2013 Fiscal Year Research-status Report
フィジー伝統木造建築・ブレにみる地域文化継承の成立要因とその持続可能性
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24560782
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 広英 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (70346097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤枝 絢子 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (60598390)
ニーフ アンドレアス 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (60618297)
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Keywords | フィジー / 伝統木造建築 / 発展的継承 / 地域資源 / 在来建築技術 / コミュニティ / 自然環境 |
Research Abstract |
研究実績の概要 【研究の目的】本調査研究は、ブレと呼ばれるフィジー共和国の伝統木造建築に着目し、将来社会における持続可能性を探るものである。現代の近代化・西洋化が浸透する社会コンテクストにおいて、いかに地域固有の文化が継承可能であるか、ブレを有する調査対象集落の事例によりその成立要因を探る。伝統木造建築の維持存続には、地域社会で保全される知的資源(建築技術)、人的資源(コミュニティ)、物的資源(建築材料)という3つが相互に連関した地域資源の活用の維持として理解できる。フィールド調査により、これら各資源の変容状況と各々の連環関係の強度を把握し評価する。得られた成果は、フィジー建築文化の貴重な資料になるだけでなく、今後の発展的継承に向けた具体的かつ実践的な方策に役立つものとなる。常襲的な台風災害を受け300島以上を有する島嶼国フィジーでは、早期の離島支援が困難なため自力復興が基本的に要請される。そのため、住宅復旧で現地資材を利用する伝統木造建築が見直されつつある。特に2010年のサイクロン・トーマスでは住宅被害が大きく、新建材により建設された多数の離島住居へ建材支給が遅れたという教訓があり、この点で伝統木造建築の現代的意義をもつ可能性がある。 【研究実績の概要】 本研究に関連する研究概論として伝統木造建築を成立させる3地域資源(知的資源、人的資源、自然資源)について、フィジー等の経験に基づき風土建築から学ぶ持続的人間環境に関する著述をまとめた。また、伝統木造建築の現代的意義として、台風災害からの迅速な復興手段、エコツーリズムに活用される地域資源の要素、という視点から考察し、前者に関連する国際会議論文2報(内1報は概要査読付)、著述1報、後者に関連する国内学会発表論文1報をまとめた。現在、平成25年度の調査をまとめて伝統木造建築の在来建築技術に関する論文に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の実施計画は、平成24年度のフィールド調査の継続であり、詳細調査をナバラ村とザウタタ村に選定し、知的資源、人的資源、自然資源の3地域資源の視点から集落の状況を把握することに努めた。伝統木造建築の現代的意義に関しては、CATD、防災局など関係者へのヒアリング、住宅の台風被害状況から、離島域の迅速な住宅復興手段として期待できることを確認した。また、エコツーリズムに活用される地域資源の要素となり得るかについては、上記2村の調査と関連する。ナバラ村では、前世代の村長の言い付けにより集落住居の大半が伝統木造建築を継承し、ビレッジツアーを含むエコツーリズムが行われてきたが小規模運営で収入面でのインパクトは小さい。また、近年の生活変容(貨幣獲得のための出稼ぎ労働)や森林資源の後退(資材確保と運搬の困難)によりコミュニティの労働負担が大きくなってきており、維持活動が徐々に難しくなってきていること確認した。ザウタタ村では、沿岸域の豊かな自然資源を背景に、CATDでの伝統木造建築再建で会得した建設技術を駆使し、若者達が村内に自力建設をおこない,維持継承のためにエコツーリズムに活用できるかを検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
【今後の推進方策】 今年度に実施したナバラ村、ザウタタ村でのフィールド調査において、基礎資料となる建物実測調査、建物配置調査、自然資源分布の概要調査をおこない、知的資源、人的資源、物的資源に関するヒアリング調査を実施し情報の蓄積に努めた。次年度は、これらの情報を集約できるような補足的なフィールド調査を実施する。また、今年度実施した2村のヒアリング調査から「現在までの達成度」で記したように、伝津木造建築の現代的意義に関して、両村ともエコツーリズムとの関係の中で検討していく。 【次年度の研究費の使用計画】 今年度フィールド調査の渡航滞在費を予定していた一部を繰り越したため、次年度研究費と合わせて同目的のフィールド調査費用として集中的に現地での情報収集を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に予定していた2回分の調査渡航について、現地関係者との調査スケジュールが合わなかったことから、平成26年度に繰り越すこととした。申請時当初の実施計画においても、平成25年度以降の計画として2年間継続的なフィールド調査を設定していることから、研究実施上問題ない。 平成25年度に繰り越した2回・人分のフィールド調査費用は、今年度ナバラ村、ザウタタ村で継続しているフィールド調査の渡航・滞在費に使用する。これにより伝統木造建築に資する知的資源、人的資源、物的資源の評価項目を各集落についてまとめ、また現代社会における持続可能性について特にエコツーリズムの視点から考察する。その後、平成26年度の実施計画に予定している再度の渡航・滞在により、補足的なフィールド調査、及び関係者とのワークショップを実施し研究成果の還元と意見交換をおこなう。
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Research Products
(5 results)