2013 Fiscal Year Research-status Report
バイオマス比率の高い機能性ゴム系グリーンコンポジットの創製及び機能性評価
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24560840
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Research Institution | Hyogo Prefectural Institute of Technology |
Principal Investigator |
長谷 朝博 兵庫県立工業技術センター, 材料・分析技術部, 上席研究員 (10470220)
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Keywords | グリーンコンポジット / 微粒子 / ナノファイバー / 天然ゴム |
Research Abstract |
植物バイオマスであるセルロースから扁平状微粒子及びナノファイバーを作製し、天然ゴムの補強剤として活用することにより、バイオマス比率の高い機能性グリーンコンポジットの創製を試みた。 扁平状微粒子については、木材パルプセルロースから作製した粒子径:約20μmの微粒子を用い、密閉式混練機及び二本ロールによる天然ゴムへの複合化を行った。得られたコンポジットの内部構造についてマイクロX線CTスキャナーによる観察を行った結果、二本ロールによるシート出しを行うことによってコンポジット中の扁平状微粒子が一方向に配列していることが明らかになった。これによって、コンポジットのガスバリア性、制振性などの機能性が大きく向上し、類似形状のタルクやマイカなどの無機充填剤を複合化したものと比較して同等レベル以上の機能性を付与できることがわかった。 ナノファイバーについては、長繊維、短繊維ナノファイバーを入手するとともに、短繊維ナノファイバーの機械的粉砕処理により更に短いナノファイバーを作製した。これらを天然ゴムラテックスと水分散状態で高速撹拌混合し、次に得られたマスターバッチに固形天然ゴムとゴム配合剤を二本ロールを用いて混練することによって所望のファイバー充填量のコンポジットを作製し、ナノファイバーの形状がコンポジットの引張物性に及ぼす影響について検討した。その結果、長繊維ナノファイバーにより補強したコンポジットでは、低伸長域での引張応力が大きくなる一方で、引張強さや破断伸びは小さくなることがわかった。これに対し、短繊維ナノファイバーやその粉砕処理物により補強したコンポジットでは、低伸長域での引張応力はあまり上昇しないが、引張強さや破断伸びが向上することがわかった。これらの現象は、形状の違いによりナノファイバーのコンポジット中での分散性が異なることに起因するものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、植物バイオマスであるセルロースから扁平状微粒子及びナノファイバーを作製し、天然ゴムの補強剤として活用することにより、バイオマス比率の高い機能性ゴム系グリーンコンポジットを創製することを目的としている。低燃費・エコタイヤへの応用を目指してガスバリア性、制振性、耐摩耗性を付与し、補強剤の形状や補強剤とゴムとの界面接着性が創製材料の機能性に及ぼす影響について検証する。 今年度の取り組みにおいて、マイクロX線CTスキャナーを用いたコンポジットの内部構造観察により、コンポジット中の扁平状微粒子の分散形状や配列状態を確認した。これにより、ガスバリア性や制振性といった機能性が発現するメカニズムを推察することができた。また、ナノファイバーの形状(アスペクト比)がコンポジットの引張物性に及ぼす影響について検討した結果、長繊維ナノファイバーにより補強したコンポジットでは、低伸長域での引張応力が大きくなることがわかった。これに対し、短繊維ナノファイバーやその粉砕処理物により補強したコンポジットでは、低伸長域での引張応力はあまり上昇しないが、引張強さや破断伸びが向上することがわかった。これらの現象は、形状の違いによりナノファイバーのコンポジット中での分散性が異なることに起因するものであることが確認できたことから、研究目的がおおむね順調に達成できていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
扁平状微粒子については、前年度行うことができなかった無機微粒子との共粉砕による微粒子化に取り組む。これによって粒子径をより小さくし、得られた微粒子の複合化がコンポジットの機能性に及ぼす影響について検討する。さらに、微粒子とゴムとの界面接着性がコンポジットの機能性に及ぼす影響について検証するために、マトリックスゴムとしてエポキシ化天然ゴムを用いて評価を行うとともに、微粒子のシランカップリング剤処理などを行う。 ナノファイバーについては、引き続きボールミルによる機械的粉砕に取り組み、ナノファイバーの形状がゴム中のファイバーの分散性やコンポジットの引張物性に及ぼす影響などについて検討する。また、ナノファイバーとゴムとの界面接着性がゴムの補強効果に及ぼす影響についても検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究内容が当初予定していた年次計画とは少し入れ替ってしまったため、実験に必要なゴム材料やゴム用配合剤、表面処理に必要な試薬などの原材料の購入が少なかったため。 天然ゴムと補強剤との界面相互作用向上を目的としたメカノケミカル反応による補強剤の表面処理の検討を計画していることから、実験に必要な遊星型ボールミル用粉砕容器(400千円)を購入する予定である。また、本実験に必要な試薬(150千円)やゴムとの混練実験に必要な原料ゴム(200千円)、ゴム用配合剤(200千円)も購入する予定である。 得られたグリーンコンポジットの機能性評価として、評価試験に必要な摩耗輪などの消耗品(200千円)を購入するとともに、ガスバリア性試験については外部への委託を計画している(250千円)。さらに、これまでの成果をまとめ、論文投稿も予定している(100千円)。
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Research Products
(13 results)