2012 Fiscal Year Research-status Report
材料の強度特性・破壊予測を目指した放射光X線によるミクロ組織イメージング法の構築
Project/Area Number |
24560869
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 成男 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (40509056)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 金属組織解析 / ミクロひずみ解析 / 高エネルギーX線 / X線回折 / ラインプロファイル解析 / 放射光 |
Research Abstract |
金属構造体における材料強度特性の予測を目指し、特性要素となる転位、セル組織などのミクロ組織因子の2D, 3Dイメージング法の確立を目的とする。解析法としてX線回折に生じる回折指数に依存した非等方的なピーク形状の変化を利用する。この研究は、構造体内部の情報を得ることを目的の一つとしているため、金属に対する透過性を有する高エネルギーX線を利用した測定法構築が不可欠になる。そこで、H24年度は「高エネルギー白色X線を利用したエネルギー分散型X線回折」によるラインプロファイル解析法の構築と応用を行った。 高エネルギー白色X線マイクロビームを利用したエネルギー分散型X線回折法は角度スキャンを必要としないため、短時間で複数の回折を測定できる。これは構造体内部の転位キャラクターの二次元分布を知るのに極めて有利となる。ただし、エネルギー分散型X線回折法の逆空間分解能は検出器のエネルギー分解能に依存するため一般的に高くはなく、高い逆空間分解能を必要とするラインプロファイル解析にエネルギー分散型X線回折法は適していないと予想される。一方、エネルギー分解能の影響は回折角に依存するため、適切な回折角で測定を行うことにより、エネルギー分解能の影響を最小限に抑えることが期待できる。そこで、エネルギー分解能と逆空間分解能の関係の理論的考察とそれを実験から実証した。得られた実験結果をもとに、ラインプロファイル解析に必要な測定条件を導いた。 「高エネルギー白色X線を利用したエネルギー分散型X線回折」を利用し、伸線加工を施したパーライト鋼の伸線中央から表面にかけて生じる転位密度の分布、結晶子サイズの分布と対応する塑性ひずみ分布との関係、さらに同時に測定される残留応力の分布との相関関係と特徴を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は「白色X線を利用したエネルギー分散型X線回折」によるラインプロファイル解析法の構築を行った。実験はSPring-8の白色X線ビームラインであるBL28B2で実施した。当初懸念された検出器の分解能の影響は分解能のシミュレーションを予め行うことで、最適測定条件を導き、ラインプロファイル解析に必要な逆空間分解能を得ることに成功した。 「白色X線を利用したエネルギー分散型X線回折」では数十μmのビームサイズで測定を行うことにより、伸線加工パーライト鋼におけるワイヤ内部の転位密度分布の評価に成功した。同時に得られる残留応力の解析から、セメンタイト相とフェライト相の相応力分布を導くことにも成功している。残留応力と転位密度の分布に関する新しい知見を得ることに成功した。また、伸線加工にともなうセメンタイト相の分解が強化機構に影響をもたらしていることを示唆するデータを得た。この点については、今後の継続研究として実験を進める予定である。なお、SPring-8での予備測定として、実験室系X線回折装置で転位密度の評価を行い、強化機構を議論し、論文が掲載された。 「高エネルギーマイクロビームを利用した角度分散型X線回折」によるラインプロファイル解析法の構築も目指している。H24年度においては、予備測定としてSPring-8のBL22XUにて30keVのX線にてトライアル測定を行った。光学系由来のプロファイル形状の決定に課題があることを確認した。H25年度のビームタイムで標準試料と測定条件について精査し、測定法の構築を実現する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の主題は測定法開発と実用材料への応用である。「白色X線を利用したエネルギー分散型X線回折」についてはH24年度に測定法開発が完了し、測定法の応用へと課題はシフトしている。この測定法の応用として、伸線率の異なる伸線加工パーライト鋼において、塑性ひずみ量-転位密度-セメンタイト分解量の関係を模索する研究を行う予定である。 一方、「高エネルギーマイクロビームを利用した角度分散型X線回折」の測定法開発はH25年度の主要テーマである。上期と下期にあわせて年2回のビームタイム利用を考えており(上期のSPring-8ビームタイムは課題採択済み)、上期に静的な状態下での測定法を構築し、下期に高温下、過重下のin-situ測定を試みる予定である。特に高温下では、デバイワーラー因子の増加に伴うラインプロファイルの拡がりがコンボリューションされるため、それをデコンボリューションする方策、プログラム開発を行う予定である。なお、通常のゴニオメータースキャンでは角度走査に時間を要するため二次元検出器スキャンにより検出効率を向上させる予定である。測定対象試料には伸線加工パーライト鋼を利用し、昇温下における転位の回復、残留応力の緩和との関係を探り、特に伸線断面方向で二次元的に分布するそれら組織パラメーターがどのような緩和挙動を示すか明らかにする予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度の直接経費は1,100千円の予定である。物品費(500,000円)、旅費(400,000円)、その他費用(200,000円)が内訳となる。 試料作製として、原材料費、作製消耗品として300,000円、SPring-8でのX線回折測定において、装置に試料を取り付けるための試料ホルダー作製費用として200,000円を計上している。 本課題遂行のためにSPring-8への旅費が必要であり、かつ連携研究者(SPring-8駐在)との進捗状況の報告を定期的に行うことを考慮した。また本研究成果の積極的な公開による社会還元(社会貢献)という目的から、国内および国際会議への参加発表を広く行うための費用を、過去の実績を勘案し積算した。 その他費用として、SPring-8では年間12シフト(96時間)のビームタイム利用を予定しており、それに必要な利用負担料を計上している。あわせて、申請者所属機関のEBSP装置(共通利用設備)を利用するにあたり、その使用料を計上している。 なお、SPring-8のビームタイム申請において課題採択率が低く、課題申請が採択されないケースが生じた場合、確実な課題採択を目指すため「成果公開優先利用課題」として一定額のビームタイム使用料を支払う。その際の費用は物品費、旅費を制限し、充当する。
|
Research Products
(5 results)