2012 Fiscal Year Research-status Report
二層凝集現象を用いた自己組織化ナノ構造薄膜の作製とその応用
Project/Area Number |
24560874
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神子 公男 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80334366)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自己組織化 / 微細加工 / ナノ材料 / 結晶成長 / マイクロ・ナノデバイス / 局在表面プラズモン共鳴 |
Research Abstract |
遷移金属(Ti、Fe)のシード層、貴金属(Ag、Au)の凝集層からなる二層構造薄膜を、様々な作製条件を変えて、マグネトロン・スパッタリング法を用いて作製し、熱凝集させ、その表面構造や組成、結晶構造の違いを観察し、表面ナノ構造の制御と、本手法の詳細メカニズムについての検討を行った。本年度の研究成果の概要を以下に示す。 Au/Fe系やAg/Ti系において、凝集層(Au、Ag)の厚みによって、形成されるドットの大きさや密度が劇的に変化することが確認された。凝集層の厚みが薄い程、サイズが小さく、高密度なドットが形成されることが判明した。更に、自己組織化した薄膜の光学測定を行った結果、局在表面プラズモン共鳴による吸光度スペクトルが観察され、ドットサイズ依存した最大吸光度波長の変化が確認された。 Ag/Ti系において、エピタキシャル成長したナノ・ドット薄膜の作製に成功した。シード層を用いない(Ag凝集層のみの)場合、MgO(100)、MgO(110)基板上のAg薄膜は自己組織化が進まず、且つAg薄膜の面方位はfcc-(111)配向であったが、Ag/Ti二層系では、薄膜はドット化し、Agの面方位はそれぞれfcc-(100)、fcc-(110)配向であった。 用いた基板の面方位に依存した表面ナノ構造の変化を確認した。具体的には、二回、四回、六回対称基板を用いることによって、自己組織化した表面構造がそれぞれ、ロッド(rod)状、方形ドット、円形ドットになることが確認された。 ナノ・ドットの形成に至る詳細なメカニズムが検討した。基板加熱による、凝集現象が進行するにつれ、(1)方形のナノ・ホール(穴)生成、(2)方形ホールの成長によるメッシュ(網の目状)構造、(3)メッシュ枠の破壊と分離、(4)分離した線状構造体の凝集の促進段階を経て、自己組織化ナノ・ドット構造の形成に至ることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、汎用性の高いスパッタリング手法等の薄膜作製法を用い、金属の(二層)凝集現象を用いて、ボトムアップ型の自己組織化したナノ構造薄膜を作製し、その詳細なメカニズムを明らかにすることで、形成されるナノ構造体の形状や密度等の微細構造制御を行うことを主眼として研究を行っている。更に、作製したナノ構造薄膜の物性を測定し、光センサーや磁気メディア等への応用を目指した研究である。 研究期間内の具体的な目標は、(1) 二層凝集現象を利用し、自己組織化ナノ構造薄膜の成長制御と作製技術の確立、(2)均一性が良い高密度で高品質なナノ構造薄膜を、本手法を用いて作製し、光特性や磁気特性などの機能性の向上を図ることである。 平成24年度では、薄膜作製のパラメータを多岐にわたり変化させることにより、自己組織化ナノ構造体の表面の形状や密度等の微細構造制御に関して、一定の成果を得ることができた。また、ナノ・ドット化のメカニズムついても、その形成過程においての詳細に明らかにすることができた。更に、作製した自己組織化ナノ・ドット薄膜の光学特性の知見を得ることができた。これらの結果は、光センサーやバイオセンサー、太陽電池分野への本手法の応用の可能性を示唆するものであった。現在まで、海外共同研究者である韓国・光云大学の河在根教授のグループとの研究協力関係は有効に機能しており、研究目標と照らし合わせ、本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ構造を特徴づける作製パラメーターが多岐にわたるため、目的とする高密度・高機能ナノ構造薄膜の作製技術の確立のため、及び自己組織化の詳細なメカニズムを検討するためには、更に多くの自己組織化ナノ構造体を作製し、その形成過程を詳細に調べることが必要となる。そのため、平成25年度以降も、多種多様の自己組織化ナノ構造薄膜を作製するため、RF及びDCマグネトロンスパッタリング法のみならず、より汎用性のある安価な真空蒸着法等も併せて使用し、研究を推進する。作製したナノ構造薄膜の微細構造を詳細に検討するためには、透過型電子顕微鏡による膜の断面像を外注により得て解析を行うことも検討している。 ナノ構造体を用いたセンサーやデバイス等を広く応用する場合には、高価な単結晶基板の使用はコスト的に不都合になる。よって、今後は、半導体素子に広く用いられている安価なシリコン酸化基板、ガラス基板等は表面の結晶性が良くない基板であるが、単結晶基板を用いて得られた知見を基に、これら基板を用いて二層凝集現象を用いた自己組織化ナノ構造薄膜の作製を併せて行う。 本研究では、貴金属凝集層としてAuやAgを用いている。これらAuやAgのナノ・ドットは、各々が特有の局在表面プラズモン共鳴波長を有している。それらの共鳴波長は、形状によっても変化するが、その組成比でも変化することが考えられる。物理的作製手法である本研究を用いると、容易にAuとAgの組成比を制御した合金ナノ・ドットが形成されると考えられる。この合金ナノ・ドットを本手法により作製し、その光学特性を測定することで、太陽電池等への応用を試みる。 本研究は、事業期間を通して韓国・光云大学の河在根教授(海外共同研究者)や芝浦工大の弓野健太郎教授と共に行う。河教授は研究代表者と共に薄膜試料の作製と物性測定、弓野教授にはメカニズムの考察に関して助言を賜る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
二層凝集現象を用いた自己組織化ナノ構造薄膜の作製技術の確立のため、より多種多様なナノ構造薄膜を作製し、その形成過程を詳細に調べることが必要となる。そのため、既存のマグネトロン・スパッタリング装置のみならず、汎用性の良い真空蒸着装置も駆使して、多くの試料を作製する必要がある。そのため、次年度では、既存の真空機器を二元の蒸着機能を備えた真空蒸着装置に改良する必要がある。この改良コストに数十万円程度かかる見込みである。また、多くの試料を作製し解析するためには、今後も多くの単結晶基板、高純度ターゲット(AuやAg)等や、真空部品、表面解析用に用いる原子間力顕微鏡(AFM)の探針等を大量に消費する。次年度以降も、これら消耗品の経費として多くの費用(50~100万円/年)がかかるものと推測される。 作製したナノ構造薄膜の微細構造を詳細に検討するために必要であれば、透過型電子顕微鏡による膜の断面像等を外注(10万/試料程度)することも検討している。 本手法の技術確立、メカニズムの検討には、今迄以上のより詳細な表面構造解析が必要となる。撮影したAFM像や電子顕微鏡像を、より詳細に画像解析するためには、より高度な機能を持つ画像解析ソフトウェアや解析用のシステムが必要となる。従って、次年度以降、画像解析系の経費支出を予定している。 本年度に引き続き、次年度も春と秋に開催される物理学会や応用物理学会に参加し研究発表する予定である。また、既に次年度の9月には、フランスのパリで開催される国際会議(IVC-19)で、本研究内容を発表する予定である。本研究では、海外研究協力者である韓国・光云大学の河在根教授と共に研究を進めており、次年度もそのための研究打合せをソウルで行う予定である。これら、国内・国外出張の費用の全額、及び一部の支出として、次年度では40~50万程度の支出を見積もっている。
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