2012 Fiscal Year Research-status Report
Ni基アモルファス合金の高耐食メカニズムの解明とそれに基づいた溶射皮膜の創製
Project/Area Number |
24560870
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
網谷 健児 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (30463798)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | アモルファス合金 / 溶射 / 耐食性 |
Research Abstract |
Ni-Mo-B系合金の高耐食性メカニズムを解明するために、単ロール法により幅10mmの広幅急冷リボンを作製し、インピーダンス測定およびXPSによる表面分析による検討を行なった。Ni-Mo-B3元合金の評価より先行し、ガラス形成能が高いNi-Mo-Nb-B系合金について評価を行なったところ、As-spunのリボン表面の浸漬前は酸素のピークが深さ2 nmまで検出され、その深さは濃塩酸浸漬前後で大きな変化がないが、濃硝酸浸漬後は深さ800nmまで酸素のピークが観察された。さらに、リボン材の表面の接触抵抗を測定したところ7mΩ/cm2であり、SUS316の1/5以下の値を示した。これらより、Ni-Mo-Nb-B系合金の不働体の形成はなされていないものと考えられた。 これまでの研究によりNi-Mo-B3元合金はアモルファス相中に結晶が存在した場合でも高耐食性を示すことが知見として得られている。結晶化と耐食性との関係を明らかにすることを目的に、リボン材作製時の冷却速度の操作および作製したリボン材熱処理によりアモルファス中に結晶を生じせしめ、耐食性の検討を行なった。その結果、室温濃塩酸中の浸漬試験では腐食減量と結晶化率との相関はなく高耐食性を示すが、沸騰塩酸中においては結晶化率の増加に伴い腐食減量も増加し、結晶化率が90%を超えた段階で急激に腐食が進行する現象が認められた。結晶化率が高い溶射被膜について断面の観察を行なったところ、直径0.01mm以上の結晶が多数認められ、それらが辛うじてアモルファス相により絶縁されている状態が観察された。これらの結果からアモルファス相の存在が高耐食性には必要であり、結晶化率が90%を超えた段階で結晶相同士が接触し、溶射膜では致命的である連続孔が腐食環境で生じる可能性があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下に各テーマごとの進捗状況を記載する。「1.Ni-Mo-B系3元合金の高耐食性メカニズムの解明」においては、インピーダンス測定等の電気化学的測定およびXPSや接触抵抗などの表面分析手法により、耐食メカニズムが明らかになりつつある。しかし、アモルファス相中に一部結晶化した相が存在した場合の耐食メカニズムについては未着手であり、来年度早急に取り組む予定である。また、本年度はインピーダンス測定用ポテンショスタットの購入を計画していたが、現行の流用装置で測定を続けてきた。さらに高効率で測定を行なうためにも、現在使用中の電気化学測定セルに仕様が合致したインピーダンス測定用ポテンショスタットの仕様を明確にした後に来年度に購入する予定である。「2.Ni-Mo-B計3元合金を基本とした高耐食Ni基アモルファス合金の探索」については、4元合金の探索を実施中であり概ね順調に推移している。「3.Ni-Mo-B系3元合金のアモルファス溶射による溶射被膜の組織制御」については、結晶化率のことなるNi-Mo-B3元アモルファス溶射被膜を作製するなど概ね順調であった。また、溶射被膜とその評価に関しては、研究協力者の所属する企業の社内事情により、三村氏から小牧氏等の数名へ引継ぎ等を行ない、現在はすでに数名により協力を得ながら、大きな研究遅延がないようにしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿い研究を推進する。平成25年度は、特に、「2.Ni-X-B系3元合金およびNi-Mo-X-B系合金の耐食メカニズムの解明」に注力し、当初の予定にも記載の「結晶化と伴った組織変化による耐食挙動の変化」について検討を強力に進めていく。そのために、測定の自動化も進める予定である。また、「3.多元高耐食Ni基アモルファス合金被膜の作製とその特性評価」においては、研究協力者の所属する企業の社内事情により、(株)中山製鋼所の三村氏から(株)中山アモルファスの小牧氏に変更し、溶射被膜の形成とその評価を強力に進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度未使用の1,432千円が生じた状況は、主に以下2つの理由による。 1.平成24年度のポテンショスタットによる測定内容が他の実験装置からの流用で補うことが可能であったこと、および流用による他の研究への影響が少なかったため、ポテンショスタットの購入が急務とならなかった。(交付申請時予算900千円) 2.溶射用粉末は溶射実験直前に購入するため、発注が遅れていた(交付申請時予算200千円)。 以上の状況を鑑み、平成25年度は当初予定の物品購入および旅費に加えて、平成24年度未使用額を主に以下の3点の物品購入および旅費に充てる計画である。 1.平成24年度にて未購入であったポテンショスタットを25年度において購入することにより測定自動化による研究の効率化を図る。予算982千円。 2.平成24年度にて未購入であった溶射用粉末を購入する。予算200千円。 3.当初計画より前倒しで国際会議(アメリカ合衆国開催予定の”THERMEC 2013”)において成果発表を行なう手続きを進めており、外国旅費へ流用する。250千円。
|
Research Products
(4 results)