2013 Fiscal Year Research-status Report
Ni基アモルファス合金の高耐食メカニズムの解明とそれに基づいた溶射皮膜の創製
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24560870
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
網谷 健児 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (30463798)
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Keywords | アモルファス合金 / 溶射 / 耐食性 |
Research Abstract |
昨年度の研究より、Ni-Mo-B系急冷合金において、アモルファス相中の結晶化率が90%未満であれば高耐食性を維持できることが判明したことより、結晶化率の低いNi-Mo-B系アモルファス合金溶射被膜を得るべく溶射条件の検討を行なった。Fe-Cr-P-C系アモルファス合金に比べて融点が低いことから、溶射ガンのガス冷却機構やそのガス流量の調整などにより火炎温度を低下させ、溶射ガンから噴出する溶融粒子の温度を低下せしめ、その結果、結晶化率の低い溶射被膜を得られることが分かった。現状では、結晶化率30%の溶射膜まで得ることができている。この溶射条件のコントロールにより、結晶化率の異なる溶射被膜を形成させ濃塩酸中での腐食減量を評価したところ、溶射被膜の腐食減量はリボン材で得られた結果と同等の結果を示し、高い耐食性を示すことが判明した。しかし、被溶射基材の大型化に伴い基材の冷却能が低下し、直径130mm長さ300mmの丸棒への溶射を行なった際に、結晶化率が局部的に増加する現象も見られた。そのため、今後もNi-Mo-B系アモルファス溶射被膜の形成方法の最適化を進めていく。 一方、溶射膜中の結晶化率が耐食性に影響を及ぼすため、さらに高ガラス形成能を有するNi-Mo-B系合金の検討を行なった。冷却速度を低下させて作製したリボン材においても、Ni71Mo6B23近傍の組成ではアモルファス単相を示し、ガラス形成能が高い組成が存在することが判明した。また、Ni-Mo-B3元合金の液相線図も数種類あり共晶線等の真偽が疑われるため、融点の測定を試みたところ、Ni72Mo6B23近傍が3元共晶組成であることが判明した。以上の結果から、この近傍の組成がガラス形成能も高く、大型の溶射被膜形成に有力な組成であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「Ni-Mo-B系3元合金のアモルファス溶射による溶射被膜の組織制御」については、溶射被膜とリボン材の対比を行なえ、リボン材と同等の耐食性を得るに至った。また、すでにNbを添加した合金系については24年度に実施しており、Ni-Mo-B系と同等の溶射皮膜形成は確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿い研究を実施する。特に「耐食メカニズムの解明」に注力し、メカニズムの解析結果を合金組成の検討にフィードバックを行なう。 また、溶射膜作製に関しては、研究協力者の所属する(株)中山アモルファスにおいて、溶射装置の改良も終了し計装化されたため、溶射温度の精密測定等の計測も行なうことで、高耐食アモルファス合金の溶射パラメータの解析も行なう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度未使用の724千円が生じた状況は以下による。 今年度のポテンショスタットによる測定内容が他の実験装置からの流用で補うことが可能であったこと。および、合金の融点測定に使用するTG/DTAが故障したため研究を推進するためには、修繕費用を急遽支出する必要があり、当初ポテンショスタットの購入予定の予算を充てたため。 以上の状況を鑑み、平成26年度は当初予定の物品購入に加えて、平成25年度未使用額を、未購入であるポテンショスタットの購入資金とする。
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Research Products
(3 results)