2013 Fiscal Year Research-status Report
ポスト都市再生時代の欧州都市における社会的持続性を実現するための計画論の再構築
Project/Area Number |
24560769
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
阿部 大輔 龍谷大学, その他部局等, 准教授 (50447596)
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Keywords | 社会的持続性 / 空間再生 / 社会的包摂 / カタルーニャ州 / 界隈法 / 統合的都市政策 |
Research Abstract |
本研究は、都市政策の統合的アプローチを図る中で、近年、単身高齢者や若年失業者、移民を代表とする社会的弱者の包摂を主眼に盛り込みつつある欧州諸都市の再生の現状を明らかにし、空間再生と社会的包摂を勘案した新たな都市計画論の構築を図ることになる。H25年度は2年目にあたる。H25年度の目標は「環境的・経済的・社会的衰退地域の諸問題ならびに地域からの自律的な取り組みの実態分析 スペイン・カタルーニャ州「界隈法」の事業運用実態を中心に」であり、以下の調査・研究を実施した。 1) カタルーニャ州の「界隈法」(Llei de Barris)を用いて条件不利地域や衰退地区の再生に取り組んでいる各自治体のうち、2005年(第二回目)の申請に応募し、採択された自治体を中心に、州内の12地区(16基礎自治体)において、当該プログラムの管轄担当の関連部局へのインタビュー調査、プログラム対象地区のフィールドワーク、文献資料収集を行った。 2) FIATの企業城下町で産業の衰退後に社会的隔離の問題が表面する中、EUのUPPプロジェクトやURBAN IIを活用しながら環境再生に取り組んでいるイタリア・トリノ市において、郊外部再生プロジェクトの担当部局へのインタビュー調査、フィールド調査および資料収集を行った。今回の滞在で調査を実施したのは、いずれも移民集住地区であるポルタ・パラッツォ地区およびサン・サルバリオ地区である。 3) ルール工業エリアの衰退に伴い、市内で移民を中心とする社会的弱者の隔離が問題となって久しいドイツ・ドルトムントのノルドシュタット地区を対象に、フィールド調査および資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に実施できなかったイタリアでの現地調査を実施できたことに加え、上記カタルーニャ州「界隈法」の初期2カ年(2004-2005年)の対象自治体の大半の実態を調査し、政策の展開、事業実施上の限界を把握することができた。また、ラテン諸国とは様相が異なると思われるドイツ・ドルトムントの事例研究も実施できたことで、本研究が着目する界隈法の特異性がより明確に構造化することが可能となった。現地での専門家とのつながりも強化することができ、今後のより緊密な連携体勢を構築することができた。以上より、(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
スペイン・カタルーニャ州の界隈法の分析を整理し、社会的持続性を実現するための計画ツールとしての特徴と限界を考察する。現段階では、界隈法は衰退市街地を対象としたコミュニティ再生の仕組みであり、地域の環境、安全や福祉、教育や文化、経済や雇用、社会的ネットワークの形成を含めた包括的な再生を行うという理念のもと地域の社会的持続性の向上に寄与していると想定しており、この点の検証が重要となる。具体的には、界隈法の施行前後の地区コミュニティの協働の程度の差を特定し、社会的包括の観点からのアプローチが都市の社会的持続性を担保し、社会的弱者のみならず一般市民の総合的な生活の質の向上に寄与しうることを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた日程での出張(国内外両方とも含む)が実現できなかったため、また、物品の購入の予定が遅れたため。 前年に予定していた出張、物品を購入するなどの研究を実施することに加え、H26年度の当初計画に盛り込んだ通り、図書購入、図版整理等のためのソフトの購入、欧州諸都市フィールド調査のための旅費、国際学会への参加費および旅費、国内の学会への参加費、学会論文投稿費・掲載費、資料整理や図版作成のための謝金を予定している。
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