2013 Fiscal Year Research-status Report
SOFCのクロム被毒劣化を解決する「電極反応場にクロムを固定化しない材料と運転」
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24560850
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷口 俊輔 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 特任教授 (60590065)
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Keywords | 燃料電池 / 固体酸化物 / 空気極 / クロム / 劣化 / メカニズム / 耐久性 / 材料 |
Research Abstract |
クロム被毒によるカソード劣化を抑制する独自コンセプトの実現のため、(1)過電圧によるクロムの移動定量化(⇒クロム再蒸発を促進する最適制御)、(2)カソード/クロム分子相互作用の解明(⇒カソードの最適表面組成・構造概念設計)、(3)クロムを固定化しないカソード材料の探索(⇒耐被毒性カソード材料の開発)に取り組んでいる。(3)については、6種類のカソード材料LSM,LSCF,LNF,BSCF,PrSM,NdSMを比較した結果、電解質近傍にクロムが析出するタイプ(LSM, LNF, PrSM, NdSM)と、カソード表面にクロムが析出するタイプ(LSCF, BSCF)に分かれた。カソード過電圧の上昇によって析出速度が増加する(カソード過電圧がクロム析出を支配する)傾向は共通であった。LSCF, BSCFは、カソード過電圧によりクロム蒸気との反応性が上昇すると考えられ、混合伝導性との関連で調べる必要がある。このような反応性の差異による影響はあるものの、カソード過電圧によって電極反応場、特に電解質(ジルコニア等)表面に生成する酸素空孔がクロム析出を促進する機構は、カソード材料によらず共通と考えられる。(2)については、高分解能の走査透過電子顕微鏡(S-TEM)を用いて、ナノ領域におけるクロム析出分布を、特に電解質表面に析出したクロムに注目して観察した。電子エネルギー損失分光(EELS)によって、析出クロム近傍における酸素濃度低下を確認し、酸素空孔がクロム析出を促進する機構を確認した。ジルコニアは本来電子伝導性を示さないため、カソード材料から分離した元素の酸化物(Mn, Ni, Ndなど)が電解質表面を薄く覆うことにより、ジルコニア表面に酸素空孔を生成させる。(1)については、ジルコニア表面に析出したクロムは、過電圧をゼロに戻すことにより部分的に成長し、セリア表面に析出したクロムは過電圧をゼロに戻すことにより消失する現象を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①カソード材料によらず、過電圧がクロム析出を促進し、電極反応場近傍の電解質表面にも析出させた。このことから、クロム析出を抑制するためには、カソード材料を変更するよりも、カソード過電圧を低減する方策が有効であることを明らかにした。 ②LSCF, BSCFについては、過電圧によりクロム蒸気との反応性が高くなり、カソード表面でクロム蒸気をトラップすることによって、電極反応場へのクロム析出を遅らせる効果があると考えられる。長期的な持続性については検証する必要があるが、この種の材料は長寿命化に有効である可能性がある。 ③過電圧印加によって、電極反応場近傍の電解質表面にクロムが析出することが最も懸念すべき性能低下の要因と考えられる。この現象は、過電圧によって誘発され、カソード材料とは無関係に起るため、過電圧を極小に抑える方策を除いて、析出自体を避けることはできないことが判明した。そこで、過電圧印加により析出したクロムを、過電圧をゼロに戻すなどの操作を加えることによって、蒸発、消失させられるかが重要なポイントになる。この実験により、セリア上ではクロムの消失が確認され、ジルコニア上では逆に一部分が結晶成長する現象が明らかになった。今後、この差が生じるメカニズムを詳細に解明することによって、期間内に、耐クロム被毒カソード創製のための3つ目の対策を見出すことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(最終年度)は、過電圧印加によって、電極反応場近傍の電解質表面に析出したクロムに注目して、析出のメカニズム、過電圧変化によるクロム分布の変化(蒸発や結晶成長など)、電解質材料(ジルコニア、セリア)による差異をより明確にする。最先端の高分解能分析装置STEM-EDS-EELSを駆使し、ナノスケールでの元素分布(特に酸素分布)および実験条件によるそれらの変化を正確に捉えることによって、クロム析出、成長、再蒸発のメカニズムを詳細に解明し、耐クロム被毒カソード創製のための鍵を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度、最先端分析装置(8万円/日程度)を利用して、上記の分析を重点的に実施する。また、得られた成果を学会(電気化学会、SOFC研究発表会)で発表する。 物品34万円、旅費30万円、その他(分析等)90万円
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Research Products
(5 results)