2013 Fiscal Year Research-status Report
異元素ドープ二酸化チタン単結晶を用いた紫外光誘起キャリアの永続化とその挙動
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24560800
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
関谷 隆夫 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (60211322)
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Keywords | 光物性 / 二酸化チタン / ドーピング / 光誘起永続物性 |
Research Abstract |
異原子価元素であるアルミニウムやニオブを様々な濃度でドープしたアナターゼ型二酸化チタンの単結晶を化学輸送法により育成した。アルミニウムドープアナターゼ単結晶については、アルミニウムの添加量を変えた原料粉末を用いることで、単結晶中のアルミニウムドープ量が変化することを期待した。光照射ESR スペクトルを測定したところ、紫外光誘起ESRシグナルの角度依存性、液体ヘリウム温度~室温での光照射下での温度依存性、暗所での光誘起ESRシグナルの温度依存性について、これまでと同様の結果が得られた。単結晶重量とESRシグナル強度に付いて検討し、アルミニウムの添加量の増加に伴いシグナル強度の増加が認められたが、正比例関係ではないので精密な測定が求められることが判った。また、原料粉末へのアルミニウム添加量と単結晶中のドープ量が比例関係になっていないことも考慮し、XPSによりアルミニウム量の定量を試みた。育成した単結晶からはすべてアルミニウムの信号が得られたが、XPS装置に付属の感度係数を用いると、極端にアルミニウムが多い結果となったため、新たに原料粉末(アルミニウムドープルチル多結晶粉末)により校正を行い、組成を定量化する必要があることが判った。ニオブをドープした単結晶については、育成した直後の単結晶では、ニオブのドープ量が多くなるほど伝導度の大きさが大きくなることが判ったが、酸素欠陥の影響を受けていると思われる。アニオンである窒素のドープについては、TiNを加えた育成原料を用いた化学輸送法を試み、単結晶育成に一回だけ成功しているが、得られた単結晶中の窒素含有量の確認が必要である。温度勾配や、窒素の導入方法などを引き続き検討し、育成条件の最適化を図りたい。育成した単結晶にアンモニア気流中での熱処理を施すことで、単結晶中の窒素量を増やす取り組みについても、引き続いて行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進行状況を左右すると思っていたドープしたアナターゼ型二酸化チタンの単結晶の確保に関しては、24年度に目処が付いていたため、25年度になり本格的に物性測定に重心を移した。アルミニウムドープ単結晶については、様々な添加量の原料から育成した単結晶について、光誘起ESRの測定を行い、光誘起キャリアの熱的性質についての組成依存性、および、アルミニウムのドープ量や照射する光強度とESRシグナルの強度の測定を行うことができた。この結果が予想に反して、組成に対して比例関係を示していないので、アルミニウムドープ量を測定する必要が生じた。組成の分析は本学所有のXPSを利用して行っているが、装置の感度係数では正しく評価できないことが判ったので、26年度に測定を行う。マシンタイムがかなり逼迫しており、予定通り実験を進めるためには効率的な実験が求められることに留意する。ニオブドープ単結晶については、電気伝導に関しては予定通り進行しているが、ESR信号が観測できない等、以前の結果とは異なる結果も得ているので、熱処理などを組み合わせ、新たな測定を計画する必要を感じている。窒素ドープ単結晶については、アンモニア気流中での熱処理によりドープ量を増やすことには成功したと考えているが、2.9eVの光吸収帯の強度もドープ量と比例関係にあるとは断言できないので、ドープ量の評価方法を検討する必要に迫られている。24、25年度ともに液体ヘリウムの供給状況が悪く、効率的に低温での測定が行えなかった点では少し研究が遅れた感じは否めないが、明らかな研究の遅れとは捉えていない。研究成果のアドバンテージの大きなアルミニウムやニオブドープ単結晶を中心に研究を進め、成果につなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね当初の計画に沿って研究を進める方針である。ドープ、非ドープ単結晶試料の育成については、ルチル型固溶体粉末を原料とする化学輸送法にて、継続して行う。アルミニウムドープアナターゼ型二酸化チタン単結晶では、アルミニウムのドープ量の評価を中心に測定を行い、ESRシグナル強度とドープ量の関係を明らかにしたい。また、光誘起永続的キャリアの緩和については、熱的刺激による発光緩和についての実験を行ってきたが、光学的刺激による緩和についての実験を行う予定である。さらに、アルミニウムドープ単結晶では、光誘起キャリアが永続化する現象が観測されているので、同じ3価となる不純物イオンをドープした単結晶での実験も興味深い。スカンジウムやガリウムなどの3価となる陽イオンをドープした単結晶育成を試み、単結晶が得られれば、紫外光照射ESR測定などに供したい。これまでにニオブドープ単結晶では育成直後に、窒素ドープ単結晶では、アンモニア気流中での非ドープ単結晶試料の熱処理による窒素ドープの際に酸素欠陥が導入されているという実験結果を得ているので、それぞれドープした元素によるキャリアの挙動を酸素欠陥生後と光吸収、ESRや電気伝導、ホール効果などの測定により明らかにする必要がある。その上で、紫外光照射下での同様の測定を行うことで紫外誘起キャリアの挙動を明らかにできると考えられる。窒素ドープアナターゼ型二酸化チタン単結晶では、ドープ量の飛躍的向上が望まれており、育成方法の見直しや新たなドープ方法を模索する必要があると感じている。なお、結晶育成ならびに各種の測定実験には、横浜国大大学院工学府の学生を研究協力者として参加・協力してもらう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の99%以上を利用することで概ね予定通りの研究を進行できた。今回生じた次年度使用額は少額の端数であり、他の必要な物品等を購入できる金額ではないため、次年度に繰り越すこととした。 今回生じた次年度使用額は少額であり、今年度予算と合わせ、研究の遂行に必要な物品等を購入することで適正に利用したいと考えている。
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