2012 Fiscal Year Research-status Report
複合環境下におけるモリブデン酸銅のマルチクロミズムの構築とクロミズム粒径依存性
Project/Area Number |
24560851
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
浅野 貴行 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00301333)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | モリブデン酸銅 / クロミズム |
Research Abstract |
非磁性イオン(Zn2+)やイオン半径が異なるイオン(W6+)との置換効果により成功したクロミズム制御を母物質CuMoO4の「粒径」を制御することにより各種クロミズムを自在に変化させる新しい試みを実施するため、まず高純度のクロミック化合物CuMoO4を既知の合成条件により高温高精度電気炉を用いて作製した。合成した母物質CuMoO4の粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて直接観測したところ平均粒径が約100μmであった。そこで、設備備品としてドイツのフリッチュ社製の遊星型微粒粉粉砕機を整備し、母物質CuMoO4の最小粒径約1μmに至る粉砕条件の異なる多種類の試料を準備した。各試料の粒径分布は、学内分析センター常設されているSEMを用いて計測することにより粉砕条件を絞り込み粒径の均一化に成功した。また、遊星型微粒粉粉砕機を用いることによる結晶構造の変化の有無を学内共通機器であるX線回折装置を用いて確認した。この均一化された粒径の異なるクロミック化合物CuMoO4の磁気異常を観測するため複合環境下磁化測定装置を用いて予備実験を開始した。その結果、非磁性イオンやイオン半径が異なるイオンとの置換効果により観測されたクロミズムの起源である構造相転移に起因する温度での磁気異常と同様の傾向を示し、これまでの「温度」におけるクロミズム制御に加えて「粒径」がクロミズムに多大な影響を与えていることが判明した。さらに、浮遊帯域溶融法により作製した単結晶試料やイオン半径の異なるW6+によって置換された試料において粒径の異なる多数の試料の合成を開始した。また「温度」の変化によるクロミズムに起因する磁気異常に加えて、「圧力」の変化による磁気異常の観測の予備実験を開始した。しかし、磁気異常が観測される温度近傍での圧力媒体の固化や容器の磁性、装置の感度等により現在まで有益な異常が観測されていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設備備品として整備した遊星型微粒粉粉砕機により「粒径」の異なる多数の試料の合成に成功し、その磁気的性質を測定することにより、これまでの不純物効果におけるクロミズム制御と同様の磁気異常が観測されたことは、CuMoO4のクロミズムが「粒径」と密接に関係している初めての実験結果であり特筆すべき点である。また、単結晶試料や不純物試料にも測定対象の幅を広げて順調に試料合成が進行している。同時にクロミズムと「圧力」の相関を磁気異常から観測する試みは、圧力容器の材質や圧力媒体の特徴を考慮し今後改良を加えることにより新しい知見が得られるものと大いに期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に観測した「温度」と「磁場」、さらに今後観測する「圧力」を加えた三種の熱力学的パラメーターの変化によって得られた各クロミズムに起因する磁気異常を複合環境下高感度磁化測定装置を用いて三種変数を同時に且つ自在に変化させることによって観測されることが期待される「マルチクロミズム」に起因する磁気異常の測定を実施する。そこで得られた実験結果を考察して「マルチクロミズム」という新しい概念の構築へと進展する計画である。さらに複合環境下の極限化、即ち「極低温」「高圧力」「強磁場」での実験へと展開する計画である。「 粒径」を均一化した多種類のクロミック化合物CuMoO4も同様に複合環境下高感度磁化測定装置を用いて磁気異常の観測を実施する計画である。その結果、粒径の変化に伴う「サイズクロミズ ム」に起因する磁気異常を観測する温度が低温から室温以上の高温へと広範な温度領域を自在に制御することが実験的に期待でき、粒径の減少による表面積の著しい増加に伴うナノ領域で顕著に観測される効果がマイクロ領域、即ちメゾスコピック領域においても顕著に観測される大変興味深い結果を導くことができると期待される。このクロミズム粒径依存性の概念の確立は、母物質を置換効果によって合成した多数の試料ではなく母物質のみを利用することにより求められる温度でクロミズム効果を示す機能性磁性材料を提供することが可能となり、将来の応用研究へと繋がる重要な実験結果として位置付けることができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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