2013 Fiscal Year Research-status Report
地域密着性からみた小規模多機能型居宅介護施設の重層的設置計画圏域に関する研究
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24560776
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
上和田 茂 九州産業大学, 工学部, 教授 (70122596)
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Keywords | 小規模多機能型居宅介護 / 地域密着型介護サービス / 設置計画圏域 / 利用圏 / 広域化 / 高齢者介護 |
Research Abstract |
本研究は,小規模多機能型居宅介護施設において、地域密着性と利用者による施設選択性の両者を満足する重層的設置計画圏域の設定指針を提示するため、第1に、現状の利用圏の状況、特にその広域化の実態およびその形成要因の解明、第2に、地域密着性概念の再構築、第3に、施設選択性による広域化の必然性の析出を行うことを目的としている。 平成24年度に、前記の第1の研究目的である「小規模多機能型居宅介護事業所の利用圏における広域化の実態把握およびその形成要因」について、各自治体および各事業所管理者を対象とするアンケートにより明らかにしたが、そこで得られた利用圏のデータは行政担当者および事業所管理者の主観が混じった定性的なものであり、正確な利用圏を確定するには不十分であった。 そこで、平成25年度は、事業所管理者の協力により、各事業所利用者の住所情報を入手し、各利用者の正確な利用距離(事業所と利用者の住宅間の直線距離)のデータを作成した。また、この調査では、利用距離の把握と共に、第3の研究目的である「施設選択性による広域化の必然性の析出」の一環として、利用距離の広域化(遠距離化)を促進する要因としての「長期の泊まり」を把握したが、その分析及び考察は平成26年度に譲る。さらに、第2の研究目的である「地域密着性概念の再構築」の一環として、事業者管理者への意識調査により地域密着性の重視度の確認を行ったところ、かなり希薄化しており、小規模多機能型居宅介護施設の設置理念が空洞化している事実が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1の研究目的である「小規模多機能型居宅介護事業所の利用圏における広域化の実態把握およびその形成要因」については、必要なデータ収集および集計は完了している。その分析考察もそのほとんどを済ませているが、第3の研究目的である「施設選択性による広域化の必然性の析出」との関係における広域化の形成要因に関する最終的考察は平成26年度に行う予定である。 第2の研究目的である「地域密着性概念の再構築」に関する考察についても、事業者管理者への意識調査を通して地域密着性の重視度が希薄化している事実およびその要因の把握を終了している。ただし、一方の小規模多機能型居宅介護施設の設置理念である地域密着型介護サービスの提供を旨として運営している事業所の活動状況については、今のところわずかな事例のケーススタディにとどまっている。平成26年度はこの点における分析考察をさらに進め、地域密着性の意義を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、まず、平成25年度において積み残した次の諸点について分析考察を行う。すなわち、利用距離の広域化(遠距離化)を促進する大きな要因の一つと想定される「長期の泊まり」と実際の利用距離との相関分析を通して仮説の検証を行う。と同時に遠距離利用を志向する高齢者および家族の心情を明らかにする。一方、地域密着型の運営事例を対象に地域密着性の有効性を導く。さらに、事業所関係者および利用者が地域密着性を実感できる地域的範囲ならびに近距離利用による利点を明らかにする。以上の分析考察の後、平成24年度および平成25年度において行った利用圏の広域化の現状把握とその要因分析の結果とを総合し、地域密着性と施設選択性の両者のバランスが取れた重層的設置計画圏域の指針を提示する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
小規模多機能型居宅介護事業所における利用者の正確な利用距離を算出する基礎データとしての住所情報を入手することを目的として各都市の事業所を直接訪問する計画であったが、郵送による依頼により住所情報の入手が可能となったため、調査旅費を使用する必要がなくなり、未使用金が大幅に生じた。 平成26年度に、地域密着的事業所運営の有効性およびその地域的範囲を解明するため、事業所を直接訪問しヒアリングを行う計画であり、その調査旅費に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)