2012 Fiscal Year Research-status Report
コンパクトな都市再編に向けた日本型アーバン・ビレッジの形成に関する研究
Project/Area Number |
24560751
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
山口 邦雄 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (20457758)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人口減少 / 目標都市像 / 集約型都市 / 人口密度 / 規制緩和 |
Research Abstract |
研究初年度の実績は,以下の通りである。 1,人口減少の進む東北6県のなかで,都市機能を集約させる誘引政策と規制政策(具体的には3411条例に基づく地区指定)に取り組んでいる弘前市,潟上市,鶴岡市,福島市を対象に,2005年と2010年の2時点における500mメッシュの人口データを用いて人口密度の変動値をGISで把握した。この変動値を11区分し,さらに市街化区域,市街化調整区域,非線引きの用途地域指定地,非線引きの白地,都市計画区域外の5つの土地利用規制別にメッシュ数を整理して分析を行った。数量分析とともに,この密度変動を目標都市像に照らし合わせ,都市再編の動向と問題点を具体的かつ即地的に考察した。 2,人口密度の変動に影響を与えるものとして小学校,医療施設,大規模小売店舗の生活関連施設とバス停,主要道路,鉄道駅の交通関連施設を想定し,各施設の近接性が密度変動に如何なる影響を及ぼすかの観点から,メッシュ中心と各施設までの距離を把握・分析した。その結果,「上昇メッシュまでの距離の平均<低下メッシュまでの距離の平均」の関係を,市街化区域では医療施設と大規模小売店舗の施設で,市街化調整区域では鉄道駅の施設で確認した。 3,人口密度の変動と各施設までの距離を用いた多変量解析においては統計的に明快な結果を得ることができなかったため,研究計画を一部前倒しして居住者と地権者の意識・意向調査を実施した。対象は密度変動に特徴ある福島市と潟上市とし,市街化区域は密度上昇・低下の著しいメッシュ地区の居住者に対して,市街化調整区域は3411区域内に農地を所有する者に対して実施した。福島市の分析を終えた段階であり,市街化区域の典型的な密度上昇メッシュ地区において,医療施設や大規模小売店舗等の生活関連施設の利便性の評価が典型的な低下メッシュより高いことが確認でき,2,の確認の一部と一致する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に示した5都市について,目標都市像と都市機能を集約させる誘引政策と規制政策の整理を行い,GISを利用した人口密度の変動の把握から都市再編の動向と問題点が即地的に把握できた。このうちの4市において,当初の計画になかった土地利用規制別での密度変動分析も,合わせて行うことができた。 また,密度変動に影響を与える施設の影響を,当該メッシュと施設の距離の観点からGISを用いて分析を行い,密度変動と主要施設の近接性の関係を把握することができた。ただし,当初に想定した個々のメッシュのデータに基づいた多変量解析では有意な結果を得ることができていない。そのため,研究計画を前倒し,居住者,地権者の意識・意向調査の一部を実施し,主要施設が密度変動に及ぼす影響の検証を行った。 都市再編に寄与していく地区と阻害している地区について,詳細な土地・建物利用の変化を把握するため基礎となる2時点の地図を収集し,分析・考察を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前倒しで行ったアンケートについて,さらに他都市においても実施し,基礎データの蓄積を進める。 都市再編の動向に関し,主要施設からの距離の観点に加え,当該メッシュの高齢化率などの異なる観点から分析を進め,考察の深化を図ることとする。 また,研究を進めるなかで商業系市街地の観点からの都市再編の検討も必要との認識に至った。そのため,本研究に商業集積度の変動に基づく都市再編の分析を新たに組み込むこととする。具体的には, 人口密度の変動分析と同様に,2005年と2010年の2時点における500mメッシュの商業床面積のデータを用いて検討を進める。さらに,人口密度の変動といかなる関係にあるのかの考察を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額として852,720円が発生した。これは,物品費において,国勢調査メッシュデータ・町丁別データの2010年版の発売時期が当初の想定より大幅に遅れたために安価な住民基本台帳のメッシュデータを購入して分析を行ったこと,申請後にGISソフトライセンスの余裕が発生したため購入が不要になったことによる。また,旅費において調査時の宿泊が不要であったこと,研究協力者の同行のなかったこと等による。 次年度の研究費1,953千円の使用として,物品費は,より正確で高齢化率などの要素も含めた詳細分析を可能とする国勢調査のメッシュデータ(東北ブロック版,2005年と2010年)に420千円,分析用のPCソフト(SPSS)に103千円,図書および文具等の消耗品に150千円の計673千円を計画する。旅費は5市の行政ヒアリングに100千円,5市の調査に125千円,学会参加2箇所(北海道,東京)の140千円,資料収集(東京)に50千円の計415千円を計画する。人件費・謝金はアンケートの発送準備・集計委託に350千円,データ整理に100千円の計450千円を計画する。その他はアンケート票・封筒の印刷と送料に415千円を計画する。
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