2012 Fiscal Year Research-status Report
地域密着性からみた小規模多機能型居宅介護施設の重層的設置計画圏域に関する研究
Project/Area Number |
24560776
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
上和田 茂 九州産業大学, 工学部, 教授 (70122596)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小規模多機能型居宅介護 / 地域密着型介護サービス / 設置計画圏域 / 利用圏 / 広域化 |
Research Abstract |
本研究は、小規模多機能型居宅介護施設において、地域密着性と利用者による施設選択性の両者を満足する重層的設置計画圏域の設定指針を提示するため、第1に、現状の利用圏の状況、特にその広域化の実態およびその形成要因の解明、第2に、地域密着性概念の再構築、第3に、施設選択性による広域化の必然性の析出を行うことを研究目的としている。 平成24年度は、前記の第1の研究目的を遂行するため、まず、全国の都市から小規模多機能型居宅介護事業所を7箇所以上保有している108都市を選定し、当該都市を対象に郵送アンケートを実施し、回答のあった93都市を対象に、各都市の利用圏の概況を把握するとともに、概略利用圏に基づき各都市を類型化し、「狭域型」39%、「広域型」30%、「中間型」31%の構成比が得られた。 次に、「狭域型」および「広域型」と判定された都市から各3都市を抽出し、当該都市の全ての事業所を対象に郵送アンケートを実施し、各事業所毎の利用圏を把握した。その結果、「広域型」と判定されていた都市はもとより、「狭域型」と判定されていた都市においても著しい広域化の現象が認められ、各都市の担当行政が認識している以上に、地域密着性に逆行する広域的利用の傾向が顕著であることが判明した。 また、事業所管理者への設問結果から、広域化の主要因が、事業所による利用者定員の充足志向、事業所設置空白地域の存在、地域密着性および設置計画圏域設定の不浸透・不認識、利用者側における施設選択志向等にあることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「小規模多機能型居宅介護施設の利用圏およびその形成要因の把握」「地域密着性概念の再構築」「利用圏における広域化の必然性の析出」という本研究の3つの研究目的のうち、平成24年度の研究実施計画に取り上げた「小規模多機能型居宅介護施設の利用圏およびその形成要因の把握」については、まず、当施設を一定数以上有する全国の都市の関係課を対象とする実態調査により、「狭域型」「広域型」「中間型」という利用圏型にしたがい対象都市を類型化することができた。さらに、「広域型」および「狭域型」の典型的都市内の各事業所の管理者を対象とするアンケート調査により、全体を通して、当制度の根幹である地域密着性に逆行する現象、すなわち多くの事業所において利用圏の広域化が著しく進行していること、およびその形成要因を明らかにすることができ、所期の研究目的はほぼ達成されたと考えられる。 しかし、今回把握できた利用圏は、行政関係者および事業所管理者の判断によるものであり、当該者の主観が含まれた定性的な性格を帯びたものである。より正確な利用圏の実態を把握するには、利用者の住所情報を入手し、正確な利用距離に基づく定量的な分析が必要である。この点については次年度の研究課題として持ち送る。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に積み残した小規模多機能型居宅介護事業所の利用圏の定量的分析を実施するとともに、「地域密着性を担保する設置計画圏域像」および「近距離利用の利点」の両者を析出するため、平成24年度の調査によって明らかになった「狭域型」の都市から2市を選定し、当該の2市内の全事業所から特に狭域性が強い事業所各2箇所、計4箇所を対象として、施設訪問による行動観察およびヒアリングにより、利用者および介護者の行動実態、地域住民およびボランティアの事業所への来訪状況、利用者と地域との接触・交流状況を明らかにする。 平成26年度は、「広域型」の都市における広域型利用の事業所を対象に、「高齢者の心情による施設選択性およびその結果としての広域化の必然性」を把握するため、当該の2市を選定し、当該の2市内の全事業所から特に広域性が強い事業所各2箇所、計4箇所を対象として、施設訪問による利用者、家族および管理者に対するヒアリングを行う予定である。 また、3年度にわたる調査分析を総合し、地域密着性と施設選択性の両者のバランスが取れた重層的設置計画圏域の指針を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」の項で述べたように、利用者の住所情報を得るための施設訪問を平成24年度内に実施することができず、当該調査旅費の使用を次年度に持ち送ったことから、次年度使用額172,480円が生じた。 この172,480円および平成25年度助成額900,000円を合計した1,072,480円が次年度の研究費となり、その使用計画は次のとおりである。2市4事業所への調査旅費 300,000円(1人×15万円×2市)、調査データ分析人件費 772,480円。 なお、平成26年度助成額600,000円の使用計画は次のとおりである。2市4事業所への調査旅費 200,000円(1人×10万円×2市)、調査データ分析人件費 300,000円、報告書作成、論文投稿料等 100,000円。
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