2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560770
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Kacho University |
Principal Investigator |
川島 智生 京都華頂大学, 現代家政学部現代家政学科, 教授 (60534360)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 小学校校舎 / 被災建築 / 復興計画 / 地域コミュニティ / 学校建築史 / 鉄筋コンクリート建築 |
Research Abstract |
2012年度の研究は東日本大震災によって被災した東日本の太平洋沿岸部地域について、久慈市からいわき市までの岩手県・宮城県・福島県の三県の小学校を対象に悉皆調査を実施した。まず対象地域にどのような校舎があるのかの実態調査からはじめ、対象校の特定をおこなった。対象校については可能な限り校舎の建物の内外にわたって現地調査を実施し、写真撮影にくわえ、際だった被害箇所の観察をおこなった。また小学校校舎周囲の建物の現状調査をおこない、被災の様態を検証した。一部の小学校では地方自治体の教育委員会施設担当職員に対して、今後の方針についての聞取り調査をおこなった。さらに被災した小学校の通学区の地域における2012年における居住の実態を自治体都市計画担当職員への聞取りも含めた現地調査を実施し、コミュニティも含めた地域の復興の進捗ぶりを調べた。 現地調査の一方で、岩手県立図書館・宮城県立図書館・福島県立図書館などで各小学校ならびに津浪の文献調査をおこない、関連する資料の収集をおこなった。また自治体の教育委員会施設担当職員に対する調査によって、設計者の一部を特定し、設計時の理念ならびに建替え前の校舎の建築的情報を収集し、地域のなかでの物理的かつ社会的な位置の把握をおこなった。 平行して東京都中央区・台東区・文京区に現存する関東大震災の復興小学校について、現地調査を実施し文献調査をあわせておこなった。 研究協力者として、都市住宅学会地域コミュニティ住宅計画研究小委員会委員長の宇杉和夫氏に本研究の調査の同行ならびに資料収集と分析をゆだねた。宮城県・岩手県・福島県を対象とした復興の方針、仮居住の経過と復興への展望、コミュニティの再生などに関して新知見を得た。さらに仙台工業高等学校教諭ら被災県に居住する協力者に現地での調査補助を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の全体計画のなかでの2012年度分の研究についてはおおむね当初の計画どおりに進展している。研究の大要は次の4点からなる。 1点目は東日本大震災による被災小学校の現地調査であり、ほぼ悉皆調査に近いレベルで実施がなされ、校舎建物の内外にわたり詳細な観察をおこなった。そのような迅速に調査をおこない得た理由は、調査地域の県に居住する研究協力者によるサポートが得られたこと、ならびに事前に一部の現地調査をおこなっていたことによる。これらの校舎のなかに解体撤去が当初予定していたよりも早くおこなわれたために、2012年度に消滅した校舎もあり、得がたき調査となる。成果としては貴重な写真資料が得られた。 2点目は東日本大震災による被災小学校の文献資料調査であり、被災した多くの小学校が別の小学校に仮設的に移転していたことで、2012年度では各小学校に所蔵される書類や図面、写真類の閲覧も含めた資料収集が十分におこない得たとは言いがたい現状にある。同様な資料を有する市町村など関係部署もまた復興計画の策定などで混乱を極めており、資料調査では協力を得られないケースもあった。 3点目は関東大震災の復興小学校の校舎についての現地調査であり、現存校についての調査はほぼ終えることができた。この理由は調査地域である東京都に居住する研究協力者によるサポートが得られたこと、ならびに事前に一部の現地調査をおこなっていたことによる。 4点目は東日本大震災による被災小学校の通学区を構成する地域コミュニティの復興に関する調査であり、研究協力者による現地調査ならびに研究者間のネットワークの構築により、研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては次の4点を計画している。 1点目は2012年度に十分な成果を得られなかった東日本大震災被災校の資料調査に重点をおいて研究をすすめる。設計図や写真、沿革などの校舎に関する基礎資料にくわえて、当初の全体計画で設定した1896年の明治三陸津波以後と1933年の昭和三陸津波以後、そして1960年のチリ地震津波以後の、校舎ならびに地域の様態の比較検証をおこない、どのような改善がなされたかを調べる。そしてレベルによって被害にどのような違いが生じたのかを解明する。 2点目は東日本大震災被災校の現地調査であるが、震災後2年が経過し、どのような実態にあるのかを把握する。すでに解体された校舎、今後解体予定の校舎、行く末の決まっていない校舎等の分類をおこない、その理由を調査解明する。 3点目としては東日本大震災被災校の過去の災害履歴の調査をおこない、2012年度で得られた知見による内容と照合させる。災害復興の観点から地域との関係性の調査に着手する。そこでは避難路や通学路の検討をはじめ、地形による制約などを現地調査の実施を併用し検証する。この手法は被災校周辺の地域の文脈を読み込むことにつながり、地域コミュニティとの関連をみる。 4点目は阪神淡路大震災以降18年が経過した2013年の時点でどのように復興したのかを、各小学校と地域の現地見学を実施する。倒壊し現存しない戦後に建てられた数多くの小学校についても、記録として文献調査をおこなう。その範囲は神戸市から尼崎市に及ぶ。震災以前の校舎がどのくらいの割合で残るなどの、建築実態を把握し、継承されたものと断絶されたものとをピックアップする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費については次の様な使用を計画している。直接経費130万円のうち、大枠で旅費として80万円、消耗品費として20万円、調査協力費として30万円を計画している。詳細は以下のとおりである。旅費については東日本大震災で被災した東北行きの旅費が1回の経費が約10万円として5回で計50万円、東京での研究協力者との打合せが3回で1回の経費が4万円で計12万円、そのほかの地域への旅費として約15万円、阪神淡路大震災で被災した神戸・阪神間の調査旅費として約3万円を予定している。消耗品費については2012年度に購入予定であったが執行できていないデジタルカメラやICレコーダー、ハードデスク等のパソコン関連の器具を優先して購入の予定である。また2013年度に購入予定のインクジェット複合機や図書などの購入費として、20万円を計上している。調査協力費としては、現地調査のサポートとして30万円を予定している。
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Research Products
(1 results)