2012 Fiscal Year Research-status Report
高温動作パワー半導体実装用アルミ銅合金ワイヤボンデイングプロセスの開発
Project/Area Number |
24560873
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
田代 優 茨城大学, 工学部, 講師 (90272111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 仁 茨城大学, 工学部, 教授 (70315612)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルミ銅合金ワイヤ / ワイヤボンデイング |
Research Abstract |
本研究では、高温動作パワー半導体実装用新アルミ銅合金ワイヤボンデイングプロセスの開発を目的とする。現在まで直径300μm程度のアルミ銅合金ワイヤ中の銅の添加量とθ相(Al2Cu相)の析出量や析出状態は系統的な評価が行われていない。そこで、本研究では、これらの関係を明らかにして、その信頼性評価をヒートサイクル試験によって行う。これらの成果をもとに、高信頼性を有する新しい実装技術の構築を行い、Siパワー半導体の高温化への適用と展開をめざす。 平成24年度の研究成果は、①Al-3.04wt.%Cu(φ0.3mm×50m×1本)およびAl-0.22wt.%Cu(φ0.3mm×50m×1本)アルミ銅合金ワイヤをそれぞれ作製した。②、①で作製した銅添加量の異なる各ワイヤを溶体化処理(500℃×30min:Ar+4%H2気流中)を行い、銅をアルミ中に固溶させた。 ③、②で溶体化処理したワイヤをIGBT作製プロセスで制限される温度(高温はんだ融点・半導体 動作保証温度等)等を考慮した時効処理温度(280℃~400℃(SiC半導体使用時を想定))でAl-3.04wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤの時効曲線の時効曲線を作成した。この結果から、予備実験で作成したAl-0.5wt. %Cuアルミ銅合金ワイヤ同様、アルミ中にθ相が析出することによってワイヤの抵抗率が低下し、時間とともにθ相が析出することが分かった。アルミ銅ワイヤ中の銅添加量、時効処理条件とθ相の析出量の関係は、実装プロセスの信頼性に非常に重要な情報を与えることが考えられる。また、Al-3.04wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤについては、かなり硬く接合時に半導体チップにダメージを与える可能性があるという知見が得られた。④本年度設計・作製を計画していた高速ヒートサイクル試験機にていては、作製が完了し、その運転性能試験の結果も予定通りである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、計画(I)では、Al-3.04wt.%Cu(φ0.3mm×50m×1本)およびAl-0.22wt.%Cu(φ0.3mm×50m×1本)アルミ銅合金ワイヤをそれぞれ作製し、ほぼ予定を達成できた。また、計画(II)では、(I)で作製した銅添加量の異なる各ワイヤを溶体化処理(500℃×30min:Ar+4%H2気流中)を行い、銅をアルミ中に固溶させ、ほぼ予定を達成することができた。 計画(III)では、計画(II)で溶体化処理したワイヤをIGBT作製プロセスで制限される温度(高温はんだ融点・半導体 動作保証温度等)等を考慮した時効処理温度(280℃~400℃(SiC半導体使用時を想定))で時効曲線を作成する予定であったが、装置トラブルおよびAl-0.22wt.%Cu(φ0.3mm×50m×1本)アルミ銅合金ワイヤの作製の遅れが原因でAl-3.04wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤの時効曲線の作成のみとなり、予定から遅れている。 また、 Al-3.04wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤについては、かなり硬く接合時に半導体チップにダメージを与える可能性があるという知見が得られた。計画(IV)では、計画(III)で用いたワイヤについて、TEM等を用いてθ相の析出状態等の観察を行い、時効曲線と比較により最適θ相析出条件を明らかにする予定であったが、計画(III)の時効曲線作成の遅れのため観察・分析が進んでいない。一方、本年度設計・作製を計画していた高速ヒートサイクル試験機にていては、作製が完了し、運転性能試験の結果も予定通りであり、平成25年度は予定通り高速ヒートサイクル試験の実施が可能となり、計画を達成することが出来た。また、データ取得の遅れから論文発表等に遅れが生じているため、「(3)やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、高温動作パワー半導体実装用新アルミ銅合金ワイヤボンデイングプロセスの開発である。パワー半導体では、接合部のワイヤ側でクラックが発生・伝播してワイヤの剥離が起こる。これまでの研究より、アルミに銅を添加してθ相を結晶粒界および粒内に析出させてクラックの進展を抑制が出来ることが分かっている。そこで平成25年度は、アルミに銅を3wt.%添加して作製したワイヤについて平成24年度に取得した時効条件に関する結果をもとにボンデイングを行う。ワイヤの信頼性をヒートサイクル試験により、従来から用いられているAl-50ppmNiワイヤと比較・評価する。詳しい実施方法については、下記のとおりである。 ①昨年度作製したAl-3.04wt.%Cu(φ0.3mm×50m×1本)アルミ銅合金ワイヤを使用する。そのワイヤについて溶体化処理(500℃×30min:Ar+4%H2気流中)を行う。②溶体化処理したワイヤをIGBT作製プロセスで制限される温度(高温はんだ融点・半導体動作保証温度等)等を考慮し、時効処理を行う。時効時間を変えてワイヤの抵抗率を測定し、θ相の析出量と時間の関係を明らかにする。③②のワイヤについて、TEM等を用いてθ相の析出状態等の観察を行い、θ相の析出量と析出状態の関係を明らかにする。④③で明らかになったθ相析出条件をもとにボンデイングを行い、その信頼性をヒートサイクル試験により、Al-50ppmNiワイヤと比較・評価する。同時に、昨年度作製したAl-0.22wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤについても、時効条件の検討および上述のAl-3.04wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤの①~④の検討を行い、Cu添加量による効果を明らかにして、論文化する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越額は購入したアルミ銅合金ワイヤの購入額が、当初見込みより安価となったため発生したもの。平成25年度の請求額と合算し、液体窒素および電気抵抗率測定用治具の修理費用に充てる。
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