2012 Fiscal Year Research-status Report
キンク変形を巧みに活用した冷間圧延型長周期Mg合金板の作製とその機械的特性
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24560843
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
糸井 貴臣 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50333670)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マグネシウム合金 / 加工 |
Research Abstract |
今年度は、Mg-Ni-Y合金において、Mg100-x-yNixYy(x=0~20at.%、y=0~20at.%)の組成範囲で試料の作製を行った。x=2、y=4の組成においてはMg相と長周期相の割合はほぼ1:1であり、その後NiとYの組成比が増加すると長周期相の割合が増加し、x=6、y=9において、ほぼ長周期相単相の組織となった。この長周期相についてTEMを用いて組織を詳細に調べた結果、主に10Hと18R構造を有する長周期構造を有している事がわかった。さらにNiとYを増加させると、x=9、y=12において、12R型の長周期相が主相として生成した。12R型の長周期相はその積層構造がABABACBCBCであり、これまでの長周期相と比較するとその積層構造にMg層を含まない。本実験で生成した長周期相についてHAADF-STEM(高角度暗視野散乱)法により調べた結果、Ni6Y8のL12クラスターがMg原子層とc軸方向に規則的に配列している事が明らかとなった。10Hおよび18R型の長周期構造の場合、このクラスター間にc軸方向にそれぞれMg層が1または2原子層規則的に積層しており、Ni6Y8クラスターとMg原子層の積層により長周期構造が形成されている事がわかとなった。つまり、12R構造の場合はc軸方向にMgが積層しておらず、このクラスターの積層により構成された長周期構造の基本となる構造である。つまりMg-Ni-Y合金では、NiまたはYの溶質原子濃度が高くなるにつれて、その周期は連続的に変化し最終的に12R構造となる事がわかった。Mg86Ni6Y9およびMg79Ni9Y12合金において、作製した試料を作製した鋳造合金を(w:20×l:30×t:3mm3)に切り出して、室温にてロール速度2.7m/minにて圧延を行った結果、ともに30%の圧延が可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、長周期相を有するMg合金について室温圧延とその後の熱処理による組織制御を行い、高強度Mg合金板を作製する事であり、Mgと長周期相との比率や加工と熱処理による組織制御においては、その要となる長周期相の構造についての組成依存性についての知見が重要となるものの、Mg-(NiまたはCu)-Y合金については未だに状態図が明らかにされていない。組織制御において状態図は必要不可欠であり、本年度はMg-Ni-Y合金において、系統的に試料を作製して組織観察を行った結果、長周期相の積層周期が組成に依存して系統的に変化し、その構造がNi6Y8のL12クラスターとMg層で構成される事が明らかとなった。特に12R構造は長周期相の基本構造であり、キンク変形をはじめ長周期構造の変形メカニズム解明に重要な構造である。また、圧延においても、見かけ上30%以上の圧延が可能であることがわかった。キンクバンド形成は圧延による底面配向を抑制する事と考えられ、加工性の改善に効果的であると考えられる。合金作製、組織観察、そして室温加工についてある一定レベルの結果が得られており、本年度の目標は概ね達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度で作製した板材に、静的再結晶による結晶粒微細化と結晶方位のランダム化を目標として種々の熱処理を施し組織制御を行う。室温での圧延加工で作製した圧延材に種々の熱処理を施し、長周期相単相およびMg相との2相合金に静的再結晶による結晶粒微細化を試みる。また、動的再結晶による結晶粒微細化についても検討し、室温での圧延特性の改善を試みる。本研究では高強度化に加えて、長周期相での強化に基づく高ヤング率化も目的としている。剛性は肉厚化によりカバー出来るが、耐デント性(外部からの静的または動的な力による凹みの発生を防ぐ性質)にはヤング率が高い事が極めて重要である。本年度は上記の目標を踏まえて板材の組織制御に必要な熱処理条件を明らかにする。また、前年度と同様にMg-Cu-Y合金についても試料を作製し、系統的な組成の変化による組織変化を調べ、加工性についても明らかにする。作製した試料について、まず長周期単相試料から、種々の加工度まで圧延した板材に対し、DSC測定を行い、ひずみの回復および再結晶挙動を明らかにする。この結果をもとに熱処理を行い組織観察を行う。結晶粒微細化は高強度化に、また、圧延板面への底面の強い集合組織のランダム化は低温での延性や加工性を改善する。長周期相とMg相の2相合金においては、両相の熱的安定性が異なり、再結晶化の条件が異なるため、組織制御において種々の熱処理を施し、前年度と同様の組織観察手法を用いて組織を調べ、再結晶化の条件を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)