2013 Fiscal Year Research-status Report
高温動作パワー半導体実装用アルミ銅合金ワイヤボンデイングプロセスの開発
Project/Area Number |
24560873
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
田代 優 茨城大学, 工学部, 講師 (90272111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 仁 茨城大学, 工学部, 教授 (70315612)
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Keywords | 接合 / ワイヤボンデイング / Al-Cu合金 / ヒートサイクル試験 |
Research Abstract |
本研究では,高温動作パワー半導体実装用新アルミ銅合金ワイヤボンデイングプロセスの開発を目的とする.ワイヤ中のθ相の析出量と析出状態の制御を行うために,銅の添加量(0.1~3%)とθ相(Al2Cu相)の最大析出時効条件の検討を行う.本研究では,直径300μm程度のアルミ銅合金ワイヤ中の銅の添加量とθ相の析出量や析出状態の関係を明らかにして,最適添加量および時効条件で作製した新アルミ銅合金ワイヤを用いて接合を行い,信頼性評価をヒートサイクル試験によって行う. 平成25年度は,以下の成果が挙げられる.①平成24年度に測定したAl-3.04wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤについて,さらに高い温度条件(350℃)における時効曲線の作成を実施した.②平成24年度実施予定から遅れていたAl-0.22wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤについても,IGBT作製プロセスで制限される温度(高温はんだ融点.半導体 動作保証温度等)等を考慮した時効処理温度(280,300,320および350℃(SiC半導体使用時を想定))における時効曲線の作成を実施した.③①および②によって得られた結果から,アルミ銅合金ワイヤ中のθ相の析出量は,Cu添加量とともに上昇すること,Cuの添加量が同じワイヤでは,時効温度の上昇とともに,その最大析出量到達時間は短くなることがワイヤの電気抵抗率測定から明らかとなった.④また,アルミ銅合金ワイヤについては,Cuの添加量が増大するとともにワイヤの硬くなり,接合時に半導体チップにダメージを与える可能性があるという知見が得られた.⑤現在,θ相の析出場所やその状態について,TEMによる観察・分析を依頼・調整中である. これらの研究成果によるアルミ銅合金ワイヤのCu添加量とθ相の析出時効条件および析出挙動の解明は,これからのIGBT実装プロセスの信頼性に非常に重要な情報を提供できると信じる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は,①平成24年度に測定したAl-3.04wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤについて,さらに高い温度条件(350℃)における時効曲線の作成を実施・完了した.②更に,平成24年度実施予定から遅れていたAl-0.22wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤについても,IGBT作製プロセスで制限される温度(高温はんだ融点.半導体 動作保証温度等)等を考慮した時効処理温度(280,300,320および350℃(SiC半導体使用時を想定))における時効曲線の作成を実施・完了した.これらの研究成果によるアルミ銅合金ワイヤのCu添加量とθ相の析出時効条件および析出挙動の解明は,これからのIGBT実装プロセスの信頼性に非常に重要な情報を提供できると信じる.③現在,θ相の析出場所やその状態について,TEMによる観察・分析を依頼・調整中であり,予定よりも約半年遅れで進捗している状態である.しかし,測定に長時間が必要な時効曲線の作成が終了してこと,ヒートサイクル試験機が完成していることから,今後研究進捗速度を上げたいと考えている. 一方,平成25年度中に検討を実施予定であった高温ヒートサイクル試験による信頼性の評価については,超音波ボンダーの装置トラブルのため,IGBT模擬基板へのアルミ銅合金ワイヤの接合が定常的に実施できない状態にある.現在,メーカーと装置の修繕について打ち合わせ中であり,早期の回復を目指している.このため,当初の予定の計画より遅れが生じ,論文発表等に遅れている,したがって,本研究の平成25年度の進捗状況について「やや遅れている」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,高温動作パワー半導体実装用新アルミ銅合金ワイヤボンデイングプロセスの開発である.パワー半導体では,接合部のワイヤ側でクラックが発生・伝播してワイヤの剥離が起こる.これまでの研究より,アルミに銅を添加してθ相を結晶粒界および粒内に析出させてクラックの進展を抑制が出来ることが分かっている.平成26年度は最終年度となるため,平成25年度までに取得したAl-3.04wt.%CuおよびAl-0.22wt.%Cuアルミ銅合金ワイヤの時効曲線をもとに,時効処理を施したワイヤについてボンダーを用いて模擬IGBT基板に超音波ボンデイングを行う.ボンデイングしたワイヤの接合部について,ヒートサイクル試験機を用いて加熱冷却の負荷加速試験を用いて行い,せん断試験を行いその接合強度の評価および接合部の観察結果から信頼性の評価を実施する予定である.平成26年度の課題としては,遅れている種々の時効条件下のアルミ銅合金ワイヤ中のθ相の析出場所やその状態についてのTEMによる観察・分析の推進とヒートサイクル試験による信頼性の評価に不可欠な超音波ボンダーの装置トラブルのため,IGBT模擬基板へのアルミ銅合金ワイヤの接合が定常的に実施できない問題の解決である.これらの問題を早期にクリアーして研究を進めることを検討している.これらの研究成果によるアルミ銅合金ワイヤのCu添加量とθ相の析出時効条件および析出挙動の解明はおよびその信頼性評価結果は,これからのIGBT実装プロセスの信頼性に非常に重要な情報となるため,その論文化を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在までの達成度の③で記載しているように.現在,θ相の析出場所やその状態について,TEMによる観察・分析を依頼・調整中であり,予定よりも約半年遅れで進捗している状態である.これらの依頼観察・分析用の費用(約100万円)が未執行であるため,平成26年度に合わせて執行する予定である.また,超音波ボンダーの装置トラブルのため,IGBT模擬基板へのアルミ銅合金ワイヤの接合が定常的に実施できない状態にあるため,メーカーと装置の修繕について打ち合わせ中であり,この費用も必要となる. ①平成26年6月を目途に超音波ボンダーの修繕改修 ②平成26年7月を目途にθ相の析出場所やその状態について,TEMによる観察・分析の実施
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