2012 Fiscal Year Research-status Report
省エネプロセスを用いた低コストなセラミック系可視光応答型水素センサの創製
Project/Area Number |
24560831
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
濱上 寿一 久留米工業高等専門学校, 材料工学科, 准教授 (30285100)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | チタニア多孔質薄膜 / パラジウム金属触媒 / 省エネプロセス / 室温作動型水素センサ / 可視光応答型水素センサ / オプティカル水素センサ |
Research Abstract |
安全・安心な水素エネルギー経済社会の実現を目指した低コストな革新的水素センサの開発を目的とし、多孔質酸化チタン(以下、チタニア)薄膜を作製し、その細孔内にパラジウム金属触媒を担持したコンポジット膜の作製と評価について検討した。材料の作製プロセスには、環境低負荷型な省エネプロセスを採用した。具体的には、チタニアの薄膜形成技術としてゾル-ゲル法と温水処理法を、またパラジウム金属触媒の担持法として紫外線照射を利用した光化学析出法を用いた。プロセスパラメータを検討した結果、90℃以下の温度で無色透明な多孔質チタニア薄膜をガラス板またはプラスティック樹脂上に形成し、室温・紫外線照射にて細孔内に数十ナノメートルのパラジウム金属ナノ粒子を充填させるプロセス技術の開発に成功した。 省エネプロセスを用いて作製したパラジウム金属触媒担持多孔質チタニア薄膜の光学特性が水素ガスに晒されることで変化することを実験的に実証した。水素による光学特性の変化は室温でも生じることから室温作動型の水素センサとしての応用が期待される。さらに、光学特性の変化は可視光領域(波長400 nmから800 nm)でも生じるため可視光を利用した水素検知が可能となる。これは、爆発性を有する無色・無臭な水素ガスを、この材料を通して可視化する技術を提供するものである。加えて、チタニアは元素戦略的視点からもメリットがある。既存の実用化されている水素センサが電気的に、しかも加熱された状態で使用されていることから、本研究における室温作動、可視光応答型のオプティカル水素センサの要素技術の開発は次世代の水素エネルギー社会の安全性に大きく資するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究プロジェクトの初年度であることから、パラジウム金属触媒担持チタニアセラミック多孔質薄膜材料を創製するためのプロセス技術の確立と水素センサ特性を評価するための測定系の構築を目標とし、研究を推進してきた。その結果、室温でのゾル-ゲルコーティング法と90℃以下の温水処理を用いて無色透明なチタニア多孔質薄膜の形成に成功した。金属触媒の担持法としてチタニアの紫外線照射による光触媒能を活用した光化学析出法を用いてパラジウム金属をチタニア薄膜の細孔内に担持するプロセス技術を確立した。作製した試料の水素検知評価は、自作の気密セル中に試料を固定し、空気と水素雰囲気ガスを交互に導入した際の光透過率と光反射率の経時変化をモニタリングすることで行った。 今年度のプロジェクトでは、環境低負荷型な省エネプロセスを用いてパラジウム金属触媒担持チタニアセラミック多孔質薄膜を創製するプロセス技術を確立するとともに、作製した試料が可視光の波長領域において水素応答性を室温で示すことを実験的に実証できたことから、達成度は(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究プロジェクトの2年目となる平成25年度は申請者の所属が久留米高専から関東学院大学へ異動した。本プロジェクトを円滑に推進するために、まずは新たな研究環境における研究室の整備を迅速に推進する。具体的には、水素センサ試料を作製するための試薬・器具・機器などの整備に加え、水素検知特性を評価するための測定系の構築を早急に実施したい。水素検知の測定系においては、申請者の所属の変更があったため平成24年度に購入予定であった備品を平成25年度に納品するよう変更している。新たな研究環境で、これまでの研究で得られた水素検知特性と遜色のない性能を示すセンサ材料が作製できるように研究を推進していく。さらに、材料のプロセスパラメータを検討することでナノ領域における構造が高度に制御された金属/セラミックコンポジット薄膜を創製し、室温における水素センサ特性の性能向上を図ることを目標とする。また、水素に対する金属触媒として貴金属である高価なパラジウムを使用しているため、より低コストな材料で代替できないかということも併せて検討していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者の異動に伴い、平成24年度に申請させていただいた予算の一部を平成25年度へ計上し、当該研究プロジェクトを推進する。 設備備品費として、平成24年度に計上していたマルチチャネル分光器と表示器付マスフローコントローラを平成25年度の予算として計上する。
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Research Products
(10 results)