2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560780
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 耕一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30349831)
|
Keywords | 西洋建築史 / 近代建築史 / 世界システム論 / 時間と建築 |
Research Abstract |
平成24年度よりつづけてきた「近代建築理論研究会」は6月21日の研究会をもって完了した。本研究会の成果として、H.F.Mallgrave, Modern Architectural Theory, Cambridge Univ. Press, 2005を、現在翻訳、出版準備中であり、平成26年度中には丸善出版より出版できる見通しである。おなじく平成24年度より開催してきた「西洋建築史研究会」は、すでに昨年度中よりこの分野を研究する若手研究者や大学院生が少ないため、継続の難しさを感じていたため、平成25年度の前半には異なる観点から「建築史の方法論」に関する研究会を立ち上げた。 「建築史の方法論」研究会ではとくに、I.ウォーラーステインの「世界システム」論から派生した「グローバルヒストリー」について、若手研究者や建築史研究に携わる大学院生たちと議論を進めたところ、これは本研究課題「西洋建築史学の現代性」を考える上で、とくに重要な考え方であることが明らかになってきた。翻って、平成25年度の後半では「世界システム」論そのものと、建築史学および建築理論との関連性について個人研究をすすめ、「終わりゆく近代」という観点から、建築観そのものが歴史的にいかに変化してきたかを明らかにするという、新たな視座を獲得した。平成25年度中には「終わりゆく近代と近代的建築観からの脱却」という観点から、いかなる建築論を構築しうるか全体像を整理したので、平成26年度には本研究を完成させる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にあった「近代建築理論研究会」と「西洋建築史研究会」のうち、「近代建築理論研究会」は予定通り平成25年度の前半には完了した。現在はその成果を出版によって公開準備中である。一方の「西洋建築史研究会」については、あまり予定していた通りには進まず、平成25年度には方針を変更して「建築史の方法論研究会」という新たな研究会にシフトした。この新たな研究会によって得られたものはきわめて大きく、ウォーラーステインの「世界システム論」と建築史学の考え方を結びつける可能性を切り拓きつつある。 新たな視点による研究成果としては「時間のなかの建築」という観点から、歴史的建築を再評価するというものがあげられる。これは、これまでの建築史学が「竣工時点至上主義」とも呼ぶべき、竣工年を絶対的なクライテリアとする価値観によって構築されてきたことに対し、ほとんどの歴史的建築は時間の流れのなかで、さまざまに変化してきたことに着目するものである。具体的には「パリの市壁に関する研究」として、パリ第4大学(ソルボンヌ)にて開催された研究集会にて、その研究成果を発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は平成26年度が最終年度となる予定であり、つぎの1年はこれまでの研究成果を集大成する年となる。今後の推進方策のひとつ目としてあげられるのは、平成24年度よりすすめてきた「近代建築理論研究会」の研究成果としての翻訳刊行物の公刊である。平成26年度中には出版できるよう、現在、鋭意作業中である。 さらに「西洋建築史学の現代性」という本研究課題においてもっとも重要な観点として、現在「終わりゆく近代」論をまとめはじめているところである。これにより、過去の建築史学がいかなる同時代的な文脈のなかに位置付けられうるかを示すと同時に、2010年代現在の建築史学のあり得べき姿を示すことができるのではないかと考えている。 さらに、2010年代現在の建築史学における重要な視点のひとつとして「時間のなかの建築」をあげられることが、本研究によって明らかになりつつあるが、この視点から西洋建築史に携わる研究者を一堂に会してのシンポジウムを開催し、本研究課題のまとめ、さらに本研究課題の発展へとつなげていきたい。
|