2014 Fiscal Year Research-status Report
日本統治期朝鮮半島における社会事業関連施設の空間形態と社会的応答
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24560793
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
砂本 文彦 広島国際大学, 工学部, 准教授 (70299379)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 朝鮮 / 社会事業 / 日本統治期 / 公設洗濯場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、植民地期朝鮮半島において社会事業関連施設の一環として整備された公設洗濯場に関する研究を実施した。 植民地で行われた社会事業に対する評価は難しく、被支配層を救済層として措定した上に、植民地行政府や啓蒙的な宗教団体が事業主体だったため、これを「植民地近代化」の功績だと讃えるものから、被支配者層への懐柔策、時に戦時動員の一様態だったとするものまである。植民地期の朝鮮半島は武断統治期、文化政治期、満州事変以降、戦時動員下と多様な政治的様相を形成してきたが、一時期に特有な事象を植民地期全体を表象する社会的記憶として固着しようとする指摘も少なくない。本研究ではこうした現状を鑑みて、韓国での文献調査、現地調査を実施するとともに、東京の国会図書館、国立公文書館にて文献調査を重ねた。調査結果を整理、論文として執筆し、査読論文誌である日本建築学会計画系論文集に投稿を行った。その査読過程において指摘された修正事項に関する補足調査を実施した。結論としては次を得ている。 朝鮮半島で実施された公設洗濯場施設計画の把握には、洗濯環境の衛生化や白衣の洗濯に対する課題認識、そして朝鮮人女性の家事労働軽減の視点は欠かせないことが社会背景の分析から明らかになった。また、女性の時間創出を目指す点で公設洗濯場整備と白衣の色服着用奨励運動は通底していて、1930年代前半を境にこれらの対応が大きくわかれていた。そして公設洗濯場の整備は主に1920年代において即効性ある施設整備策として期待されていて、本研究では48カ所の公設洗濯場をあげることができた。設計要件としては衛生的な上排水分離をなしつつも、水位と水量の安定化を図って利便性を向上させ、時に個人毎に洗濯水槽を構えるなどした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
査読論文投稿後の審査、ならびに修正(補足調査を含む)に時間を要し、論文掲載が2015年度にずれこむこととなったため、やや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
日本建築学会計画系論文集2015年4月号に本研究の成果の一端が掲載される予定であり、繰り越した予算の半額弱を充当する。また、本研究の成果を最終的に検証、ならびに社会還元への応用を検討するための調査・打ち合わせを予定している。
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Causes of Carryover |
研究成果を著した査読論文の掲載が2015年4月となり、その請求が2015年度付けとなるため。また、成果の社会還元にかかる調査と打ち合わせを実施するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
日本建築学会計画系論文集の掲載料として9万5千円、16万5千円を成果の社会還元にかかる調査と打ち合わせに充当する。
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