2012 Fiscal Year Research-status Report
Liを使用しない高速pH応答型のセルフクリーニングガラスの開発
Project/Area Number |
24560823
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
橋本 忠範 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10271016)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那須 弘行 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20189179)
石原 篤 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60212908)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | pH応答ガラス / セルフクリーニングガラス / 元素戦略 / リチウムフリー / チタノリン酸塩ガラス / 光誘起親水性 / 鉄ビスマスホウ酸塩ガラス / 撥水性 |
Research Abstract |
Ti3+を含むTiO2-P2O5(TP)ガラスは電気伝導性ガラスとして古くから知られている。我々は、これまでにTi3+を含まないTPガラスの作製とこれらのガラスの高屈折率エコガラスならびにセルフクリーニングガラスへの応用に関して報告してきた。さらにTPガラスを600℃程度で熱処理するとTiO2リッチな表面層が形成されセルフクリーニング機能(光触媒活性と光誘起親水性)が発現することもわかっている。その一方、熱処理時にTi3+が減少し比抵抗が高くなりpH電極としての機能が失われた。 平成24年度は、1. より多くのTi3+を含有させるために70TPガラスを高温溶融で作製すること、2. この70TPガラスを酸化-還元の熱処理をすることで、pH応答性能とセルフクリーニング機能の両立可能なTi3+を含むTPガラスの開発を目指し以下の結果を得た。 1. 高温溶融によりTi3+を多く含有させた70TPガラスは良好なpH感度(約80%)・短いpH応答時間(約10秒)・低い比抵抗(約10e9オームセンチメートル)を持った。市販のpH応答ガラスにはリチウムシリケートガラスが広く用いられているが、Ti3+を含む70TPガラスは、リチウムフリーのノンシリケートガラスとしては良好なpH応答性能を示すことがわかった。2. 酸化処理した70TPガラスは、光誘起親水性が表れたが、高抵抗化が起こりpH応答を示さなくなった。3. 還元処理した70TPガラスは、光誘起親水性(光触媒活性)を維持しつつ、再び低抵抗化が起こりpH応答を示すようになった。4. 70TPガラスの熱処理に対する、ガラス全体で機能するpH応答性能(Ti3+-Ti4+間の平衡)の可逆性とガラス表面のみで機能するセルフクリーニング機能の(70TPから80TPへの表面組成の変化)不可逆性を利用することで、両機能を両立したガラスの開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は大きく分けて以下の2つを目標とした。 1. より多くのTi3+を含有させた70TPガラスの高温溶融作製 1300℃溶融を1500℃溶融にすることで従来の約2倍のTi3+含有量にでき、結果として比抵抗を約1桁下げることに成功した。(達成度100%) 2. 70TPガラスの酸化-還元熱処理によるpH応答性能とセルフクリーニング機能の両立可能なTi3+を含むTPガラスの開発 酸化することでセルフクリーニング化し、その後還元することでpH応答化するという二段階処理によりpH応答性能とセルフクリーニング機能の両立可能なTi3+を含むTPガラスの作製に成功した。pH感度は約80%であり、良好な値を示した。さらなるTi3+量の増大によりpH感度の上昇が期待できた。しかし材料としての限界値かもしれないので、次年度は、一旦Fe2O3-Bi2O3-B2O3ガラスを評価し、TPガラスでのさらなる探索が必要かを見極める。(達成度90%)
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に自己洗浄タイプのセルフクリーニング機能を有するpH応答ガラス(TPガラス)の開発に成功したので、平成25年度は防汚タイプのセルフクリーニング機能を有するpH応答ガラス(Fe2O3-Bi2O3-B2O3ガラス)の開発に着する。これまでにBi2O3-B2O3ガラスは、ガラスとしてはかなり撥水性を持つことを報告している(J.Am.Ceram.Soc., 2011)。このガラス自身は伝導性を持たないのでFe2O3などの遷移金属酸化物を導入して伝導性を確保できれば、被験液の汚れによるpH感度の低下が避けられると期待できる。平成26年度はTPガラスとFeBiBガラスの結果を踏まえて目標に近いガラスの開発をしつつ、プロトタイプを作製し実証実験を行う。 平成24年度の計画は予定通りに行うことができたが、順調に実験が進んだために予定していたほど消耗品を購入せずに済み、物品費等で約13万円の残額がでた。平成25年度に研究棟の改修が行われ8月から翌年3月まで全く実験ができなくなる可能性があるので、研究計画が遅れることを考慮に入れ当初予算を半分(30万円)に減らした。従って、平成25年度は43万円の予算で研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は防汚タイプのセルフクリーニング機能を有するpH応答ガラス(Fe2O3-Bi2O3-B2O3ガラス)の開発を行うために以下の実験を行う。 1. FeBiBガラスの作製(担当:那須・橋本)雰囲気炉を用いて空気雰囲気あるいは窒素雰囲気での溶融(900-1200℃)を行う。試薬(酸化鉄・酸化ビスマス・酸化ホウ素)・アルミナ坩堝・マッフルを消耗品費で申請した。pH応答試験用に自動研磨機を用いて両面光学研磨を行う。研磨剤・研磨布を消耗品費で申請した。 2. pH応答性能・比抵抗の評価(担当:橋本)平成24年度と同様に行う。また、平成24年度に購入した紫外可視分光光度計で光透過性と比抵抗の相関を調べる。 3. FeBiBガラスの撥水特性の評価(担当:石原・橋本)水に対する接触角を測定する。目標値は接触角90°以上である。 最新の研究動向を調べるための情報収集や成果報告のための学会発表を旅費の細目で計上し、学会参加費をその他の細目で計上した。
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Research Products
(6 results)