2012 Fiscal Year Research-status Report
中近世のイタリア都市における街路空間の変容に関する基礎的研究
Project/Area Number |
24560791
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
片山 伸也 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (80440072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤松 加寿江 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10532872)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 都市史 / 街路空間 / イタリア / シエナ / フィレンツェ / ローマ |
Research Abstract |
初年度である2012年度は、シエナ、フィレンツェ、ローマ3都市の街路空間の実地調査を行い、研究対象とする街路の候補選定を行うとともに文献資料の収集を行った。 シエナについては連続平面図データとの照合および国立公文書館での資料収集を行った。主軸道路であるバンキ・ディ・ソプラ通りおよびチッタ通りについて14世紀前半における通りの直線化の痕跡を検証するとともに、1319-20年の都市条例と対照して、直線化(recta corda)が見通しではなくファサード面の平滑化と壁面線の一致を意味することを確認した。パラッツォの街路に面した壁面に「ファサード」の概念が成立するこの時期に、壁面の工作物(木造の庇およびバルコニーなど)の撤去が主要街路において求められてきたことは、既に示した(片山2011および2005)。一方で、壁面線の一致についてはファサード概念の一つの現われとして工作物の撤去と同様に考えて良いのか、より高度な都市的概念なのかを考察する必要がある。 フィレンツェについては、14世紀以降の都市形成に関する文献資料を収集するとともに、次年度以降の調査対象街路の検討を行った。調査対象は、中世後期の商業中心地であるとともにルネサンス期のパラッツォの建設が見られたカルツァイウオーリ通り、カッライア橋に近いルンガルノ通り、マッジョ通り、ボルゴ・サンタ・クローチェ通りに加えて、19世紀の都市近代化にともなって失われた商業中心地であるスペツィアーリ通り、カリマーラ通り、カルディナーリ通りも図像史料による検証対象の候補とした。 ローマについては、教皇による都市改造の1事例としてジュリア通りの一次調査を行った。コルソ通り(ラータ通り)および2本の東西軸を成すペレグリノルム通りとパパリス通りを今後の調査対象とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、年度ごとに対象として設定した都市の実地調査を行う予定であったが、3都市を並行して進めることになった。先行して研究が進捗しているシエナについては、中世後期における街路空間の整備の実態から、平面的にも断面的にも三次元的なコムーネ成立期の街路空間から平滑なファサードが連続した二次元的な街路空間へと移行するプロト・ルネサンス的な街路空間の出現を明らか実証的に示すことができた。フィレンツェとローマについては、街路空間の整備に関わる都市条例の収集と調査対象となる街路の特定を行った。 当初、2012年度に調査を行い2013年度にルネサンス期の街路空間の特性について成果をまとめる予定であったフィレンツェの街路空間については、やや遅れているが、2013年度に行う予定であったローマの街路空間の予備調査を先行して行うことができたため、トータルとしての進捗状況はほぼ予定通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(2013年度)は、文献資料の収集とGISデータの収集を8月を目処に行った上で、9月の前半に2週間程度の現地調査を予定している。 シエナについては、壁面線の一致による街路の直線化事例を更に精査し、都市図にプロットすることで、都市内のどの部分で街路空間の中世的整備が進行していたのかを検証する。さらにGISを用いた地勢との対照を行い、街路空間の直線化手法のバリエーションの分析を行う。 フィレンツェとローマについては、実地調査と絵画資料によるルネサンス期及びバロック期の街路空間の仮説的復元を行い、形態的・地勢的比較を行うためのデータ収集を行う。また、ルネサンス以降の都市論の記述を年代ごとに比較し、街路空間整備に関する思想的背景の分析を行う。フィレンツェについてはマッジョ通りとカルツァイウオーリ通りを中心に4日間程度の実測図の収集及び実地調査を予定している。ローマについては、ジュリア通りに加えてペッレグリーノ通り及びパパリス通りを対象として絞りつつ古図・実測資料の収集を行う。 現地調査後には、シエナ、フィレンツェ、ローマそれぞれについてGISデータに年代ごとのパラッツォの分布をプロットするとともに、史料から歴史的な街路空間の構成要素を抽出しプロット行う。また、当時の街路空間整備に関する都市条例等史料の解読を並行して行い、成果の一部を建築学会等に発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度予算については、主として現地調査のための海外出張旅費が多くを占め、文献資料収集にも支出を見込んでいる。 2012年度からの繰越分については、実測資料の作成など調査協力者への謝礼等の支出を予定している。
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