2012 Fiscal Year Research-status Report
琵琶湖東部湖岸域の空間変容と社会関係の統合的分析からみる郊外の持続性
Project/Area Number |
24560768
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 友彦 立命館大学, 政策科学部, 教授 (40283494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 一彦 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80388082)
高村 学人 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (80302785)
式 王美子 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (10512725)
齋藤 雪彦 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (80334481)
轟 慎一 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (80295633)
橋本 清勇 広島国際大学, 工学部, 准教授 (50273470)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 琵琶湖 / 郊外 / 空間 / 社会 / 持続性 |
Research Abstract |
本研究は、琵琶湖東部湖岸域(近江八幡市および東近江市を想定)を事例とし、当該地域の歴史性と近代性の両面に着目しつつ、「郊外地域を持続的にする条件は何か?」を主たる研究上の問いとして設定し、空間変容と社会関係の2つの側面からこの課題に取り組み、これによって「持続的な郊外」を可能にする条件について考察することを目的とするものである。 平成24年度は主に空間変容に注目して研究の初動作業を中心に行った。過去の住宅地図の収集を行い現代の住宅地図(電子版)を比較を行った。また、パーソントリップ調査や国勢調査小地域データを用いてこれらの各地区の特徴を分析した。平成24年8月には近江八幡市と東近江市の両市内のスプロール地区、一時期に開発された計画的な郊外住宅団地、そして重要伝統的建造物群保存地区等の視察を行い、現地での住民組織へのインタビュー等を通じて、分析から判明した特徴と現地での印象について比較確認を行った。 平成25年3月には、さらなる分析結果についての相互の確認のための研究打ち合わせを行うとともに、湖岸域であることの特徴がより顕著に見出される「かばた」と呼ばれる水利施設が西部湖岸域においてどのように配置されているかを視察した。農村集落の持続性を考える上で水利施設の存在が大きな要素になることを確認した。 これらの作業により、空間変容と社会関係の統合的な分析のための第一段階の作業として、空間変容過程を明らかにした。仮説的ではあるが、郊外を持続的にするいくつかの条件が考えられた。最も重要なことは、就業場所へのアクセスが有利なことである。良好な人口バランスを見せる空間分析結果では、工場への近接性に優れていることと兼業農業を許容する広大な農地が存在していることの2点が観察された。したがって、今後はこれらの諸条件が実際に居住実態に直接的な影響を与えているのかどうかを確認する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究期間を設定した。平成24年度は研究代表者および研究分担者全員が一同に集まる場を設けた上で、分析方法に関する研究討論を行うことからスタートすることとしたが、実際にそれぞれの分析軸を議論することができた。 また、持続可能な郊外のモデルとしての当該地区の現状認識と、それを可能にした要因についての研究討論を行い、共有認識を深める、とした。とりわけ、この地域の現状に詳しい研究者を講師として研究会を開催することとしたが、実際に2回の研究会を実施し共有認識を深めることができた。 平成24年度は、分析軸の設定、空間変容と社会関係に関する研究・調査項目の妥当性、そして想定される持続要因のあり方を議論することとした。現段階での人口バランスの分析では、工場立地と兼業のための農地の存在が大きく影響しているのではないかとの仮説を得た。持続要因のあり方については、一定の仮説導出を達成することができた。 持続要因を明示することは研究の最終目標でもあり、十分な議論がなされるべき最も重要な内容であった。交付申請時においては、想定される要因として仮説的に「高度経済成長期の抑制、空間的緩衝性、自治意識の伝統、年齢階層の混合性、農村集落の持続性」の5項目をあげた。高度経済成長期の抑制については、抑制的であるところと、抑制的でないところの両タイプにおいて、良好な年齢混合が見られた。年齢階層の混合性については、ジニ係数を用いた人口指標によって一定の評価方法を得ることができた。また、農村集落の持続性については、水資源のあり方も大きく影響を与えることが示唆されたため、今後はこの方面についてのより深い調査が必要になることがわかった。したがって上記5項目のうち、3項目程度の検討を終えたところだと評価することができよう。今後も引き続き、空間的緩衝性、自治意識の伝統等についても詳細に調べていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時の研究計画に沿って使用した結果、99.8%を使用したが、0.2%の残額が生じた。これは「その他」の研究成果発表費等の費目で未使用があったためであるが、今後も交付申請時の研究計画に沿って使用する予定である。 対象地域分析のためのデータ収集が達成されたので、学会等への具体的な研究成果報告に向けて執筆作業を進める必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付申請時の研究計画に沿って使用する予定である。
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