2013 Fiscal Year Research-status Report
難剥離性極薄アパタイト皮膜チタン材料製造のための新表面処理技術の確立
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24560841
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
大津 直史 北見工業大学, 工学部, 准教授 (10400409)
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Keywords | 金属生体材料 / 表面処理 / チタン / 硬組織適合性 / ハイドロキシアパタイト被膜 |
Research Abstract |
本研究では、難溶性のハイドロキシアパタイト粉末に、少量の水を加えて攪拌することで作製できる、粘性を持った泥状(スラリー状)の処理剤中に、チタン基材を完全に埋没させ、そのままスラリーごと試料を熱処理するという簡便な表面処理を用いて、難剥離性の極薄アパタイト被膜をチタン基材上に形成し、チタン材料の生体適合性を向上させることを目指している。本年度は、この表面処理における適切な熱処理条件を検討することで、医療材料に適する被膜を作製する条件を確定することを試みた。 まず、種々の熱処理条件下を用いて、極薄ハイドロキシアパタイト被膜をチタン基材上に形成し、その後、これら被膜の結晶構造、表面形状および断面構造を、X線回折法(XRD)、走査電子顕微鏡(SEM)および透過電子顕微鏡(TEM)を用いて調べた。また、被膜のチタン基材に対する密着強度を、ナノスクラッチ法で調べた。最後に、種々の熱処理温度で形成した被膜に、マウス骨芽細胞様細胞/MC3T3-E1を播種し、表面における細胞の接着および増殖の様相を調べることで、生体適合性を評価した。 表面処理に用いる熱処理温度を873K以下とすると結晶化したハイドロキシアパタイト被膜を形成できない。熱処理温度を873 K以上とすると、結晶化したハイドロキシアパタイトを含む酸化物層を形成できるが、温度の上昇に伴い、被膜の密着強度は低下した。また、種々の温度で形成した被膜表面におけるMC3T3-E1細胞の初期接着および増殖の挙動は、処理温度に拠らずほぼ同じであった。 これらの結果をまとめて、ハイドロキシアパタイト被膜の形成、被膜密着強度および細胞適合性の観点から考察すると、本表面処理を用いて医療材料に適する被膜を作製できる熱処理条件は、698 Kであるという結論を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の目的である「医療用材料に適する被膜作製条件」を確定することができ、本年度の当初目的を予定通り、達成することができたので、順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は予定通りに、医療用材料に適する被膜作製条件を確定することができた。次年度は、確定したこの表面処理条件を用いて作製した、ハイドロキシアパタイト被膜を有するチタン材料を、ラット等の小動物中に埋入して、本材料の有効性を、動物実験にて評価をおこなう。また、実用化への展開を考えると、本処理が純チタン材料だけではなく、チタン系合金にも適用できことを示す必要性がある。そこで、平成26年度は、金属合金薄膜を作製できる小型のスパッタ蒸着装置を導入し、この装置を利用して形成した種々のチタン合金被膜に、本表面処理を適用することを試みる計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では、細胞培養実験に必要な物品を、当該年度に購入する予定であったが、該当する装置を本学内研究者からお借りすることが出来、そのため予定していた装置の購入が不要になったため 本研究にて開発をおこなっている表面処理技術を、純チタン材料だけではなく、チタン合金にも適用できるかどうか、検討をおこなう予定である。その検討のために必要な、チタン合金薄膜を形成できる、スパッタ蒸着装置を導入するために、生じた次年度使用額を使用する計画である。
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Research Products
(7 results)