2013 Fiscal Year Research-status Report
複合環境下におけるモリブデン酸銅のマルチクロミズムの構築とクロミズム粒径依存性
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24560851
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
浅野 貴行 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00301333)
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Keywords | モリブデン酸銅 / クロミズム |
Research Abstract |
初年度に観測した「温度」と「磁場」を制御による磁気異常に加え、「圧力」を制御することにより三種の熱力学的パラメーターの変化によって得られる各クロミズムに起因する磁気異常の実験的観測を開始した。特に、今年度の「圧力」の制御は、クロミズムの起源である構造相転移を直接制御することに対応する。本研究課題で着目するクロミック化合物の母物質であるCuMoO4における圧力下での高感度磁化測定装置を用いた測定の結果、構造相転移を示す温度が大きく変化し、一次相転移の特徴的な温度履歴現象を観測した。また、極限複合環境下での実験を実施し、特に「極低温」と「強磁場」での実験の結果、極低温において明確な有限磁化プラトーを伴う非線形磁化過程を観測し、飽和磁化及び磁場から予想される磁気構造の磁気的相互作用の大きさを見積もることができた。初年度に整備した遊星型微粒粉砕機を駆使して粒径が均一化したクロミック化合物CuMoO4も同様に高感度磁化測定装置を用いて磁気異常の実験的観測を実施し、粒径の変化に伴う「サイズクロミズム」に起因する磁気異常の変化を観測した。この結果は、広範な温度領域を自在にクロミズム制御することが期待でき、これまで表面積の著しい増加に伴うナノ領域で顕著に観測された効果がマイクロ領域でも観測された大変興味深い結果である。さらに、母物質を非磁性やイオン半径の異なる元素に置換した試料の粒径均一化を遊星型微粒粉砕機を用いて開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「磁場」と「温度」に加えて「圧力」の制御によるクロミズムに起因する磁気異常を磁化測定により順調に観測することに成功した。今後、さらに定量的な議論をするためには、圧力容器の材質や圧力媒体を変えることにより高精度の磁化の情報が必要である。また、遊星型微粒粉砕機を用いて多数の粒径の均一化した試料の合成に成功している。しかし、粒径の観測を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて実施しているが、絶縁体であるため観測が非常に難しく、また多くの時間を要しているのが現状である。今後、効率的な粒径の観測を目指して他の測定方法を検討する必要がある。粒径とクロミズムの相関を正確に調べることは、これまでに報告例のない新しい「サイズクロミズム」の確証に繋がると大いに期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの複合環境下での磁化測定に加え、比熱測定を実施しクロミズムの起源である構造相転移に起因する異常を格子の異常として検出する。また、磁化及び比熱測定は、対象物質の貴重な巨視的情報を提供してくれるが、さらに次なるステップとして微視的測定へと展開する計画である。具体的な測定方法としては、現有装置の磁気共鳴手段である電子スピン共鳴(ESR)と核磁気共鳴(NMR)を用いて「電子」と「原子核」からの超微細相互作用に起因する微視的情報を得ることにより、詳細なエネルギー準位を解明する。このエネルギー準位の確立は、将来の応用段階での「電子」や「原子核」の制御に大変有用な情報を提供するものであると確信する。また、結晶内部の微視的内部磁場を高精度で観測できるmuSRを地磁気を遮断した特別な環境下で実施し、磁気異常の起源を明らかにする計画である。以上の広範な「温度」「磁場」「圧力」環境下での巨視的、微視的磁気異常を観測することは、最終目標である「マルチクロミズム」の初めての実験的検証となり、さらに理論物理学者と議論により新しい概念の構築へと進展していくと思われる。さらに、高精度に均一化された試料での磁気異常と粒径との相関の実験的観測は、新しいクロミズムである「サイズクロミズム」の初めての報告例となり大きなインパクトを与えることが期待できる。
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[Presentation] CoMoO4の磁気 的性質とクロミズム制御
Author(s)
福井博章, 久保克隆, 浅野貴行, 和田 裕文, 諸富大樹, 稲垣 祐次, 河江 達也, 三田稔, 松尾晶, 金道浩一, 佐藤卓
Organizer
日本物理学会2013年秋季大会
Place of Presentation
徳島大学
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