2012 Fiscal Year Research-status Report
審美性と耐剥離性を両立したチタン合金の酸化膜コーティング
Project/Area Number |
24560857
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
三浦 永理 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70315258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小幡 亜希子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40402656)
山崎 徹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30137252)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バイオマテリアル / 界面制御 / 審美性 / 界面強度 / 傾斜機能 |
Research Abstract |
Ti合金の酸化膜コーティングの熱処理条件の最適化: 純Ti及びTi-29Nb-13Ta-4.6ZrおよびTi-32Nb-3Ta-2Zr合金について,酸化物の生成挙動を調査した.まずは熱処理条件と生成酸化物の関係を明らかにする.主に熱処理の温度,加熱時間,冷却速度を変化させ,膜厚と熱処理条件の関係を調査した.その結果,被膜と加熱温度並びに加熱保持時間と膜厚の関係,更に酸化皮膜生成熱処理後に熱膨張係数の違いによる熱衝撃で剥離を起こさ ない冷却速度を求めた. 酸化膜コーティング材料の審美性評価: 分光測色法を用いて,様々な熱処理条件で作製した試料について色調 の測定を行った.評価に用いる指標は,見た目に最も近いと言われるCIELab色空間による色の定量化を行い,色調の膜厚依存性に ついて,特に明度(L*)を中心に評価した.結果を歯冠色の色調範囲と比較し,歯科材料として適した膜厚の範囲が求められた. XPSとXRDによる結晶構造同定: X線回折法(XRD)にて,生成相の構造同定を行う.本学に新規に導入された薄膜X 線回折装置またはSPring-8で表面酸化膜の構造同定を行った.酸化温度が異なる試料を調査し,Ti-O系状態図との比較を行ったところ,4元系合金では2相の酸化物の生成が確認され,熱分析の結果と比較して,その生成温度はTi-O二元系のTiO2生成温度とほぼ同じであると判断された.各相の深さ方向分布をX線光電子分光法(XPS)にて調査したところ,膜厚方向に元素の分布に大きな傾斜は見られなかった.従って,L*の変化は半透明の酸化膜の厚さによる基板のオペーク効果が大きく,またこの複相組織がL*と青―黄色の色調b*を変化させていることが示された. 更に,4元系と純Tiで酸化膜の形態が大きく異なる事が断面観察の結果から分かった.形態の違いは酸化膜の生成機序の違いに起因すると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた色調と熱処理条件,膜厚との相関に関しては,ほぼ予定通り達成し,また酸化膜生成の機序に関する知見もXRD, SEM観察だけでなくXPSの状態分析まで進んでいる.色調と合金元素の関係の特定や,酸化物生成に関する熱力学的解析がまだ不十分であるが,剥離試験のデータも一部出そろっており,酸化膜の形態と剥離強度の関係も定性的な傾向が得られつつある.更に,今年度予定していなかった,熱膨張係数差により発生する基板と酸化物の熱応力に関する材料力学的解析が進んでおり,当初の計画を上回った成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
断面観察: 酸化膜と基板との界面構造を調査するため,断面観察を行う.走査電子顕微鏡(SEM),電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)等から組織観察及び各相の組成分析を行う.透過電子顕微鏡(TEM)による界面の層構 造観察を行,界面構造を結晶学的に調査する.また,電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いて,基板から界面, 酸化物層の結晶学的方位関係についてよりマクロ的に調査する.断面観察の結果から,酸化膜層の形成機構を明らかにする. 剥離試験:酸化被膜の耐久性,特に金属基板に対する耐剥離性を評価する. ぬれ性評価: 被膜の機能性評価として,体液とのぬれ性評価を行う.接触角測定や液滴形状から評価する.酸 化皮膜の構造並びにXPS結果から得られた表面状態の情報とあわせて考察を行う. 歯科矯正ワイヤの白色化条件の探索と耐剥離性の評価:酸化膜生成による体積膨張の影響は,基板の比表面積が大きくなるほど大きくなる.すなわち,細いワイヤ形状は酸化被膜が厚くなると熱処理時の酸化膜と基板の熱膨張係数差による界面剥離が起こりやすいため,比表面積の小さいワイヤ形状での白色化条件を調査する.また,耐剥離性に関しては,繰り返し曲げ試験などでの耐久性評価を検討している. 色調をコントロールする為の合金元素の検討:これまでの結果,酸化膜の色調は,本質的には酸化物の持つ色調で決まると考えられる.Ti-Nb-Zr-Taだけで無く,様々なTi系合金で酸化試験を行う.続いてTi-Nb,Ti-Ta, Ti-Zr等の2元系合金を作製し,酸化物の色調とモフォロジーについて調査する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
材料購入費の他,東海地方の企業との共同研究に伴う打合せ旅費や,国際会議PRICM-8での発表ならびにTermec2013での招待講演への出張旅費を予定している.
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Research Products
(7 results)