2013 Fiscal Year Research-status Report
コンパクトな都市再編に向けた日本型アーバン・ビレッジの形成に関する研究
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24560751
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
山口 邦雄 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (20457758)
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Keywords | 人口減少 / 目標都市像 / 集約型都市 / 人口密度 / 規制緩和 / 商業床面積 |
Research Abstract |
研究2年度目の実績は,以下の通りである。 1.まず,前年度に実施した4市の人口密度変化の把握に基き,市街化調整区域において3411区域とその他の区域を比較して詳細な分析を行った。その結果,3411区域指定を広範に指定した3都市では指定による明確な効果はないが,限定的な指定を行った福島市において他の市街化調整区域内集落に比べて密度低下が少なく指定効果が確認できた。その上で3411区域の指定形態が大きく異なる潟上市と福島市において実施した3411区域内の農地所有に対する開発意向等の調査結果を分析し,規制緩和の効果と今後の開発可能性について考察した。農地所有者の意識・意向調査から,市街化区域近接での3411区域の指定であれば開発の可能性は高く,区域指定に関する情報提供の充実により,更に開発の可能性の高まることが明らかになった。 2.次に,非線引き都市におけるコンパクト型の都市形成の動向を把握するため,人口減少率の著しい五所川原市,一関市,栗原市,横手市,喜多方市の5市を対象に,集約性の基礎的な指標である人口と商業床面積に着目し,その変化をGISで把握し考察した。その結果,DID内全体において人口減少は著しいこと,しかし人口と商業床面積の同時減少の進む「衰退型」のメッシュ地は限定的であること,むしろ商業床面積がわずかながら増加する「転換型(商系化)」のメッシュ地の多いこと,以上の3点が明らかになった。一方,DID外の用途地域指定地においては,近年の良好な都市基盤を備えた住宅地開発地と大型商業施設の立地がセットになり,人口と商業床面積が同時増加する「集積進行型」のメッシュ地の存在を確認した。また,都市計画区域内の白地において,人口の大幅な増加のあるメッシュ地が見られた。以上から,非線引き都市のコンパクト型の都市再編に向けた動向と課題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に前倒しで実施した2都市の農地所有者に対する意識・意向調査の回収票を本年度で集計・分析し,3411区域指定の形態の違い,農地の立地,農地の規模,制度の理解度の観点から本研究で明らかにすべき事項のひとつである3411区域指定の効果や区域内の開発可能性の違いの考察を行うことができた。 また,郊外・田園部での土地利用規制が相対的に緩い非線引き都市におけるコンパクト型の都市形成の動向把握も必要との観点から,人口の変化とともに商業床面積の変化も500mメッシュで把握して分析することができた。具体的には,東北地方の非線引きの5市を研究対象都市とし,DID内,DID外(用途地域指定地),都市計画区域内の白地の3区分で分析を行った。なお,ここでは各メッシュについて人口の増減と商業床面積の増減から9タイプのメッシュに分類して分析することにより集積性の変化に関する考察を深化させることができた。 なお,基礎データ蓄積のための残り2都市における農地所有者への追加アンケートは,所有者の住所捕捉が困難であったため実施を断念したが,先行実施した他2都市の農地所有者と市街化区域内居住者のデータから分析の深化は可能である。 以上から,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間内の目標設定として挙げた3つの獲得目標のうち,「1.都市全域を対象に狭域の単位空間ごとの人口密度の変化を把握し,居住地再編の進捗とその物理的要因を解析すること。」「2.既存集落の維持・活性化等を目的とした開発規制の緩和措置の影響を全市レベルと地区レベルの視点から検証すること。」について,一定の成果を得た。今後は,とりわけ1.に関連し,高齢化率等の観点も加えて分析・考察を深化させていく。 また,最後の獲得目標である「3.全市・地区の両面から望ましいとされる居住地空間像について,インフィル開発を前提として提示すること。」に向け,研究を進める。具体的には,1)インフィルによる良好な居住地空間形成に関する事例の基礎情報を,文献調査とアンケート調査を実施して得る。2)現地踏査・ヒアリングによって,形成の背景,行政施策の有無,その空間の質等の詳細な情報を得,コンパクトな都市形成への貢献度やそれらを実現していくための土地利用の規制・誘導方策を考察し,研究のまとめとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度へ繰越す研究費は,地権者への追加アンケート調査ができなかったこと,メッシュデータとPCソフトが想定した価格より大幅な割引きがあったこと等から生じた。 次年度の研究費の使用として,物品費は,中心市街地において500mメッシュより詳細な単位で分析可能となる町丁別商業統計調査(東北ブロック版,2002年と2007年)の電子データ,現地踏査や事後の分析のための住宅地図帳等の書籍とPCインクや文具等の計250千円を計画する。旅費は,東北以外の都市を含む8市の現地踏査・行政ヒアリング(5市は研究協力者も同行),学会参加2箇所(神戸,広島),その他の計785千円を計画する。人件費・謝金は,アンケートの発送準備・集計委託,データ整理の計300千円を計画する。その他は,アンケート票・封筒の印刷と送料,学会投稿料等の計280千円を計画する。
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