2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560805
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小野 興太郎 島根大学, その他部局等, 名誉教授 (40106795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒河 一渡 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30294367)
宮本 光貴 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (80379693)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 重水素 / 照射損傷 / Fe、Fe合金 / 電子顕微鏡 / 熱離脱特性 |
Research Abstract |
格子間原子集合体の一次元運動に及ぼす重水素の効果を実験的に抽出するために、純FeおよびFe-9Cr-2Wフェライト鋼に5-10keVの重水素イオン,ヘリウムイオン、1MeVの電子線をそれぞれ電子顕微鏡内で照射し、その後昇温した。昇温に伴う格子間原子集合体の一次元運動を電子顕微鏡で観察するとともにビデオに録画し画像変化を時間の関数として解析した。また、同様に照射した試料からの重水素やヘリウムの熱離脱特性を測定した。 Fe-9Cr-2W鋼では、Heや電子線の照射によって形成された転位ループが、750-850Kの高温まで安定であるのに対して、重水素照射によって形成された転位ループは、400-500Kの比較的低温で可也消滅するという結果が得られた。またこの温度範囲で、重水素の熱放出ピークが観察された。放出ピークの昇温速度依存性から、放出のエネルギーを求めると0.63eVという値が得られた。重水素バブルは微細で、バブルからの放出量は観測された放出量の数%以内と見積もられ、得られた活性化エネルギーは重水素が転位ループから離脱するのに要する活性化エネルギーである可能性が高いと考えている。ヘリウム照射では、バブルによる転位のピン止め効果、電子線照射では不純物の偏析効果により転位ループの移動度が抑制されると考えられる。一方、重水素は転位に偏析し、不純物の偏析を抑制している可能性が考えられるが、転移ループのバーガースベクトルやその温度依存の測定を行う必要があり、これらの結果をふまえて一次元運動の詳細をさらに検討することにより、重水素の効果を明らかにしたい。 純Feについても、上記と同様な実験を行った。重水素照射した純Feでは、320K付近からでも転位ループの移動が観察された。移動の拡散係数のループサイズ依存性、バーガースベクトル依存性など詳細について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Fe-9Cr-2W鋼について、電子線、重水素イオン、ヘリウムイオン照射によって形成された転位ループの熱的安定性を比較し、重水素照射では、他の場合と比較して転位ループが比較的低温で消滅するという結果が得られた。又、この温度範囲で、重水素の熱放出ピークが得られ、離脱に要する活性化エネルギーも求められた。これらの成果は当初目指した目標を達成するものである。純鉄についても同様な照射を行い、格子間原子集合体の一次元運動の拡散係数も一部評価したが、当初予定していなかったループのバーガースベクトルとの関係を明らかにする必要性を認識し努力した。しかし微小な転位ループのバーガースベクトルの判定は可也困難であったので、照射温度を調節して、ループサイズを制御した上で、バーガースベクトルと拡散係数の関係をふまえて重水素の効果を抽出する研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
、高純度Feについて、電子線、重水素イオン、ヘリウムイオンの各照射を行い、形成された格子間原子型転位ループの一次元運動を比較することにより、重水素の一次元運動に及ぼす効果を抽出する。ループのバーガースベクトルと移動度の関係にも着目する。移動度のサイズ依存性を求めるために、照射温度を調節する。また、同様に照射した試料からのガスの熱離脱特性を測定する。 前年度に行ったFe-9Cr-2Wについて、より詳細なデーターを取得する。 核融合ダイバーター候補材であるWについて、同様な実験を行い、BCC金属中での格子間原子型集合体の一次元運動に及ぼす重水素の効果について統一的理解を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イオン照射や電子顕微鏡使用に伴う消耗品、試料及びその加工に必要な消耗品代を必要とする。 前年度は、大阪大学超高圧電子顕微鏡センターでの電子線照射実験を十分に行う日程が確保できなかったので、今年度は精力的に大阪大学での出張実験を行うために実験旅費および機器使用経費、試料作成・保存等に必要な消耗品費が必要である。 研究成果を発表するための旅費を必要としている。
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