2013 Fiscal Year Research-status Report
グラフェンナノシート高濃度分散液の創製と電子デバイスへの応用のための基盤研究
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24560836
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
坪川 紀夫 新潟大学, 自然科学系, フェロー (20018675)
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Keywords | グラフェン / グラフト反応 / マクロアゾ開始剤 / フェントン試薬 / 官能基導入 / 分散性 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続きグラフェンの有機溶媒中や水中への分散性向上を目的に、グラフェンへのポリマーのグラフト化について検討し、以下の研究成果が得られた。なお、本研究で使用したグラフェンはハマーズ法により合成した、酸化グラフェンを使用した。 1.グラフェンは強力なラジカル捕捉性を有することを昨年度明らかにしたので、主鎖中にアゾ基を持つポリジメチルシロキサン(PDMS)(PDMSマクロアゾ開始剤)の熱分解で生成するPDMSラジカルをグラフェンで捕捉することによるグラフト化を試みた。その結果、PDMSマクロアゾ開始剤とグラフェンを60℃以上の温度で反応させると、グラフェンへPDMSがグラフトすることを明らかにした。グラフェンへのPDMSのグラフト化は、FT-IR、熱分解GC-MS、およびXRDにより確認できた。したがって、この様な結果は、PDMSマクロアゾ開始剤の熱分解で生成したPDMSラジカルが、グラフェンで捕捉されることを示唆している。 2.フェントン試薬(H2O2/Fe2+)で処理することによる、グラフェンへの水酸基の導入について検討した。その結果、H2O2とFe2+との反応で生成したOHラジカルが、グラフェン表面で捕捉され、OH基が導入できることが分かった。COOH基が優先的に導入される硝酸酸化とは異なり、フェントン試薬処理ではグラフェンへOH基を優先的に導入できるという特徴があることが分かった。 3.PEGグラフトグラフェン、PDMSグラフトグラフェン、及びOH基導入グラフェンの分散性について検討した。その結果、PEGグラフトグラフェンとOH基導入グラフェンは水中へ極めて安定に分散することが分かった。これに対して、PDMSグラフトグラフェンは疎水性を示し、疎水溶媒に分散することが明らかとなった。この結果から、グラフェンへグラフトするポリマーや、官能基により、グラフェンの分散性が制御できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の24年度研究計画では、ラジカル捕捉法によるグラフェンのイオン性官能基の導入について検討する予定であった。しかしながら、ラジカル捕捉性を利用した疎水性ポリマーのグラフト化も、今後の用途展開に関連して、重要であることから、PDMSのグラフト化についても検討した。また、イオン性官能基の導入に先立ち、HO基の導入についても検討しておく必要が分かったので、その検討も行った。 本年度研究成果にも記したように、本年度において、(1)ポリジメチルシロキサン(PDMS)のマクロアゾ開始剤の熱分解で生成したPDMSラジカルを、グラフェンで捕捉されることにより、グラフェンへ疎水性のPDMSをグラフトする新しい手法を確立した。また、(2)COOH基が優先的に導入される硝酸酸化とは異なり、フェントン試薬処理ではグラフェンへOH基を優先的に導入できると言う特徴があることを見出した。さらに、(3)グラフェン表面グラフト鎖の疎水、親水性を制御することにより、多彩な分散溶媒へ分散可能なグラフェンが得られることを明らかにした。 したがって、本年度の研究計画、目標はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.前年度に引き続き、ラジカル捕捉性を利用した官能基の導入によるグラフェンナノシート分散液の調製について検討する。すなわち、グラフェン表面へ導入したイオン性官能基のイオン反発に基づく分散化について検討する。なお、カチオン性官能基として、アミジウムカチオン基、アニオン性官能基として、カルボキシラートアニオン基を選択する。 2.アニオン性及びカチオン性官能基を導入したグラフェンの分散性に及ぼす分散媒のpHの影響について検討する。カチオン性官能基導入グラフェンは酸性下で安定に分散し、逆にアニオン性官能基導入グラフェンは塩基性下で安定に分散すると予想される。 3.グラフェンの剥離状態を評価する方法の一つとして、BET比表面積が用いられているが、これは乾燥状態のデータで有り、溶液に分散状態での表面積を評価する方法が知られていない。そこで、メチレンブルー吸着法を用いたグラフェンの水溶液中での比表面積を評価する方法をの開発を目指す。本方法により、グラフェンの分散状態を評価する指標が得られる可能性がある。 4.フイルムキャスト法によるグラフェンナノシート高濃度分散液とポリビニルアルコール(親水性ポリマー)やポリスチレン(疎水性ポリマー)などの高分子との導電膜の作製を試み、グラフェン含有量が複合導電膜の透明度や電気伝導度に及ぼす影響について究明する。
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Research Products
(2 results)