2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560780
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 耕一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30349831)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換、フランス |
Research Abstract |
平成24年度の活動計画では、主として「西洋建築史学の批判的再検討研究会」と「建築理論の近現代建築史研究会」を進めることを計画していた。名称についてはより簡便に、前者を「西洋建築史研究会」、後者を「近代建築理論研究会」としているが、内容は当初予定していた通りのものである。 当該年度は特に「建築理論の近現代建築史研究会」(改め「近代建築理論研究会」)を中心に進め、建築史学を専攻する大学院生とともに「近代建築理論研究会」を全16回開催した。毎回のレジュメをインターネットで公開している。本研究会は「西洋建築史学の現代性」を研究する上で重要な、建築の理論的背景の歴史を研究するものとして、有意義なものになっており、平成25年度は使用したテキストの翻訳を計画している。また、並行して「西洋建築史学の批判的再検討研究会」(改め「西洋建築史研究会」)も開催したが、こちらはまだ1回のみの開催となっている。 当該年度のもっとも重要な研究実績としては、『ゴシック様式成立史論』(中央公論美術出版、2012年11月)の出版がある。本書の序章は「構築術的空間論としてのゴシック建築研究」と題した論考であるが、これは本研究課題「西洋建築史学の現代性に関する基盤的研究」に対するひとつの応答として執筆したものであり、現在の西洋建築史学に必要と考えられる方法論を提示しながら、それを具体的なゴシック建築研究にあてはめたものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた2つの研究会「西洋建築史学の批判的再検討研究会」と「建築理論の近現代建築史研究会」は、どちらも名称を変更し「西洋建築史研究会」と「近代建築理論研究会」としたが、いずれも予定通り立ち上がっている。ただし一方(近代建築理論研究会)を重点的に進め、1年目でほぼ終了するところまで進んだのに対し、もう一方(西洋建築史研究会)は未だ1回しか開催できていない。当初の予定では両方を並行して進めながら2年ほどかけて進める予定であったが、結果的には初年度に一方を、2年目にもう一方を進めることになりそうである。 このような進み方になった背景には、「近代建築理論研究会」を進めることでキー概念の抽出が進むことが判明したため、こちらを先に重点的に進めた方がいいと考えたためである。これを受けて、次年度の研究にも弾みがつきそうであり、研究はおおむね順調に進展しているといえる。特に、現代の建築界の状況を鑑みると、建築史と建築理論が建築界において果たしうる役割を早急に再検討する必要があり、そのためには「近代建築理論研究会」の重点的な開催が必要となった。 他方、「西洋建築史研究会」があまり積極的に開催できなかった背景には、やはり西洋建築史学を専門とする研究者や大学院生があまり多くないという背景があり、そのことが如実にあらわれた結果となった。このままでは2年目においても、「西洋建築史研究会」を精力的に開催することは難しいと思われるため、それに対する対策が必要であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度に実施してきた「近代建築理論研究会」はおおむね終了に近づいている。この研究成果については、書籍の出版、翻訳などのかたちでまとめていく予定である。 さらに今後は「西洋建築史研究会」の活発化が最大の課題となる。1年目には西洋建築史学を専門とする研究者や大学院生があまりいないことから、消極的な開催しかできなかった。代わりに「近代建築理論研究会」を頻繁に開催することができたのはひとつの成果であったが、今後は「西洋建築史研究会」を盛り上げていく方策が必要である。 そのため、今後は「西洋建築史研究会」と並行して、建築史学の方法論に関する研究会を進めていく予定である。これは西洋建築史に限らず、建築史学共通の問題として捉え、広く研究者や大学院生の参加を募る。建築学全体のなかで建築史学が地盤沈下を起こしている現在、方法論を新たに模索していくことは重要な課題であり、この方法論の研究会を通じて、「西洋建築史研究会」にも成果をフィードバックしていきたい。 こうした研究会を通じて、一方では建築界における建築史・建築理論の貢献を考え、もう一方では社会全体における建築史学の役割を改めて考えることで、幅広い視野のなかでの建築史学の役割を再考していきたい。 なお、方法論に偏ると抽象的な議論ばかりになるおそれがあるため、初年度に発表した『ゴシック様式成立史論』の「構築術的空間論としてのゴシック建築研究」をさらに深めることを目的に、自分自身の研究の専門分野であるゴシック建築研究を新しい方法論を駆使してより深めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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