2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560845
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
末松 久幸 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30222045)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フェライト / 超微粒子 / 磁性体 / 有機物 / 吸着 / 薄膜 / 錯体重合 |
Research Abstract |
ニッケルフェライト超微粒子に様々な磁場下において、炭素数1~8、二重結合数1~3のカルボン酸を塗布して磁化特性を測定した。360mTの磁場中でギ酸を塗布することにより、無磁場中での塗布に比べて3%の飽和磁化上昇を見いだした。この結果より、フェライト酸化物超微粒子表面付近のスピンを表面吸着有機物分子の分極により固定できることと、フェライト酸化物超微粒子の磁化を上げることが出来ることを初めて示した。また、錯体重合法による銀基板上へのバリウムフェライト多孔体薄膜を得ることが出来た。上記の実験結果により、フェライト多孔質薄膜へのカルボン酸塗布による磁性体の磁化制御という、本研究の目的達成のために必要な一つの手法と一つの要素技術を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度得られた以下の2つの研究結果が、本年度計画と合致しているうえ、これまで知られていない新しい知見を含むため、順調に研究が進展していると判断した。 1)有機物塗布によるフェライト超微粒子の磁化変化 ニッケルフェライト超微粒子に無磁場中で炭素数1~8,二重結合数1~3のカルボン酸や様々な有機物溶媒を塗布し、磁化特性を測定した。すべてのカルボン酸に対し、飽和磁化が減少した。カルボン酸の二重結合数には磁化の変化量は依存しなかったが、分子量が小さくなるに連れて変化量が増大した。これは分子の分極の変化か、吸着する分子数の変化のためと考えられた。最大の磁化変化量を誘起したギ酸を、360mTの磁場中でニッケルフェライト超微粒子に塗布した。この結果、無磁場中での塗布に比べ、磁場中での塗布により飽和磁化が3%増加した。これは、有機物分子の分極により超微粒子表面付近のスピンを固定出来ることと考えられた。また、これまで知られていた結果は、ニッケルフェライト超微粒子の有機物塗布により磁化が下がる例のみであった。本結果は、磁化を上昇させることが出来ることを初めて示したものであり、磁気メディアの超常磁性限界を克服することが可能であることを示唆した点で有意義である。 2)フェライト薄膜作製 錯体重合法による銀基板上へのバリウムフェライト薄膜作製を行った。炭酸バリウムと塩化鉄水和物をクエン酸水溶液に溶解し、これにエチレングリコールを加えて重合させた。これを大気中で800-1100℃に加熱したところ、900℃で単一相のバリウムフェライト粒子を得ることが出来た。同じ溶液をスピンコートにより銀基板上に均一塗布し、これを焼成したところ、この多孔体薄膜を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果により、フェライト超微粒子に有機物塗布を行うことにより磁化を上げ下げすることが可能であることが判明した。この結果により、フェライト多孔質薄膜に有機物塗布を行えば、粒径を小さくしても磁化を保持することが可能となりうることが示唆された。 次年度は多孔質薄膜の微構造制御、有機物塗布による磁化変化の測定を行う。まず、バリウムフェライト、ニッケルフェライト多孔質薄膜および超微粒子を作製する。錯体重合法の溶液濃度を下げたりパルス細線放電の金属蒸気密度を上げることにより粒径を減少でき、電気炉薄膜焼成温度を上げることにより気孔率を下げることが予備実験の結果分かっている。この結果を利用し、粒径と気孔径の制御を行う。作製した薄膜と超微粒子の粒径、気孔径の測定を透過型電子顕微鏡、比表面積測定装置で行う。この試料に磁場中でギ酸などのカルボン酸を塗布し、その前後の磁化の変化を磁束計で測定する。 また、同様な研究を金属超微粒子磁性体に展開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度利用した原料を用い、電気炉、スピンコーターで銀や酸化マグネシウム基板上にフェライト酸化物超微粒子および薄膜を作製する。作製した試料を、透過型電子顕微鏡、比表面積測定装置により観察・測定し、それぞれ粒径分布と平均粒径を算出する。最後に、電磁石で磁場印加しながらギ酸をはじめとするカルボン酸などの有機物を塗布し、この磁化特性をSQUIDおよびVSM磁束計で測定する。また、これと並行してパルス細線放電装置によるニッケル鉄磁性体超微粒子作製を行い、この試料の磁化制御実験を開始する。 必要機材は全て学内にそろい本研究代表者が使用可能であるため、備品購入の予定はない。研究遂行に必要な予算は、薄膜作製用の試薬、基板、超微粒子作製用の原料、磁化測定用SQUID磁束計の液体ヘリウムなどの消耗品、微構造観察用の分析費、機材の調整、修理費、および共同研究・研究結果発表用の旅費、論文添削、印刷費などであるため、これらに研究費を使用する計画である。
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