Research Products
(9 results)