2013 Fiscal Year Research-status Report
中近世のイタリア都市における街路空間の変容に関する基礎的研究
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24560791
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
片山 伸也 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (80440072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤松 加寿江 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (10532872)
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Keywords | イタリア / ローマ / フィレンツェ / シエナ / ルネサンス / 都市史 / 街路空間 / ファサード |
Research Abstract |
平成25年8月31日から9月9日までの10日間にわたり、ローマとフィレンツェを中心とした実地調査ならびに文献調査を行った。ローマについては1500年代に教皇ユリウス2世によって開通されたジュリア通りについて、沿道の全パラッツォに対するファサード調査を行い、ファサードの構成に関するデータを収集した。フィレンツェについては、15・16世紀に建設(改修を含む)されたパラッツォを文献からリストアップし、それらのパラッツォのファサードの構成について実地調査を行った。さらに、ルネサンス期の都市計画にみられる直線道路の比較対象として、フィレンツェの中世後期植民都市であるサン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノおよびカステル・フランコ・ディ・ソプラと、北イタリアのルネサンス計画都市であるパルマ・ノーヴァおよび中世植民都市カステルフランコ・ヴェネトの視察を行った。実施調査では、ローマ大学建築学部エルマンノ・ポッラ教授監修の「ローマ中心部」実測図面集を入手した他、ルネサンス期の都市計画に関する文献収集を行った。 帰国後、フィレンツェについてはパラッツォのファサードの構成に基づく類型化を行い、先行研究で指摘されている一層目に限定してみられる粗面仕上げと店舗を入れるための掃き出し開口に着目して分布と入市式の行程の関係に関する考察を行った。また、ローマについては、ジュリア通りの実測平面図を元に、直線道路の敷設と都市組織の変化についての考察を行った。これらの研究成果については、片山が平成25年12月15日の都市史学会大会において発表を行った。 また、平成26年3月23日から30日まで、再度ローマとフィレンツェの実地調査を行い、ローマ大学建築学部図書館における文献収集と市街地測量図、歴史的地籍台帳、航空写真などの資料収集の他、フィレンツェにおけるパラッツォの補足調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中世都市としてのシエナについては、概ね街路空間の実地調査および関連する都市条例等の文献資料の収集を終えることができた。ルネサンス都市としてのフィレンツェについては、研究対象とした15・16世紀の主要パラッツォについてのファサード調査を一応終え、その類型化を行うことができた。関連する文献資料からの社会背景およびファサードのデザインに表象する有力商人らの嗜好ならびに意味についての考察を行っており、ルネサンス期フィレンツェにおける商業中心地区と政治的意図の表出する街路空間の関係についてある程度明らかにすることができた。ローマについては、ルネサンス期とバロック期に分けて検討する必要があるが、ルネサンス期の都市空間の分析対象としてジュリア通りを設定し、ファサード構成のデータベースの作成ならびに当該地域の図面資料の収集を終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主としてローマについて、バロック期の都市改変について分析対象とする街路空間を選定し、昨年度にジュリア通りに行ったのと同様のファサード構成の類型化ならびに実測平面図を用いた分析を行う予定である。バロックの都市空間の比較対象として、シチリア王国支配下のシラクーサについても視察する。 本研究課題の最終年度でもあるため、これまでの研究の成果をまとめ、イタリア都市の街路空間における中世・ルネサンス・バロックの特徴を実証的に比較考察する報告書をまとめると共に、その成果を建築学会、都市史学会等に公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は実地調査を行った際に入手した資料の分析等での人件費を見込んでいたが、図面データ等の整理に留まり、相当量の作業が翌年度に持ち越しになったことが繰越金が生じた主たる理由である。26年度の調査旅費分を前倒し請求したが、年度末が迫っていたこともあり、高額資料の購入を翌年度に持ち越したことも要因になっている。 平成26年度については、繰り越し分の約485,000円に今年度交付分の600,000円を加えた1,085,000円について、これまでの成果を元にしたデータベースの作成作業に対する人件費に約200,000円、夏に実施予定の最終実地調査(調査補助の院生分を含む)約600,000円、データベース作成ならびに報告書作成に伴う消耗品費として約150,000円、報告書印刷費として約150,000円の支出を見込んでいる。
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Research Products
(3 results)