2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560853
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松田 潤子 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 助教 (00415952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 健太 名古屋大学, 高等研究院, 助教 (10581118)
SHAO Huaiyu 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 助教 (20614697)
李 海文 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 准教授 (40400410)
佐々木 優吉 一般財団法人ファインセラミックスセンター, ナノ構造研究所, 主席研究員 (40426507)
秋葉 悦男 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90356345)
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Keywords | 水素吸蔵反応 / その場観察 / 環境制御型TEM |
Research Abstract |
常温、1000 Pa以下で水素吸蔵・放出するMg-Ni膜について、環境制御型透過電子顕微鏡(ETEM)を用いて、水素ガスを導入しながら水素化反応のその場観察を行った。ETEMは差動排気型真空排気システムを装備し、電子銃真空度を10-6 Pa台に保ちつつガス導入前の試料室真空度を10-5 Pa台に低下させ、1800 Paまでガス導入を可能にしたETEM(TitanETEM,FEI Company)を使用した。観察した試料はマグネトロンスパッタ法を用いて作製したMg6Ni膜で、イオンミリング法によりTEM観察用断面試料を作製し、通常の電界放出型TEMで予備観察を行った。その後、ETEMに挿入し、試料まわりに80 Paまで段階的に水素を導入し、0.05秒/フレームごとに膜の構造変化を記録した。80 Paで水素雰囲気を保持し、30万倍以上の高倍で観察したところ、観察開始から20秒以内で、Mg-Niアモルファス中で1nm以下のクラスターが結晶核となり、そこから2-5 nmの微結晶が成長する様子が動的に観察された。また、結晶化初期過程において0.22 nmの格子面間隔がしばしば観察されたが、電子線照射、観察開始直後から1分ほど経過すると0.14-0.15 nmの短い周期性を持つ結晶が現れることがわかった。 さらに詳しく解析するために、同じ試料について80 Paの水素雰囲気で、20秒ごとに逐次撮影を行った。その高分解能像とフーリエ変換像を解析した結果、間隔0.22 nmの格子面は単斜晶Mg2NiH4の(222)面であり、0.15 nmの格子面は正方晶MgH2の(002)面であることが明らかになった。これによりMg2NiがMgより先に水素化することが明らかになり、Mg2NiがMgの水素化に対して触媒作用を持つことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平衡圧1000 Pa以下のMg-Ni膜について、水素雰囲気でのTEMその場観察を行い、水素化の様子を結晶格子レベルでとらえることができた。得られた格子像を解析した結果、Mg2NiH4がMgH2より先に生成することが明らかになり、Mg2Niの存在がMgの水素化を促進する触媒効果を持っていることが示唆された。さらにMg2NiH4(222)面の間隔とMgH2(111)面の間隔が近いことと実験で得られた高分解能TEM像から、Mg2NiH4(222)面に平行にMgH2(111)面が生成・成長する可能性があると考えられる。Mg-Ni膜については、水素化前の微構造を含め、室温で数分以内で速やかに水素化するメカニズムが不明であった。本研究では、水素雰囲気でのその場観察を格子レベルで実現し、Mg-Ni膜の水素化メカニズムを明らかにすることができた。 今後は、平衡圧の高い水素貯蔵材料についても、水素雰囲気でのその場観察が格子レベルで可能になるよう、試料作製条件や観察条件を検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
Mg-Ni膜については、その水素吸蔵・放出特性、特に水素放出速度と繰り返し特性がMg/Ni比に依存することが報告されている。平成26年度は、Mg/Ni比の異なるMg-Ni膜について環境制御型TEMを用いた水素雰囲気でのその場観察を行い、Mg/Ni比とMg2NiH4およびMgH2の水素化速度、結晶核大きさ、結晶方位関係などの関係について明らかにする。 また、ex-situセル付試料ホルダを用いて、BCCなど他の結晶系材料について、水素化過程の構造変化をin-situでTEM観察する条件を検討する。
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Research Products
(2 results)