2013 Fiscal Year Research-status Report
シリコンおよび窒素を添加した新規ダイヤモンドライクカーボンの機能発現機構の解明
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24560812
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中澤 日出樹 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90344613)
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Keywords | カーボン材料 |
Research Abstract |
本研究では、従来のダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜に比べて機械的特性、熱的安定性などが飛躍的に向上するシリコン(Si)および窒素(N)を同時に添加したDLC膜(Si-N-DLC膜)の研究開発を行う。また、膜特性と組成・化学結合状態・構造との相関関係を詳細に調べることで、新規DLCのもつ機能を最大限に発現させるための基礎的知見を得ることを目的とする。 本研究は、プラズマ化学気相成長(CVD)法およびレーザーアブレーション法によりSi-N-DLC膜を作製し膜特性を評価する。レーザーアブレーション法は、所望とする化学結合状態・組成のSi-N-DLC膜の作製が可能である。また、実用的な高周波プラズマCVD法による薄膜作製と特性評価を行う。作製条件を変化させて化学結合状態・組成を変化させ膜特性を評価すると共に、耐熱性試験を行い熱的安定性を向上させるための指針を得る。 Si源にジメチルシラン(DMS)およびN源に窒素ガスを用いたプラズマCVD法により作製条件を変化させたSi-N-DLC(Si-N-DLC(DMS+N2))膜を評価し、SiおよびN源としてヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用いたプラズマCVD法によるSi-N-DLC(Si-N-DLC(HMDS))膜との比較を行った結果、以下のことが明らかになった。SiおよびN含有量がほぼ等しいSi-N-DLC膜を比較した結果、Si-N-DLC(HMDS)の方がSi-N結合を多く含んでおり、膜構造が秩序化されることがわかった。Si-N-DLC膜の内部応力は、無添加DLCやSi添加DLC(Si-DLC)に比べて小さく、密着性が改善されることがわかった。また、Si-N-DLC(DMS+N2)の摩擦係数はSi-DLCおよびSi-N-DLC(HMDS)と同程度かより低い値を示すと共に、比摩耗量は無添加DLCと同程度の低い値を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体構想は、Si-N-DLCを作製し、諸特性と組成・化学結合状態・構造との相関関係を明らかにすることで、Si-N-DLCの更なる高性能化を実現することである。本研究では、Si-N-DLCの機械的特性、摩擦摩耗特性およびこれらの熱的安定性を調べ、諸特性が飛躍的に向上するための作製条件、組成・化学結合状態・構造を詳細に明らかにすることを具体的な目的とする。プラズマCVD法によるSi-N-DLC膜に関しては、同法で作製したDLC、Si添加DLC(Si-DLC)およびN添加DLC(N-DLC)膜との膜特性の比較を行うことを研究内容としている。構造パラメータであるC原子のsp3とsp2の割合およびC、Si、N間での化学結合(C-Si、C-N、Si-N)の割合を変化させるために、原料ガスなどの作製条件の検討を行い、さらにSi-N-DLCの耐熱性を評価する。Si-N-DLC膜の構造・化学結合状態の評価に関しては、ラマン分光法や赤外吸収分光法等を用いて評価を進めているが、構造・化学結合状態と膜特性との関連性に関して更に膜特性評価を進める必要がある。一方、DLC膜へのSi添加は内部応力の低減(付着力の向上)および500 ℃程度の耐熱性を持つことが知られている。本研究において、Si源にDMSおよびN源に窒素ガスを用いたプラズマCVD法によるSi-N-DLCは、SiおよびN源にHMDSを用いた同法によるSi-N-DLCと比べて、内部応力が更に低減し、摩擦摩耗特性が優れることがわかった。また、適切な作製条件で作製したSi-N-DLC膜は600 ℃までの大気中熱処理に対しても優れた摩擦摩耗特性を維持することを見出している。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、2種類の薄膜堆積法によりSi-N-DLC膜を作製し、膜特性を評価する。レーザーアブレーション法を用いてSi-N-DLC膜を網羅的に作製し、化学結合状態・組成と機械的・摩擦摩耗特性との関連性を明らかにし、膜特性を向上させるための基礎的な知見を得る。また、実用的なプラズマCVD法による薄膜作製と特性評価を行う。作製条件や原料ガスを変化させて化学結合状態・組成を変え膜特性を評価すると共に、耐熱性試験を行い熱的安定性を向上させるための指針を得る。 レーザーアブレーション法を用いてSi-N-DLC膜を作製し、同法で作製したDLC、Si-DLCおよびN-DLC膜との膜特性の比較を行う。レーザーアブレーション法は、sp3とsp2の割合、他元素の添加量、水素の含有量を比較的容易に制御できるため、これら構造パラメータと膜特性との関連性を明らかにするための有力な手段である。プラズマCVDプロセスを最適化するための指針を得ることを目的として、レーザーアブレーション法によるSi-N-DLC膜の化学結合状態や膜機能に関する基礎的な知見を得る。また、成膜中に水素ガスを導入し水素化Si-N-DLC膜を作製し水素の効果を調べる。成膜時における水素の役割や膜中の未結合手の水素終端効果について調べる。また前年度から継続してプラズマCVD法を用いてSi-N-DLC膜を作製し、同法で作製したDLC、Si-DLCおよびN-DLC膜との膜特性の比較を行う。レーザーアブレーション法により得られた結果は、プラズマCVD法によるSi-N-DLCの膜特性を更に向上させるための基礎データとして活用する。構造パラメータであるC原子のsp3とsp2の割合およびC、Si、N間での化学結合の割合を変化させるために、作製条件や原料ガスの検討を行い、さらにSi-N-DLCの耐熱性を評価する。
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